12.30.2009

12/306

2009年もあっと言う間だった気がします。 そんななか、 私めが見た公開作品あるいはDVDリリースから印象的だったものをピックアップしてみました。 去年よりは少し減って総数 約306本、 そのうちのベスト12です。 これ以上細かい順位はつけませんが、 納得いくような、 何だそれ?みたいな^ ^ それでは2010年がみなさまにとって、 また私自身にとってもエポックメイキングな年となりますように。 SEE YOU NEXT YEAR!!


レスラー The Wrestler » 詳細 
ミッキー・ローク マリサ・トメイ 監督 ダーレン・アロノフスキー 

イングロリアス・バスターズ INGLOURIOUS BASTERDS » 詳細 
監督 クエンティン・タランティーノ 

ワンダーラスト FILTH AND WISDOM » 詳細 
監督 マドンナ 

平凡ポンチ » 詳細 
監督・出演 佐藤佐吉 秋山莉奈 

ロック・ミー・ハムレット! HAMLET 2 未公開 » 詳細 
スティーブ・クーガン 監督 アンドリュー・フレミング 

扉をたたく人 The Visitor » 詳細 
監督 トム・マッカーシー リチャード・ジェンキンス 

LOOK » 詳細
監督 アダム・リフキン 

キット・キトリッジ KIT KITTREDGE 未公開 » 詳細 
アビゲイル・ブレスリン ジュリア・ロバーツ製作総指揮 

幸せのきずな Flash of Genius » 詳細 
監督 マーク・エイブラハム グレッグ・キニア

ヤッターマン » 詳細 
深田恭子 三池崇史監督 

この自由な世界で IT'S A FREE WORLD... » 詳細 
ケン・ローチ監督 

TOKYO! » 詳細 
ミシェル・ゴンドリー監督 レオス・カラックス監督 ポン・ジュノ監督  


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激しくブレる望遠 「白夜」



年末ネタかな。 。 小林政広監督の新作と言っても誰が見るんだろう。 あ、 俺か・・ あとは主演のお二方のファンか。

どうも画質がビデオっぽい。 それをかなりの望遠レンズで、 手ぶれ込みで見せるシーンが多い。 演出でもあり、 ビデオ画質をカバーするかのようでもある。 ワイドレンズのシーンになると、 いきなりテレビドラマのような空気感。 ビデオが悪いとは言わないが、 ようするに低予算なんだろう。

その昔ギャガが買い付けだけでなく製作を始めようというときに、 プロデューサー面接というものを受けたことがある。 映画のプロデューサーにとって何が一番重要かね? と偉そうなオッサン面接官に聞かれ、 一言では答えかねていたら落ちてしまったが、 彼が言うには "企画力" とのこと。

その後、 苦戦する興業や製作の中で、 小林監督なんかを引っぱってきて、 製作費は最低に抑えてリターンMAXを狙う。 これがまさにその企画力というものなんだろう。 監督にしてみれば思い入れのあるストーリーだし、 予算がなくても、 あてがわれた出演者でも引き受けることだろう。 公開時は噂も聞かず、 曖昧なターゲティングでクリスマスにDVDをリリースしてくるようなセンス。 これぞギャガの言う企画力だ。

で、 けっきょく誰が見る? ロマンチックな映画に見えてもクリスマス向きじゃないよ。 どうせならお盆だろうね^ ^

話自体は悪くないし、 多少棒読みでも出演者に悪気はない。 もう少し説明セリフを削ってもよかったかなと思う程度。 リヨンでロケをしながらも、 ゲリラ撮影のようなマイナーさも良しとしよう。 だがフランス映画に恋した監督の成れの果てを見るような興ざめ感、 これはプロデュースの責任だろう。 気恥ずかしくてもいいから酔わせてほしい。 コンテンツをないがしろにしたコンテンツビジネスなんて、 2009年とともに、 白夜の約束とともに、 永遠にさようなら・・


白夜 (2009日本) 公式サイト 
原作・脚本・監督 小林政広 
眞木大輔(EXILE) 吉瀬美智子 

12.28.2009

接続してみたい 「アバター」



これだけの大作となると何となく構えてしまうのが自分の常だが、 始まって数分もすれば呪縛を解かれたかのように素直に入り込めた。 アバターの操縦士として連れてこられたジェイクのキャラ、 車椅子・・ このあたりの設定のわかりやすさゆえだろう。 やはりキャメロンは上手い? ビッグチャンスにも肩の力を抜いて打席に入ることのできるバッターのように。

