6.29.2012

壊れちまった楽しさに Alyce



IMDbで "good, but not great" という評を見かけたが、 この手のものに誰もgreatを期待してないので、 goodで十分^ ^ 小粋な作品だった。

スペルの壊れたアリスは30前後のOL。 今日も職場でファッキンjobを終え、 週末はクラブ活動。 親友であり、 唯一の友であるキャロルと夜を徘徊するが、 胸の 'もやもや' は晴れない。 ビルの屋上に上がってふざけていると、 友はあっけなく。 。 その場を取り繕ったアリスだったが、 これをきっかけにドラッグにハマり、 スペルのみならず中身も壊れていく。

細かいカット割りが微妙なニュアンスを醸成するとともに、 このサイコなアリスのキャラ造形、 キャスティングがポイント。 殺人鬼となったアリスはこれまでの人生で最も輝き、 死体のディスポーズにも充実感を覚える。 腕を細かく三枚下ろしにし、 ボディをバットでタタキにする。 重労働の後の一服が最高の時間だ。

ふいに訪れるラストも小粋で印象的。 一皮むけてるgoodなホラー、 いつかどこかで乞うご期待^ ^




Alyce (2011) 日本公開未定 
監督 ジェイ・リー 
ジェイド・ドーンフェルド タマラ・フェルドマン 

6.28.2012

王子略奪 「白雪姫と鏡の女王」



白雪姫ブーム?の昨今、 先日の 「スノーホワイト」 とは打って変わって、 こちらはエンタテイメント版ターセム・シン + 衣装 by 石岡瑛子なコメディ。 あほらしいノリで進み、 最後は微妙に白けたボリウッド・ミュージカル風に終わる。

このゲジ眉の白雪姫は誰かと思ってあらためて調べたら、 なんとフィル・コリンズの娘さんだった。 そして今や魔女役を努めるまでになったジュリア・ロバーツに、 王子様はウィンクルボス君

白雪姫の現代風アレンジはむしろ正統的だが、 ここでも大きなツイストがある。 姫は王子のキスによって目覚めるのではなく、 王子を略奪し、 その唇をも奪うのだ^ ^

1本見るとしたらどちらかと聞かれても困るが、 デートで見るならこっち、 オジサンが一人で見るなら 「スノーホワイト」 ということにしておこう^ ^


白雪姫と鏡の女王 MIRROR MIRROR (2012) 日本公開9月予定 公式サイト・予告 
監督 ターセム・シン 衣装 石岡瑛子 
ジュリア・ロバーツ リリー・コリンズ アーミー・ハマー 

6.26.2012

オッサン王子 「スノーホワイト」



今年はなぜか白雪姫ブームで9月にはコメディの 「白雪姫と鏡の女王」 も控えているが、 先に公開されたこちらはファンタジー・アドベンチャー。 苦手なジャンルではあるが、 美女二人を目当てに見てみた。

クリステンはあいかわらず どこか切ない演技をするが、 セロンの完璧な美しさとともに楽しめた。 監督は比較的ニューカマーのようだが、 落ち着いた余裕の演出。 途中で少し飽きる気もしたが、 概ね、 これはこれでという感じ。

原作に加えられたさまざまなツイストだが注目してほしいのは、 邦題はスノーホワイトだけだが、 原題を見ると Snow White "and the Huntsman" となっている。 ハンツマンは妻を亡くした狩人のオッサンだが、 ひょんなことからプリンセスを助けることに。 プリンセスには幼いころに離ればなれとなったウィリアムがいて、 こいつがてっきり白雪姫を目覚めさせる王子かと思いきや。 。 原題にあるのだから、 これを書いてもネタバレにはならないはずだな^ ^

白雪姫は骨格だけのアドベンチャーだとしても、 このアレンジはいったい何なのか。 若造の王子なんかより俺の方がいいぜという、 たんなるオッサンの願望? オッサンがターゲットの映画とは知らなかった。 そんなユニバーサル100周年記念作^ ^ もう公開は終わったかな、 ぜひDVDででも。



