2.19.2015

キミも危険分子 「フィフス・エステート」



オスカーがらみで取り沙汰される「アメリカン・スナイパー」もUNBROKENも、内向きのアメリカが色濃く出ていて多少しんどかったが、そんな作品ばかりではないようだ。そう言えばどうなった?と忘れかけていた、あのウィキリークスのエピソード。映画だから脚色されているとは言え、これを見なかったらさらに記憶の片隅に追いやられていたことだろう。アサンジ役のカンバーバッチが最後に語るように、映画をきっかけにしてでも、真実をみつめる姿勢を失くさなければ、キミも危険分子なのだ^ ^

若白髪が印象的なアサンジご本人はあくまでジャーナリストなタッチの風貌だが、カンバーバッチが演じるとキモさがデフォルメされ、どちらかというとミュージシャンのようだ。新興宗教のなかで育ったとされるご本人は、自らの白髪をジョークのネタに使うが、白くなった理由は毎回変わる。しかも本当は染めていたとのこと。たったこれだけの表層的なエピソードも、映画では人物描写の核たりえることが改めて面白いと思う。彼がいかに革命的だったかの検証より、彼に巻き込まれた人々とともにその時間を追体験できるのも映画ならではと言えそう。

演出はいかにもな政治サスペンス、ハイテクのイメージなどはやや陳腐だが、それでもアサンジに惹かれたダニエル。そして、やがて決別することを予感していたとしてもダニエルに支えられたアサンジ。スタートアップ企業のファウンダーとコファウンダーのような、恋人以上の二人の関係はしっかりと描かれているように思う。自分のなかの危険分子を確認したい人はぜひ。



THE FIFTH ESTATE (2013アメリカ・ベルギー) 日本未公開
フィフス・エステート 世界から狙われた男
監督 ビル・コンドン 
ベネディクト・カンバーバッチ ダニエル・ブリュール デビッド・シューリス 
ローラ・リニー スタンリー・トゥッチ