3.28.2013

法の下に平等 「リンカーン」



ダニエル・デイ=ルイスが扮するリンカンは、 目元が少し甘めな気はするが、 本人が実際にそこにいるような雰囲気を漂わせる。 しかし '演じる' ではなく、 あくまで '扮する' と書きたい気分だ。 オスカーや各批評家賞は主演男優賞 (一部 美術賞) として獲得していることも作品の力点を物語っているかもしれない。

スピルバーグがなぜ今リンカンを取り上げるのか興味はあったが、 結局よくわからずじまい。 物語の力点は意外にも、 奴隷制禁止の憲法修正案を通すための票集めに終始する。 悲願の法案が2票差で可決されるまでの、 地味な説得工作はそれなりに見応えがあるが、 リンカンという人が迫ってきたという感想は持てず、 むしろトミー・リー・ジョーズ演じる黒人を妻に持つ男の立ち回りのほうが印象的だったりする。

歴史だからネタバレではないと思うが、 最後は銃弾に倒れるところ、 そして演説の一部で締めくくられるという予想通りの終わり方。 暗殺された初の大統領でもあったわけだ。 そうした血なまぐさい歴史を、 信念を持って生きた人たちと、 そのためのプラグマティズムが説かれているとも解釈できるし、 スピルバーグはただ個人的に、 死ぬまでにリンカンの映画を撮りたかっただけなのかもしれない。 乞うご期待。



リンカーン Lincoln (2012) 日本公開2013.4/19 公式サイト・予告 象のロケット
製作・監督 スティーブン・スピルバーグ 
脚本 トニー・クシュナー 
ダニエル・デイ=ルイス サリー・フィールド ジョセフ・ゴードン=レヴィット 
デビッド・ストラザーン ジェームズ・スペイダー トミー・リー・ジョーンズ 

3.26.2013

コピーバンドのような・・ 「SUSHI GIRL」



好きな路線でしょ? って言われそうだが、 弁明しておこう。 それなりにソソられて見たものの、 これは堂々のNG^ ^ ここに記録してさらっと流そうかとも思ったが、 NGとしてエントリーしてやりたくなってきた。 クソ映画とまでは言わないが、 カス映画かな^ ^

タランティーノを好きなのはわかるが、 ストーリーラインが陳腐すぎ。 刑務所で仲間のことを吐かなかった意志の強い男を拷問して ダイヤのありかを聞き出そうなんていうのがそもそも。 。 拷問の手法もつまらない。

さらに、 これがあの 「スター・ウォーズ」 の? と、 年月を呪いたくなるようなマーク・ハミルをはじめ、 キャラの人物造形に魅力がない。 犯行時のカットバックがテンポを悪くしている。 その他、 諸々。 関係ないがジェームズ・デュヴァルという人は なんとなくブライアン・フェリーの若い頃にも見えるなあ。 写真で見るとそうでもないんだけど。

"女体盛り" というモチーフも、 ま、 インパクトはあるがそれほどエロくもなく、 全裸でなくてもいいからバーバラ・パルヴィンがやるとかなら凄いが、 タイトルの割に効いてこない。 しかし最後の最後にきて、 ちょっとだけ面白くなったような、 ならないような。 劇場公開されていたとは恐れ入ったが、 こんなのに限って邦題が原題のまま、 カタカナにもなっていない^ ^ 奪ったダイヤの元の持ち主が恐い人なのかと思っていたら、 その話はどこかへ消えていた。 。 ぜひ50円レンタルで^ ^



SUSHI GIRL (2012) 日本公開2012.12月 公式サイト 象のロケット
脚本・監督 カーン・サクストン 
トニー・トッド ノア・ハサウェイ ジェームズ・デュヴァル 
マーク・ハミル アンディ・マッケンジー コートニー・パーム 
サイラス・アレキサンダー ダニー・トレホ ソニー千葉 

3.24.2013

裸じゃない、シャワーキャップを被る 「ヒッチコック」



ヒッチコックが 「サイコ」 を撮ったのは1960年で、 彼はすでに60歳を過ぎていた。 天才と讃えながらも世間は、 次が最後の作品だろうと決めつけていた。 しかしヒッチにはまだまだ衝動があふれていた。

