3.18.2012

恋の不発弾 「ワン・デイ」



ベストセラー原作の、 エマとデクスターの23年の恋。 ロマンチックなのか、 じれったいのか よくわからないが、 時間の経過とともに老けてゆく二人は、 それなりに感慨深くもあった。

ロンドンの大学生だった頃、 不発に終わった二人。 エマはわざとらしくサエないメガネッ子だが、 坊ちゃん育ちのデクスターにはスペシャルだった。 あまりに本気だったために、 怖じ気づいたのかもしれない。 それからずっと '友達以上、 恋人未満' な関係は続く。 デクスターは自分のキャラを勘違いし、 テレビに出ておバカタレントに徹するが人気はイマイチどころかヒンシュクのほうが大きい。 大好きな母にも冷たい目で見られる。

テレビはやめたが他に何もできず、 結婚、 離婚。 娘のいいパパにはなれたが、 その間エマは当初の目標通り作家となり、 パリで暮らしている。 ジャズミュージシャンの恋人もいるが、 落ちぶれた果てたデクスターと再会したとたん、 何かがエマのなかに蘇る。 そしてハリウッドの息がかかった映画にしては珍しく、 ハッピーエンディングとは言い切れない終わり方。

退屈なような、 しんみりさせられるような・・ ジューンブライドな季節、 しかし梅雨でもある時期の日本公開にふさわしいかもしれない。 つぶらすぎる瞳のハサウェイは期待通りにコケティッシュで、 スクール水着からチャイナドレス姿まで披露してくれる。 裸で泳ぐシーンもあるが、 よくは見えない^ ^ 微妙にこなれていないブリティッシュアクセント、 あちらにも方言指導などはあるのだろうか。 自転車に乗って、 片手で昔ながらの方向指示を出すのも可愛い。

スタージェスはどうかというと、 可もなく不可もなく。 情けなさは十分に出せてたと思うし、 二人のあいだに漂う、 相性の良すぎる空気感みたいなものも楽しく味わえる。 凝った日付の出しかたなどにもロネ・シェルフィグっぽさがあるのだろうか、 いずれにしても、 いわゆるハリウッドスタイルのラブストーリーとはひと味違って悪くないかもしれない。 乞うご期待。



ワン・デイ 23年のラブストーリー (2011アメリカ・イギリス) 日本公開2012.6/23
ONE DAY  公式サイト・予告 象のロケット 
監督 ロネ・シェルフィグ 
原作・脚本 デビッド・ニコルズ 主題歌 エルビス・コステロ 
アン・ハサウェイ ジム・スタージェス パトリシア・クラークソン 
ケン・ストット ロモーラ・ガライ レイフ・スポール 

3.13.2012

こわいものごっこ ABSENTIA



新作のローバジェット・ホラー。 派手な部分はないが、 心理的に突いてくると同時にさまざまな恐怖イメージのメタファーが上手くリミックスされたような、 隠れた期待作かもしれない。

行方不明者が続出する LAの片隅。 尋ね人の貼り紙をして回る妊婦。 突如 帰ってくる妹、 突如 帰ってくる夫、 謎のトンネル・・。 夫の失踪は5年前、 お腹の子は誰の子? いかにもな刑事、 呪怨のような顔、 ゾンビのような顔、 タランチュラ? 姉は仏教徒、 妹はクリスチャン・・ 神と悪魔の関係? トレード? 帰ってきた夫の服装は5年前の失踪時のまま、 妹は何かを隠してる? トンネルに消えた父を捜す青年が持つ袋の中身は? 検査の結果、 夫の胃には動物の骨? 誰かがエサを?

・・てな感じで、 面白いような、 そうでもないような^ ^ しかしまあ新感覚が楽しめ、 IMDbでは想像以上に絶賛の嵐。 こういう作品は評判だけが流通する前に、 レアに触れるのがオススメ。 といっても恐らく日本公開はないだろうし、 字幕付きを待っていたら いつになることやら。 新感覚はもうすでに失踪しているのかもしれない。




人喰いトンネル MANEATER-TUNNEL ABSENTIA (2011) 日本未公開 
監督 マイク・フラナガン 
ケイティ・パーカー コートニー・ベル デイヴ・ラヴィーン 
モーガン・ピーター・ブラウン ダグ・ジョーンズ ジェームズ・フラナガン 
人喰いトンネル MANEATER-TUNNEL [DVD][DVD]

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3.12.2012

マックスな一日を IF ONLY



春先のちょっぴりラブモード・・ 本日三日目はこの作品を。 新作ではないのだが、 日本では公開もDVDスルーもされていない。 IMDbでは7ポイントをマークする良作だし、 テーマも 'どメジャー' なのに不思議なめぐりあわせだ。 スネた映画の見方しかできなくなった自分が見てもグッとくるのに、 もったいないことだ。 きれいな英語なので、 無理してでも味わいたい人は英語の教材用としても輸入盤でぜひどうぞ。