スノーホワイト (2012) 6/15~ 公式サイト・予告 象のロケット 
Snow White and the Huntsman
監督 ルパート・サンダース 
クリステン・スチュワート シャーリーズ・セロン サム・クラフリン 
クリス・ヘムズワース 

6.22.2012

ハイファイブがきらい 「ゴッド・ブレス・アメリカ」



今風のボニー&クライドがまさにコンセプトなんだろう。 そう言われるとハスに見てしまうかもしれないが、 比較するのは禁物。 こちらは大上段のタイトルの通りベタベタにアメリカな内容で、 テレビ番組がらみのシーンがかなり入るし、 リアリティ番組やその周辺の名前を知らないとわかりにくい。

もちろん知らなくてもだいたいの想像はつくが、 憎悪の対象にどっぷり触れていないと、 スカっとさわやか銃乱射映画とか、 中年男と女子高生のファンタジック・ロードムービーとして消費されるだろう。 現に日本公開を来月に控えてノリノリのお祭り映画としての宣伝攻勢が始まろうとしている。

自分としてはこの手は好きだし、 楽曲の使われ方もセンスあるし、 演出も流れもディテールもかなりしっかりしていて記憶に残る映画になりそうだが、 何%かの冷めたものが残る。 しかしこの冷めたものこそがこの作品の意義かもしれない。

中年男フランクはある日 会社をクビになり、 さらに末期の脳腫瘍と診断される。 離婚してアパート暮らしだが、 小学生の娘も会ってくれなくなっている。 ふと、 しまってあった銃を取り出してくわえるが、 たまたまテレビに映し出された わがまま放題の女子高生が娘とかぶってしまい、 どうせなら、 こいつを殺してから死のうと考える。

計画は遂行されたが、 それを目撃した別の女子高生ロキシーにつきまとわれる。 彼女にとっては今日が人生最高の日らしい。 こうして二人は "deserve to die" な者を殺して回るようになる。 盗んだ黄色いスポーツカーで。 ティー・パーティ、 キャスターで石油会社の御曹司、 新興宗教、 映画館でのマナーが悪い者、 駐車場で2台分のスペースを取った男が殺される。 そして最後はおバカ素人を弄ぶテレビ局に乗り込み・・

旅の過程で中年男と女子高生は特別な信頼を築くが、 あくまでも二人は "platonic spree killers"。 彼らが憎悪する対象でアメリカの多数派と、 それから外れた者があらためて明確にされる。 それは人種や民族に関わらず、 文化的なマジョリティとマイノリティとも言える。 マイノリティはマイノリティのまま静かに生きることが許されない社会のお仕着せに苦しむ姿が見て取れる。 それは恐怖をまき散らして消費を煽るアメリカという経済活動。 それらへの怒りは一気に吹き出すが "腐ったアメリカ" を正そうという大義名分も最後には裏切られる。

"Beat the Devil's Tattoo" by Black Rebel Motorcycle Club, "Let's Get Away from It All" by Rosemary Clooney, "I'm Not Like Everybody Else" by The Kinks, "I Never Cry" by Alice Cooper などの曲が随所に埋め込まれる。 フランクは実は銃が上手く、 クマのぬいぐるみを使ってロキシーに銃の扱いを指導する。 ロキシーはアリス・クーパーを "accept" していて、 このアリスを論じるシーンがけっこう長い^ ^

殺しのシーンでは最初のクロエが印象的だが、 その他ロキシーの縦の腹かっさばきも見もの。 映画館での出来事をモバイル撮影するスタートアップ企業ファウンダー風の男の撃たれ方もいい^ ^ フランクがAK-47を買うときの銃のディーラーもいい味だ。 7月末公開、 乞うご期待。




ゴッド・ブレス・アメリカ (2011) 日本公開2012.7/28 公式サイト 
GOD BLESS AMERICA
脚本・監督 ボブキャット・ゴールドスウェイト 
ジョエル・マーレイ タラ・リン・バー マディ・ハリソン 
アリス・アルバラード ダン・スペンサー マイク・トリスターノ 

6.17.2012

ママ、後ろにいるのは誰? The Pact




またホラーっすか。 。 そう^ ^ オーソドックスななかにも歯ごたえのある1本。 殺風景な空気感、 ショックシーンまでの溜めた間など、 悪くなかった。

母と娘という関係が中心に置かれているのだが、 アニーは小さな一人娘をベビーシッターに預け、 自分自身の母の葬式に出るため故郷に帰る。 落ち合うはずの姉がいっこうに現れず、 一人、 母の家で遺品の整理をする。 そこで掘り返す思い出は楽しいものばかりではないようだ。 一段落して、 今ベッドに入ったばかりの娘とCAMチャット、 すると娘は "ママ、 後ろにいるのは誰?"

