11.28.2012

微妙にハッピー 「スーパーポルノスター エレクトラ」



当方の "気に入った" タグに輝くこちらの第二弾ということらしい。 今回も、 微妙にハッピーになれるポルノ業界モノ。 と言っても、 どうすれば売れて儲かるかの話ではなく、 ポルノ女優もひとりの人間、 がテーマ。 才能と品格あるがゆえに悩みも多き乙女。 そんなニュアンスで展開する孤高のシリーズ! 邦題は例によってまるで違うが 'エアたばこ' は脈々と受け継がれる^ ^

前回、 最後にちらっと登場したジョセフ・ゴードン=レヴィットは、 今回エレクトラ・ラックスのファンブログ運営者として出演時間を増やした。 ということは今回、 ちらっと、 かつ重要な役柄をアンクレジッテッドで受けたジュリアン・ムーアも次回作につながるかもしれない。

妊娠を機に業界を引退したエレクトラ。 誰もが行く末を危ぶんだが、 予想に反してセミナーを開いたり、 自己啓発書のモデルとなる彼女。 そんな表の顔とは裏腹に、 お腹の子の亡き父を想い、 あるいは生まれてくる子どもが誇れる母になれるだろうかと悩むエレクトラだった。

しかし彼女の前向きさと他人に接する態度は、 さまざまな面倒を巻き込みながら、 結果的に彼女をよりよい方向へと押し出す。 今回は "気に入った" までは付けないが、 やはり何となく好きな一品だ。 第三弾も作ってほしい!




スーパーポルノスター エレクトラ あなたのお悩み解決します!
ELEKTRA LUXX (2010) 日本未公開 
製作・脚本・監督 セバスチャン・グティエレス 
カーラ・グギーノ ジョセフ・ゴードン=レヴィット エイドリアンヌ・パリッキ 
エマニュエル・シュリーキー マーリー・シェルトン 
キャスリーン・クインラン ジュリアン・ムーア (uncredited)  

11.27.2012

勤続50年 「007 スカイフォール」



007も様変わりしたものだ、 というのが前回の感想だったが、 今回は、 やっぱり相変わらずだ、 という感想になった^ ^

MI6に仕掛けられたテロ、 サイバーテロ。 そしてそれは元エージェントによるもの、 と時代を反映したストーリーになっているし、 監督にはサム・メンデスを起用するなど意気込みは感じられる。 最近の007らしくボンドガールも地味め、 Qの武器もハイテク志向。 しかし後半、 突如クラシックなボンドカーが登場、 前半から一転して古いやり方のオンパレードへ。 もちろん、 これは狙いではあるわけだが、 007はこうでなくちゃ、 という声が聞こえそう。 揺り戻しへの賞賛は、 どんな場合でも苦笑いで傍観するしかない。

とは言っても、 それなりに面白いし、 クールな絵も盛りだくさん。 ボンドを意図的に、 劣等生、 反権力の行き当たりばったり野郎として描いている気がするが、 シリーズ生誕50周年のお祭りとしては 十分よくできているのではないだろうか。 12/1から (他もこれくらいのスピードで日本公開を) 乞うご期待。



007 スカイフォール SKYFALL (2012イギリス・アメリカ) 12/1~ 公式サイト・予告
監督 サム・メンデス  象のロケット 
ダニエル・クレイグ  ハビエル・バルデム ナオミ・ハリス 
ベレニス・マーロウ アルバート・フィニー ベン・ウィショー 
ジュディ・デンチ レイフ・ファインズ 

11.26.2012

期待の新人? The Taint



トレーラーを見る限る ぐっちゃぐちゃだが、 実際ぐっちゃぐちゃだった^ ^ 飲み水に何かが混入されたとかで、 それを飲んだ男はおかしくなってチン●を出して、 なぜか石を抱えて攻撃してくる。 ある種のゾンビ化らしいのだが、 最後は '脳みそバーン' ならぬ チン○●バーンのオンパレード。 IMDbで誰かが上手いこと評してた。 "デビッド・リンチのアートシアター的感性とトロマの鳥獣戯画的バイオレンスの融合" と。 まあ、 そんな感じだ^ ^

登場する70年代風カットの金髪の高校生は監督でもあるのだが、 安っぽい作りとアホなギャグはさておき、 頭部がつぶされる表現には凝っていてヘンなリアリティ。 何かと言うと顔がつぶされ、 脳天から切り裂かれ、 貫通するのだが、 つぶれながら動く目などCGなのだろうか、 技術的詳細は不明ながら一瞬ギクっとさせられる。 概ね期待の新人登場と言ったところだ。 で、 何を期待するのだろう。 。