宮崎駿の影響みたいなことが言われているが、 人間文明批判、 自然との共生みたいなところは確かにそうかもしれない。 でもアバターと神経接続するあたりはエヴァンゲリオンのようだ^ ^ サマンサ・ムンバが出ていた 「タイムマシン」 (2002) のようでもあった。 。

だがこれほどのトップセールスを生み出した理由は、 王道的な物語と斬新な映像表現だけではない気がする。 まず、 この顔がいい。 キモカワとしても紹介しにくいモロキモ。 部族的なニュアンスも上手く取り入れた凛々しさ、 プロポーション。 これはなかなかいいデザインだよな。

それからやはりアメリカは自己反省モードに入っていて、 王道的な物語とは言ったものの、 イラクに仕掛けていった戦争が重なるようなこんな物語が受け入れられる、 あるいは ありがたがられる状況に巧妙に投げ込まれていると言える。

それにしても、 かつては全く相容れない存在として描かれたエイリアンが、 たった数十年後には人類こそが破壊的エイリアンであり、 自然とともに生きるエイリアンは人類のオルタナティブな姿として描かれる。 この反転は感慨深いのではないだろうか。 この部族はNa'viと呼ばれ、 またネット的なメタファーが多用されるのも興味深い。

全世界ほぼ同時公開はこうした大作だけの専売特許でなく、 当然のことになるべき。 あえて吹替、 ノン3Dで見たが、 これほど体験的な作品なら3Dでもよかったかな。 映画というものが、 別の世界、 別の時代、 別の自分を生きるという体験であるとするなら、 最新の技術で作られた映画的な映画と言えるだろう。


アバター AVATAR (2009) 12/23〜 公式サイト&予告 
監督 ジェームズ・キャメロン 
サム・ワーシントン ゾーイ・サルダナ シガニー・ウィーバー 
ミシェル・ロドリゲス スティーブン・ラング 

12.26.2009

妹よ・・ 「ハロウィン II」



クリスマスが終わってハロウィンというのも恐縮だが、 これはロブ・ゾンビ先生によるリメイク版。 ジョン・カーペンター製作の 「ハロウィン2」 がどんな内容だったかは忘れたが、 本作ではブギーマンとしてではなくマイケル・マイヤーズ (そんな名前だったんだな、 「オースティン・パワーズ」 かと。 。) あるいはその母、 そして妹の呪われた歴史にスポットが当たっている。 そのせいかビギニング的な雰囲気で、 迫力もあるし痛々しいが、 なぜか睡魔に襲われる。

少し面白くなるのは1時間を過ぎたあたりからか。 ハロウィンパーティでのバンドがゴシックなムードを醸し出すが、 カーペンターが監督した最初の 「ハロウィン」 (1978) は徹底したモダンホラーだったはずだから、 もうすでにリメイクではなく新たなハロウィンとして見たほうがいいかもしれない。

少年期の長い金髪のマイヤーズや白い馬を引く母が妄想のように現れて ファンタジックでもあるのに、 ガサツなまでの惨殺シーンとのミスマッチ。 マイヤーズ・ファミリーにフォーカスするも悲しみの理由はわからず、 一転してマイヤーズに娘を殺された父の悲しみを大げさに煽ってみたりするチグハグさ。 コンセプトが曖昧なまま丁寧に作り込まれてしまった空しさだけが過ぎてゆく。 思い入れはわかるが明らかに失敗作だろう。 DVDスルーで十分。 にもかかわらずゾンビさん、 まだ満足せず? さらなる続編を予感させる終わり方になっている。 。 (追記) 公開されるそうです^ ^

P.S. 上の写真のマスク、 どことなくブルース・ウィリスに似てない? ^ ^



ハロウィン II Halloween 2 (2009) 日本公開6/19 公式サイト 
監督 ロブ・ゾンビ  象のロケット 
スカウト・テイラー=コンプトン マルコム・マクダウェル シェリ・ムーン・ゾンビ 

12.23.2009

王ではなかった少年 「かいじゅうたちのいるところ」



ガンモ」 のようなウサギをかぶった少年が、 不思議な世界を冒険するスパイク・ジョーンズ監督の話題作。 絵本を原作に持ってきたり、 狙ってきたなと思いきや、 意外にあっさり。

母、 姉と暮らす少年だが二人とも仕事やデートに忙しく、 少年は何かを持て余していた。 家を飛び出し、 そのままボートに乗って無人島にたどり着く。 そこには不思議な生物がいたが、 少年は王として迎え入れられる。 外見は不思議な生き物だが、 内面はまるで人間のように、 ちょっとしたことにクヨクヨ悩んだり、 嫉妬したり期待したり失望したり。 それでも、 どれくらいの時間かはわからないが彼らと暮らし、 遊び、 一つの事業を成し遂げる。 そして少年は王ではなく、 ただのマックスだと言って別れを告げる。