彼はこともあろうにエド・ゲインの猟奇殺人をモチーフに企画を立てた。 パラマウントから出資は得られず、 収まってろとの空気に反発するかのように、 家を抵当に入れて製作を進める。 ヒッチという映画作家の、 こうした無邪気なインスピレーションと反骨精神がこれまでのキャリアの本質なのに、 けっきょく映画会社はそれをリスクとしか考えない。

"裸は困る" "シャワーキャップを被るよ" 
"トイレが写るシーンなどアメリカ映画史に前例がない"  "じゃあフランスへ行ってビデで撮るよ" ・・

映画会社との そんなやり取りを繰り返しながら製作は難航するが、 孤高のヒッチを支えていたのは他ならぬミセス・ヒッチコックだった。 ときに子どものような夫を叱咤激励し、 最初は音のなかったシャワーシーンに例の音を持ち込んだのも彼女だった。

え、 そうだったの? と驚くとともに、 そんな妻が浮気をしているかもしれないという精神状態のなかで、 よりディープにエド・ゲインに自分を重ねあわせるヒッチ。 ナイフを持つ怒りの手も彼自身だった。 夫は夫で女優とのスキャンダルもあったようだが、 そうこうしてミスター&ミセス・ヒッチコック、 とにかく映画を完成させる。

パラマウントからはイヤイヤ公開を取り付けたものの冷たい扱いで、 宣伝戦略まで自分たち自身でアイディアを絞る。 公開初日、 観客の反応を扉の外から伺うヒッチ。 劇場に悲鳴があふれたとき、 彼のクリエイティビティはひとまずの満足を得る。 そして 「サイコ」 はヒッチコック作品最大のヒットとなる。

アンソニー・ホプキンスがほとんどヒッチコックに見えないのがマタにズキ・・ じゃない、 タマにキズだが^ ^ 天才のバカみたいな ひととなりが垣間見れる良作。 ラストに流れるのは懐かしの 「ヒッチコック劇場」 のテーマ。 乞うご期待!



ヒッチコック HITCHCOCK (2012) 日本公開2013.4/5 公式サイト・予告
監督 サーシャ・ガヴァシ  象のロケット 
アンソニー・ホプキンス ヘレン・ミレン スカーレット・ヨハンソン 
トニ・コレット ジェシカ・ビール ジェームズ・ダーシー 


ヒッチコック・ブルーレイ・コレクション Vol.1 [Blu-ray]


ヒッチコック・ブルーレイ・コレクション Vol.2 [Blu-ray]
ヒッチコック Blu-rayコレクション Vol.1/Vol.2

3.16.2013

黒い森を自家栽培 Hansel & Gretel Get Baked



白雪姫に続いてヘンゼルとグレーテルが来るそうで、 以前に予告を見ていて、 それなりに面白そうだと思っていたら勘違いだった。 予告は “Hansel & Gretel: Witch Hunters” のもので、 他にもヘンゼルとグレーテルをモチーフとする作品はすでに何本も出来ていたのだった。

このGet Bakedもそのなかのその1本で、 葉っぱのポスターが表す通り、 魔女の婆さんが地下で "ブラックフォレスト" と呼ばれるマリファナを自家栽培していて、 そこに迷い込んだ子どもたちを食べたり、 若さを吸ったり。 思いつきもいいところのアレンジで、 地下の森は大した迷路にも見えないのに、 目印にパンくずならぬ "Skittles" というお菓子を一粒一粒置いていく。 タイトルバックは薬のラベルだったりと凝ってはいるが、 それ以降はNG大賞にふさわしい。

アイドルとして人気上昇中のモリー・C・クインをグレーテルに据えたのはいいが、 片や兄のヘンゼルは影が薄く、 中途半端にゾンビを出してきたり、 概ね中途半端に残虐で、 そのくせ画面は暗すぎてよく見えない。 「トワイライト」 のプロデューサーも今回は失敗だろう。 にもかかわらずラストには2への布石が用意されている。 乞うご期待^ ^

(追記7/3) Witch Huntersも見た。 そっちは面白い!