どこからか迷い込んだメールはGoogleMapで、 とある場所を知らせている。 ストリートビューに写り込んだ人影はどこかを指差している。 姉の失踪を警察に届ける。 母の家での不思議な現象を霊能者に見てもらう。 目の不自由なこの霊媒ガールがなかなかいい味を出している。

撮った写真に不審なものを感じた警官はふたたび家を訪れる。 不意にのど元をかき切られる。 幽霊とは別に、 もう一つの恐怖が存在するようだ。 アニーは教会で古い写真をみつけるが、 そこには見たこともない男が、 自分と同姓を名乗って写っていた。 また未解決の殺人事件を扱ったサイトでは、 自分がぶら下げているのと同じ十字架のペンダントをした女が、 首を切断され殺されている写真が掲載されている。

アニーはウィジャー盤を使って霊とのコンタクトを試みる。 あなたはXXさん? YES 殺されたの? YES 私に何を伝えたいの? "下" ・・え、 下? 地味めな作品なので危ぶまれる日本公開ではあるが、 ホラーファンは乞うご期待。

(追記12/6) イミフな邦題となってスルーされたもよう。 。




ディスコード The Pact (2012) 日本未公開 
監督 ニコラス・マッカーシー 
ケイティ・ロッツ キャスリーン・ローズ・パーキンス 
ヘイリー・ハドソン キャスパー・ヴァン・ディーン 

6.11.2012

神々の黄昏 「アイアン・スカイ」



ナチスが実は逃げ延びて、 月の裏側で虎視眈々と反撃の機会をうかがっていた、 という噂のトンデモSF、 一足先に見た^ ^ 発想はいいとしても全体にユルユルで、 宇宙船が飛来した際の国際会議で北朝鮮が "あれはうちが飛ばした" と発言して嘲笑を受けるあたりくらいしか笑えなかったが、 それでも最後は妙にシリアスで、 戦争を繰り返す人類を憂いながら終わるところなどは悪くない。

ナチスが黒人というものを知らなかったなんて、 どういうニュアンスなのかイマイチわからず。 アメリカの月着陸船から降り立ったジェームズ・ワシントンは捕らえられ、 白く染められる。 彼が持っていた携帯電話。 これは何だと聞かれて、 コンピュータだと答えると、 まさか、 コンピュータとはこれだと部屋一杯の年代物のマシン。 しかも研究者は老人一人だけ。 このあたりは思いついたまんまで ほとんど笑えない。

かたや地球、 アメリカでは女性大統領が誕生しているが、 それを知らない次期総統アドラーは ずっと him と言っている。 極端に描かれるアメリカの覇権、 それは女性大統領になっても変わらないらしい。 あっちでも、 こっちでも権力争い。 ネオナチが中途半端に出てきたり、 ナチスのマークはそもそも愛と平和の象徴だということになったりして、 混線して収拾がつかない。

アメリカ大統領が再選の際に行なった演説、 ブレーンが用意した原稿はナチ的なアジテーションそのものだったというところなどは それなりに面白いが、 やっぱり最後までトンデモの領域を出ず惜しい作品と言える?かもしれない^ ^ 乞うご期待。 エントリータイトルは月の第4帝国最終兵器 Götterdämmerung より。




アイアン・スカイ (2012 フィンランド・ドイツ・オーストラリア) 日本公開9/28
IRON SKY 監督 ディモ・ヴォレンソラ  公式サイト 
ユリア・ディーツェ ゲッツ・オットー クリストファー・カービイ ウド・キア 
ペータ・サージェント ステファニー・ポール ティロ・プリュックナー