何か非常に繊細なものが隠されているような、 あるいはただのスランプのような。 どうしようもない失望とそれでも気を取り直してやっていこうじゃないか、 みたいな不思議なメンタリティは今のアメリカの心境か。 話題性に反して佳作ファンタジーぐらいに思えるが、 微妙に気の狂ったユルさや音楽は秀逸^ ^ 2010年第一弾公開、 寒い1月、 毛むくじゃらの生き物を堪能してみては。



かいじゅうたちのいるところ (2009) 日本公開2010年1/15
Where The Wild Things Are  公式サイト&予告 
監督 スパイク・ジョーンズ 
原作 モーリス・センダック(絵本) 製作 トム・ハンクス 
マックス・レコーズ キャサリン・キーナー 
かいじゅうたちのいるところ原作

世界絵本箱DVDセレクション かいじゅうたちのいるところ[全3話] まよなかのだいどころ もりのなか (世界傑作絵本シリーズ—アメリカの絵本) すてきな三にんぐみ
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12.21.2009

原始レイヤー 「男と女の不都合な真実」



なかなか上品でキュートなラブコメだった^ ^ どうだ、 決まったぜ〜みたいな邦題がついてる。 '不都合な' というニュアンスのせいで何となく政治的な映画か、 あるいはスキャンダラスな話と思っていたが まるで違っていた。 原題は "みにくい真実"。 放送禁止用語を乱発する男と美人プロデューサーの物語。 「キューティ・ブロンド」 の監督だったんだね、 やはり上手い。 だから監督は多分、 老獪なオッサンなんだろうと思いきや、 まだ30代のイケメンなんだね、 意外。 » ロバート・ルケティック監督の真実

そして今回のヒロイン、 キャサリン・ハイグル・・ 色っぽい。 こんな感じのお姉さん、 日本にもたまにいる。 え、 いない? いや、 いるよ^ ^ 化粧品メーカーのかなりグッドなポジションにいそうな。 二人ばかり知ってるけど。 。 この映画でのキャサリンはローカルTV局のプロデューサーで、 英語で言うところの "コントロール・フリーク" つまり仕切り屋。 美人で色っぽいが、 スキがないタイプ。 男でも仕事でも意のままに操らないと気が済まないのだ。 映画では女性に多いとされているが、 中堅の成功者に多いタイプではないか。 だがそんな彼女にも視聴率は操れずヤバイ状態だった。

そこへ "みにくい真実" というケーブル番組のホストが呼ばれる。 視聴率奪還のピンチヒッターというわけだ。 最初はこの男を毛嫌いしていた彼女だが、 男は番組が始まって以来の高視聴率をたたき出したばかりか、 彼女が狙っている彼を落とすための良き指導者となった。 仕切り屋を '男好きする女' に変えることで上々の成果を上げる。

男は単純、 女は何層にもなっている、 と語る男。 かつての失恋経験から "恋愛不要 カラダだけの関係でいいや" 論者のはずだったが、 いつしかこの姉さんの第二レイヤー、 第三レイヤーを知るうちに恋心モードとなる。

視聴率がケーブルに負けた、 という表現があったように思うが、 アメリカのテレビ局の内幕的な一場面だ。 つまり3大ネット、 ローカル局、 ケーブル局という明解なレイヤーがあって、 地方局であってもケーブルに負けるのは大ごとらしい。

やがて男は全国区から声がかかるが、 この町を離れたくないという一面を見せる。 同時に彼女も3大ネットへ挑む気はない。 この町が、 これから子育てをするにも一番だと。 レストランではミネラルウォーターはラベルだけだからと、 タップウォーター (水道水) を頼む彼女だったが、 バーで同じオーダーをする男を見た瞬間、 何か響くものがあった。

出会うことでお互いが変わり成長する。 男は "みにくい真実" のその先へ、 女は理想の男からリアルな男へ。 アンチテーゼから始まって、 王道の恋愛論に収束するあたりは出来すぎだが、 にもかかわらず枝葉がよくできているというのか、 素敵な1本を見たという気がした。 DVDは来年2月リリースだが '不都合な' に惑わされずに楽しんでもらえたらと思う。



男と女の不都合な真実 The Ugly Truth (2009) 公式サイト 
監督 ロバート・ルケティック 原案・脚本 ニコール・イーストマン 
キャサリン・ハイグル ジェラルド・バトラー エリック・ウィンター