テイント(原題) The Taint (2010) 日本公開未定
監督 ドリュー・ボルダック+ダン・ネルソン 

11.24.2012

起業家ストリッパー 「マジック・マイク」



男性ストリッパーの世界を描いたと話題?の作品を一足先に見た。 男性ストリップというのは見たことも出演したこともないので^ ^何とも言えないが、 全部脱ぐわけでもないのに観客はやたらキャーキャー盛り上がる。 ステージに立つ側もこれはハマるかもしれない。 女性ストリップの和洋の違いと同じく、 洋物はスポーティで明るい感覚。

30才になり転機を意識するNo.1ストリッパーのマイクは、 廃品利用のオリジナルファニチャーの会社を興したいと思っている。 (この家具がけっこうカッコいい) ストリッパーもその資金積み立てと考えている。 しかしステージの華やぎには抗しがたく、 ズルズルと続けるばかりか、 19才の青年を引き入れてしまう。

19才のアダムには看護事務見習い?の姉ブルックがいて、 この件には猛反対。 しかし何だかんだでマイクとブルックは接近してゆく。 アダムはストリッパーの仕事が面白くなり、 調子づいてエクスタシーの売人までやってしまう。 片や、 ストリップの店は規模を拡大しマイアミに移転することに。 マイクはこれに乗ってマイアミに行くか、 あるいは新しいプランを練るかの選択を迫られることとなる。

噂ほどスキャンダルな要素はなく、 むしろ男 '30にして立つ' を描いた純然たるドラマ。 「フル・モンティ」 よりは青春していて、 キャスティングも絶妙。 どちらかというとキャラありきで展開する亜流のダンス映画と言えるかもしれない。




マジック・マイク MAGIC MIKE (2012) 日本公開2013.8 公式サイト
監督 スティーブン・ソダーバーグ 
チャニング・テイタム アレックス・ペティファー コディ・ホーン 
オリヴィア・マン マシュー・マコノヒー 

11.11.2012

異次元はドラム式洗濯機から 「アパリション」



降霊の、 いや恒例の新作ホラーレポート。 今回は正統派 心霊ものではあるが、 ディテールがパクリすぎて正統派とも言いがたい。 家に取り憑いているのではなく、 お前に取り憑いている、 とかはアレっぽいし、 「リング」 のオバケっぽいものはブラウン管からではなく、 ドラム式洗濯機から出てくる^ ^

怪しい機器をたくさん用意しての降霊実験を行う3名様。 降霊どころか、 異次元への扉を開いてしまったらしい。 ベンの彼女は天井に吸い込まれてしまう。 その後ベンは新しい彼女と熱々だが、 彼女もまた異次元からの侵入者に狙われることに。 優しいけども 霊に取り憑かれている、 そんな男は "恋人にしたくない男" トップ1だろう。 もう一人の、 霊を科学する男もついに壁の向こうに連れて行かれる。 実際には元人間の霊ではないらしいが、 これもアレっぽい。

スパークが飛び交うなか、 木の像のようなクラシックなアイテムが出てきたとき、 往年の名作 「マニトウ」 (1978) をふと思い出したが (VHSしかないんだな) 、 あそこまでの迫力もなく、 全体に低予算だけが意識されてしまう物足りなさ。

公開はおろかDVDスルーすらされない可能性も高いので^ ^ 物好きな方は海外版を取り寄せると耳の不自由な方用の英語字幕も付いているし、 それ以前に聞き取れなくても大して不自由しない作品でもあり、 英語の勉強も兼ねて一石二鳥。 その後、 レアもの中古ソフトとして売っぱらえばいいだろう。 乞うご期待。
(追記2013.4/18) 無事スルーされたもよう^ ^



アパリション The Apparition (2012) 日本未公開
監督 トッド・リンカーン 
アシュレイ・グリーン セバスチャン・スタン トム・フェルトン 
[日本版DVDはレンタルのみ?]

(おまけ) こちらが 「マニトウ」 (1978)

11.10.2012

ブリスの問題 TROUBLE WITH BLISS



DVDでのフォローが続く。 本作はそれっぽい邦題がついてDVDスルーされている日本未公開作品ながら、 悪くない小品。 さりげなくNYしているとも言えるし、 シリアスでコミカルな、 ありがちな日常、 あるいは ありえない日常の一コマを切り取った作品は、 派手なメジャー作品の裏でいつの時代も作り続けられる。

モリス・ブリス (bliss=至福) は35歳になっても親のスネかじりな恥ずかしい男だが、 貧乏人の子で独立心が薄いとスネかじりと呼ばれるだけで、 同じく独立心の薄い富豪のご子息は二世と呼ばれる。 そういう意味で成熟した社会では、 みなスネかじりかもしれない。

ブリスはスネかじりのくせに、 邦題の通り意外と女にモテる。 風来坊はどこか違って見えるのかもしれないし、 心の隅にはいつも現状に安住できない切迫感をかかえているから、 悩み多き乙女を引きつけるのかもしれない。 レコード店では女子高生からちょっかいを出され、 同じアパートの東洋系からも誘われる。 ひょんなことから、 ホームレスの振りをしてサバイバルゲームを楽しむ富豪の娘のハートを射抜いてしまったかもしれない。