ヘンゼルとグレーテル ゲットベイクト(原題) (2013) 日本公開未定
Hansel & Gretel Get Baked
監督 デュエイン・ジャーニー 
モリー・C・クイン マイケル・ウェルチ ビアンカ・サッド 
ララ・フリン・ボイル 

早稲田大学算数学部 「ひみつのアッコちゃん」



おいおい、 これ見てんのか? と自分でも思いつつ。 こわいものみたさはホラーに限らないんで^ ^ ところがこれが、 予想を 'はるか' に超えて素晴らしく、 これは照れずに人に薦めるべきだという内容だった。

綾瀬はるかはピッタリだろうと思っていたが、 もう少し若いコでもよかったのかと思ったり。 しかしこの原作を持ってきて、 こう展開するかという脚本がよかったのだろう。 会社が乗っ取られようとしている株主総会で '大人の' アッコちゃんが繰り出す小学校の反省会のような熱弁。 あれがもう、 最高! ラスト間際のキスシーンでもよくあのアイディアが出たものだと敬服する。

原作に忠実とかは誰も言わないであろうレベルの脚色なので、 だからと言ってやはりテクマクマヤコンでないと成立しないわけで、 すごいインスピレーションだなと思う。 こういうクリエーションも日本にあるのだから、 なんとかミクスにたよらないで、 素敵な国にしよう、 いや国と言わず素敵な世界にしよう、 などという気にさせられる良作。 まさか? と思ったらぜひ見てほしい。 まじレ^ ^



映画 ひみつのアッコちゃん (2012日本) 公式サイト 象のロケット
監督 川村泰祐 原作 赤塚不二夫 
脚本 山口雅俊+大森美香+福間正浩 
綾瀬はるか 岡田将夫 谷原章介 吹石一恵 吉田里琴 内田春菊 鹿賀丈史 
もたいまさこ 大杉漣 香川照之 

3.15.2013

血のコーヒールンバ “路地”



それなりのホラーが続くなか、 本日は極めつけ、 NGギリギリの作品。 国籍はスペインとともにコロンビアがクレジットされ、 出演者にキューバやチリの美女を配したところがNGにならなかった理由か。 。

まず笑えるのがタイトルバック。 ヒロインはダンサー志望で、 そのオーディション風景が70年代テイストのオープニングクレジットとなっている。 その際の音楽がなぜかヒュ~ドロドロというオバケサウンドで^ ^ 昔のイタリアンホラーの影響でもあるのだろうか。 でもこの娘がタヌキメイクではあるがけっこう可愛く、 話はようするにヴァンパイアものなのだが、 後に登場するレオノアがまたラテンの香りと血の味を漂わせてくれる。

姉と二人暮らしのローサは、 洗濯機の故障で慣れないコインランドリーへ。 誰もいないランドリーは寂しげでいい雰囲気。 そこへスペイン風イケメンがやって来る。 元カレと別れたばかりの彼女は洗濯を待ちながらこの男と話し込んだりするが、 最初はいい感じに見えた男もやがて血に飢えた形相を表す。 すったもんだあって、 進行はあまりスムーズではなく、 ツッコミどころも多かったが何とか見終えた。

原題は "路地"。 インターナショナルタイトルも "袋小路" と即しているが、 邦題だけはDVDスルーでも意味不明。 あえて渋く 「路地」 もいいし、 そのまま 「ブラインド・アレイ」 でいいものを、 なぜわざわざ視覚から聴覚に変更する? あっさりした響きもこのラテン味には合わないし。 擁護するほどの作品でもないが、 日本人が言語に対する感性を麻痺させる一翼を担う、 この手の 'ア邦題' 駆逐のためにも "路地、 見た?" "あのB級ラテンヴァンパイアね" と会話してほしい。



サイレント・ウェイ (2012スペイン・コロンビア) 日本未公開
El CallejónBLIND ALLEY
監督 アントニオ・トラショラス 
アナ・デ・アルマス レオノア・バレラ ディエゴ・カダヴィド ジェフ・ガム