お話自体はタイムスリップものというか、 夢予知ものというか、 いまとなっては目新しくもないが、 比重はそうしたSciFi的なディテールにはなく、 また先のことがわかっても流れは変えられず。 今日一日しか人生が残されていないとしたら、 という仮定のもと、 完全燃焼する愛が描かれる。 昨日に続き観覧車は出てくるし (こちらは一緒に乗る) またしてもイギリス人とアメリカ人のカップルではある。

オハイオ出身のバイオリニリストの卵であるサマンサは、 ロンドンの音大での3年間を経て今夜が卒業コンサート、 その後は一旦帰国する予定。 イアンはロンドン郊外出身の会社員で今日も会議、 プレゼンと忙しい。 彼女を想ってはいるものの、 自分のことでいっぱいいっぱい。 両親に会ってほしいとの彼女の希望も聞き入れられない。 コンサートの後、 ケンカ別れしてタクシーに乗り込んだ彼女は、 あえなく事故でこの世を去る。

泣き濡れたイアンがふと目を覚ますと、 朝。 なぜか日付は昨日のまま。 隣には死んだはずの彼女が・・ 夢だったのか時間が戻ったのか、 そしてやはり既知の通りに物事は進む。 少し変化を加えてもけっきょく同じ結末が訪れる。 それでもなんとか事故を回避しようとあれこれ企てるが、 そのことは結果的に、 ただ全力で彼女を愛するという行動となり 「君がいなければ僕は愛を知らなかった、 残された時間が50年でも5分でも同じこと」 とのセリフで最後の瞬間を迎えることとなる。

その一日で、 近いのに帰っていなかった故郷に彼女を案内し、 雨の中を二人で走り、 観覧車を恐がっていた彼女に素晴らしい夜景を見せ、 発表することをためらっていた彼女の自作の曲をコンサートで歌わせる。 暖炉の前で二人きりの時間を過ごし、 彼女の好きなレストランでは、 あげられるものすべてをあげる。

今日が最後と思えば恐いものはない。 先送りもない。 わかっていても実践できないテーゼも、 こんな映画を観たならしばらくは本気で実行できるかもしれない。 願わくば乞う、 日本版リリース。




IF ONLY (2004アメリカ・イギリス) 日本未公開
監督 ジル・ジュンガー 
ジェニファー・ラヴ・ヒューイット ポール・ニコルズ トム・ウィルキンソン 

3.11.2012

一緒に乗れなかった観覧車 LIKE CRAZY



なぜかラブストーリー・モードに入っておりますが。 。 春だから?^ ^ サンダンス審査員賞を獲得しているこの作品は、 トレーラーで見る限り '珠玉の' を期待させる王道のラブストーリーのよう。 実際に 「ある愛の詩」 や 「男と女」 を連想させる雰囲気が導入部には用意され、 展開は 「ジェレミー」 のように。 しかし最終的には、 燃える愛の炎を育てようと、 水やりを欠かささずにやっているような、 皮肉な運命に翻弄される苦い恋の物語。 レギュラーコーヒーを煮詰めてエスプレッソにしたような。 。

LAで、 家具デザイナーの卵とロンドンから来たライターの卵。 学生生活の最後に二人は出会い、 一気に愛を燃え上がらせる。 彼女のビザ切れで一時帰国のはずが、 彼に会いたくてビザの再承認を待たずに とんぼ返り。 これが思わぬ重い結果となり、 彼女は強制送還、 入国禁止の措置がなかなか撤回されないこととなる。

彼女に会いにロンドンを訪れた彼は、 LAとは違う空気のなかで疎外感を覚え、 二人は距離と法律に引き裂かれる。 会いたい、 会えない、 忘れよう、 忘れられない・・ そんな葛藤がラスト間際まで。 最後には結婚という手法でこの状況を変えようとするが・・

彼女が留学生であった頃、 彼女の部屋を訪れた彼は、 その椅子の座り心地の悪さを気にかけ、 手製の質素な椅子をプレゼントする。 それは見かけに反してとても座り心地がよかった。 彼を忘れようとロンドンでつきあった男は、 ある日その粗末な椅子の代わりにとスタイリッシュな椅子をプレゼントするが、 皮肉にもこのことは彼女に、 彼への決意をあらたにさせる。

彼女はふたたび LAの空港に降り立つ。 その開放的な空気と、 そこにいる彼。 二人は彼の工房でシャワーを浴びるが、 やっとたどり着けたという思いと、 妙な醒めが渾然一体となったまま END. ずっと欲しかったものが手に入ったときの空しさのように。 '珠玉の' と言うにはドライな感情の貼り付く作品だが、 翻弄されてみるのも悪くない。




今日、 キミに会えたら LIKE CRAZY (2011) 日本未公開
監督 デレク・ドレマス 
アントン・イェルチン フェリシティ・ジョーンズ 
ジェニファー・ローレンス チャーリー・ビューリー

3.10.2012

お嫁ナンバー WHAT'S YOUR NUMBER?