ブリスの母はギリシャ系で、 彼が14才のときに死んだ。 ピーター・フォンダ演じる父と二人きりで暮らし、 部屋の壁には地図が貼られ、 母の故郷であるギリシャを始め、 世界各地を旅する計画はあるが、 実行された試しはない。 それより問題は女子高生。 奇遇にも旧友の娘だったのである。 奇遇などとは言ってられない。

さらにアパートの東洋系には夫がいるし、 富豪の娘にも別の運命の人が現れる。 ようするにモテていたのでもモテ期でもなく、 無害そうだったから ちょっと絡んでみただけのことだったのだろう。 ブリスは叔母がギリシャにいることを知り、 初めて旅行の計画を実行に移す。

とつとつと見れて面白かったが、 女子高生役のブリー・ラーソンのTバックのヒップがやや垂れ気味だったのは残念^ ^ まさか替え玉じゃないだろうな。 ぼーっと見てたので、 お父さんがビーター・フォンダという認識がないまま、 誰かに似てるなとずっと思ってた^ ^




ダメ男がモテる本当の理由 TROUBLE WITH BLISS (2011) 日本未公開 
監督 マイケル・ノウルズ 
マイケル・C・ホール ブリー・ラーソン ルーシー・リュー 
サラ・シャヒ ブラッド・ウィリアム・ヘンケ クリス・メッシーナ 
ピーター・フォンダ 

11.09.2012

トリノの馬 「ニーチェの馬」



ベルリンで銀熊に輝く本作はかなり風変わりな作品ではあるが、 セリフなどほとんどないにもかかわらずスクリーンから目の離せない面白さだった。 終末感を描いたと説明されているが、 スクリーン上では暴風のなか日常を維持しようとする二人の人間が、 何かしようとして何もできないでいるだけだ。 登場するのは他に近所のオッサンと流れ者数人、 そして一頭の馬。

しかしなぜ "トリノの馬" と原題に即した邦題にしてはくれないのだろう。 説明は冒頭のナレーションにあって、 トリノでニーチェが馬に出くわすエピソードではあるが、 それはあくまでニーチェの馬ではない。 "ニーチェの馬" なるニーチェ哲学があるわけでもない。 にもかかわらず、 あっさりとトリノをニーチェに変え、 'いかにも' な感じにしてしまう。 作品に威厳を補強しようとする作為が見え隠れするが、 それでも改悪にすぎない。 なぜ原題がニーチェの馬ではないか、 配給元はそのことをもっと考えた方がいい。 ニーチェにしたことで収益は伸びたのか。 それで伸びたなら日本の観客もナメられたものだが、 改悪について製作サイドは知ってるのか。

自分のような偏屈な観客は邦題を拒否するようになって随分になるが、 改善はほとんど見られない。 いい映画だからこそ "ニーチェの馬" という偽タイトルで記憶されるべきではないし、 会話されるべきではない。 インターナショナル・タイトルと同じように普通に訳してくれ。 それだけだ。 とまあ、 ぶってしまったが、 改めてムカついてくる。

気難しそうなオヤジが暴風のなか馬に引かせた荷車を走らせる。 家にたどり着くと女が出てきて作業を手伝う。 妻なのかと思うが後のナレーションで娘とわかる。 オヤジは右手が悪いらしく、 娘が着替えを手伝う。 スボンのチャックだけは自分で閉める。

娘が鍋に入れたのは石かと思ったが、 じゃがいもだった。 夕食は茹でたじゃがいもを素手で、 塩か何かを振って食べるだけ。 タンパク食品も緑黄色野菜もなし。 食後は ぼーっと座って窓の外を眺め、 就寝。 娯楽も風呂もなし。 朝 目覚めるとパーリンカという酒 (強いらしい) をひっかける二人。 その後オヤジは出かけるが、 馬が言うことを聞かなかったり、 町は破壊されたと聞かされたり。

やがて井戸が枯れ、 ランプが消え、 虫が木を食う音さえしなくなる。 荷車に家財を積んで移動を試みるが、 すぐに戻ってくる。 行く所はもう、 どこにもなかったのだ。 ランプがつかなくなってオヤジは言う。 "また明日やってみよう" と。

白黒で長回し、 アウグスト・ザンダー 「20世紀の人間たち」 に出てきそうな農夫とその娘は、 ついに神の不在を確信したのだろうか。



ニーチェの馬 (2011ハンガリー・フランス・スイス・ドイツ・アメリカ)
A TORINOI LO / THE TURIN HORSE  日本公開2012.2 公式サイト 
監督 タル・ベーラ