ラブコメもひさしぶりかな。 ま、 なんてことない、 いわゆるひとつのラブコメ。 しかしあらためて、 ハリウッドはこういう作品が上手いなあと思う。 派手な大作の間で絶え間なく作られる、 影の稼ぎ頭なんだろう。 だから なくならないし、 それどころか上手く時代を取り入れながら、 テーマは王道、 でも古くさくならないようにきちんと最適化されている。

邦題は無難につけたつもりだろうが '運命' とかは違うし、 口にしたくないトーン&マナーすぎ^ ^ 原題はラッキーナンバーか何かかなと思っていたら、 結婚までにつきあった男の数だった。 女性誌のよると平均10.5人。 しかしアリー・ダーリンはもう19人。 ナンバーが20を越すと未婚になるという警告に縛られ、 じゃあ元カレを再発掘すればいいじゃん、 と^ ^

アパートの向かいの部屋の男は一夜限りのガールフレンドを連れ込んでは、 翌朝その娘が帰るまでアリーの部屋に身を潜めたりする仲だが、 アリーにとってはまったくの out of 眼中^ ^ (ちょっと今日はオヤジギャグ連発したい気分なんで) しかし、 このへんで展開は読めるが。 。

それでもfacebookをあたったり、 向かいの男に探偵のまねごとをさせたりしながら、 次々と元カレをたぐってゆく。 だが、 どれも上手くは行かず徒労の連続。 バカみたいと自覚しながらも、 この一所懸命ぶりは非常にカワイイ。 タイプではないが。 。

向かいの男は売れないミュージシャンのようで、 現実派のアリーとしてはこのあたりも out of... しかしそんなアリーもクレイドールを作るのが好きで、 実際、 独特なタッチの粘度人形が部屋の片隅に置いてあったりするが、 それを褒めてくれるのは向かいの男だけ。

やがて妹の結婚式。 母はアリーにもステータスな相手を期待するが、 父は娘との自分撮りツーショットをモバイルからツイートしながら言う。 "お前は外見は母さん似だが、 中身は俺に似てちょっとズレている。 だから無理せず自分らしく行け" と。 さあアリーは自分を取り戻してハッピーエンドとなるのか。 それとも数字は20を越えてしまうのか。 。 この春、 軽くオススメ!




運命の元カレ WHAT'S YOUR NUMBER? (2011) 日本未公開
監督 マーク・マイロッド 
アンナ・ファリス クリス・エヴァンス 
[日本版DVD/Blu-rayはレンタルのみ?]

3.04.2012

ジョージ・バレンタイン&ペッピー・ミラー 「アーティスト」



ご存知の通り、 賞もたくさん取った本作品は、 いきなりの白黒で しかもサイレント映画^ ^ 実は一部だけ音声は出るし (それがどこかは見てのお楽しみ) 音楽はずっと流れてるが、 セリフってここまで削れるものだなとあらためて思う。 ビーグル犬もいい味出してる。

評判の映画ほど斜に見てしまうという悪い性格ながら、 もしこれを、 まだ誰も知らないうちに見たなら、 喜び勇んで触れ回りたくなったことだろう。 物語は非常にシンプルで、 本物の古き良き時代のようでもある。 サイレントからトーキーに移り変わる時代のハリウッドが舞台なのに、 不思議なのはこれがフランス/ベルギー製作ということ。 ハリウッドが忘れてしまった何かを、 たまたま他国がみつけてしまったというだけのことかもしれないが、 全編英語というのも狙ってのことだろうし、 それが実際にオスカーを受けたりと ややこしい構図ではある。

日本映画も外国語映画賞など狙わず、 どうせなら全編英語で製作してアカデミー本賞を狙うくらい野心的であってほしいものだ。 しかしまあ、 そんなことはさておき、 いい人の出てくる映画はやはり見終わってじんわりくるものだ。 それだけ日常は殺伐としているということか。 007モドキなジョージ・バレンタインの眉の動かし方もいいが、 調子はいいけど まっすぐな女優の卵ペッピー・ミラーというキャラがいい。 運転手 兼 世話人のクリフトンもまた落ちぶれた映画スターを見捨てない いい人。 どうやったら本当にこんないい人ばかりの世界になるのかを考えてみたい気もする。 やはりベーシック・インカムか。 。

というようなこともさておき、、 自分なんかがお勧めしなくてもヒットするだろうけど、 やはりこの春イチオシの作品になってしまうかな。 いい映画ほどよく書けないのだが、 この映画とともに4月が来れば、 しばらくはハッピーな気分でいられることだろう。 乞うご期待! ちなみにベレニス・ベジョとアザナヴィシウス監督は実生活でもパートナーとのこと。



アーティスト THE ARTIST (2011フランス・ベルギー) 日本公開2012.4/7
監督 ミシェル・アザナヴィシウス  公式サイト・予告 象のロケット
ジャン・デュジャルダン ベレニス・ベジョ ジョン・グッドマン 
ジェームズ・クロムウェル マルコム・マクダウェル