12.31.2013

9/272

このごろ本数が減ったなと思っていたのに、 けっきょく272本は見たようす。 そして“気に入った!”のは下の9本とのこと。 ・・と、 何か人ごとのようだが、 こうして走り書きでもしておかなかったら思い出しさえしないかもしれない。 ああ、 そう言えば・・ くらいの記憶で。 気に入ったものですらそうだから、 気に入らないものは見たことさえ忘れているに違いない。

健忘症かアルツハイマー? というより、 むかしからそんな感じ。 さらに最近は娘に薦められたアニメ 「会長はメイド様!」 まで見るし、 テレビドラマでは 「あまちゃん」 から 「半沢直樹」 さらには 「安堂ロイド」 まで見た^ ^

見てるあいだはどれも面白かったし、 次回が待ち遠しかった。 映画なんか必要としない人の気持がよくわかった。 いっぱしの映画フリークを気取っている自分にとって、 映画とはなんだろうかとあらためて問いかけてみる。 それはただの暇つぶしか、 一晩寝れば忘れる娯楽か。 しかし答えは出ない。

ここではないどこか、 自分ではない誰かを求めて、 現実を逃避しつつ現実に帰るもの。 かつてはそんなふうに定義していたように思う。 が、 なぜか今はそれも虚しい。 ようするに不作なのだろう。 それでも年間300本近く (オリジナルビデオも含む) 見る貪欲さだけは残っているとも言えるが、 もっと本数を減らしてハングリーな状態にしておいたほうがいいのでは、 とも思う。

人生を変えるほどの作品は生涯に1~2本あればいいのだろう。 というか、 そこまでの何かを映画、 あるいはアニメやドラマに求める者は少数派で、 そうなっているということはすでに1本には出会ったということ。 にもかかわらずさらに何かを期待し、 そんなニーズを知ってか知らずか今日もまた映像作品は量産されていく。 その1本の衝撃のせいで、 そうではない他の多くのものに人生の時間が侵食されていくという、 あまりにもアンバランスな1対その他。 死ぬまでにもう1本くらいはすごい映画に出会えるのだろうか。


デタッチメント 優しい無関心 Detachment (2011)

素敵な相棒 フランクじいさんとロボットヘルパー Robot and Frank (2012)

コズモポリス COSMOPOLIS (2012)

ONLY GOD FORGIVES (2013)

カルト (2013)

映画 ひみつのアッコちゃん (2012)

ジャンゴ 繋がれざる者 DJANGO UNCHAINED (2012)

The Sessions (2012)

ゼロ・グラビティ GRAVITY (2013)


それではみなさま、 よいお年を。 どことなくセンチメンタルな締めを許したまえ。

12.21.2013

マイ・ネーム・イズ・マリリン 「インシディアス 第2章」



前作はそこそこ当たったのだろうか。 早い続編だが、 すでにラストは第3章への布石となっていて、 「サスペリア」 風のクラシカルな題字で一旦の幕引き。

王道のような、 ニッチのような、 よくわからないポジショニングではあるが、 何が飛び出すかわからない期待感は残る。 しかしながら前半は何とも散漫な進行で、 前作のストーリーなんてほぼ忘れている上に、 そこからのつじつま合わせがほとんどで、 集中力が続かない。 後半、 ようやくヘンテコな展開になり、 独特の不気味さが出てくるものの、 いわゆるパート2な出来と言わざるをえない。

けっきょく頼りになるのは例の霊能者のバアさん一人で、 死んだにもかかわらず活躍し、 悪霊の記憶を壊すのよ、 と言ってエゲツない壊し方をする^ ^ そのへんぐらいだろうか、 見所は。 。 乞うご期待^ ^


インシディアス 第2章 Insidious Chapter 2 (2013) 日本公開2014.1/10
監督 ジェームズ・ワン  公式サイト・予告 象のロケット 
パトリック・ウィルソン ローズ・バーン タイ・シンプキンス リン・シェイ 

12.11.2013

上も下もない世界 「ゼロ・グラビティ」



邦題の件、 べつにゼロつけなくても、 と思うが、 今回はクドく言わず^ ^ 無重力は開放的ではなく、 むしろ、 いかに不自由を強いられるかということがわかる作品。 非常に先鋭的な 「選択と集中」 を持った企画に感心する。 しかし、 またコレ言うと怒られそうだが 「プラネテス」 という日本のコミック/アニメに似ているそうだ。 それにしてもこの無重力の動き、 どうやって撮影したのかとか、 CGにしても無重力演算エンジンなどがあるのかなとか、 久々に素朴な驚きを持って映画という気がする。

登場人物は少ないが、 ここにも 「選択と集中」 が見られる豪華な二人。 サンドラ・ブロックという人は一見ノホホンとしているようで、 底にはスゴい女優魂を持つ人だなとあらためて知る。 I hate space. (宇宙なんてキライ) というセリフが集約するように、 生きているうちに宇宙から地球を見たい、 なんて夢は、 宇宙ゴミに叩き壊される。 そこはただ、 生と死がきわめて接近した場所であり、 ワラをもつかむようにして命をつなぎ止める原初的な世界であることを再確認する。 賞もたくさん取ってるが、 それ以上に、 逆説的な宇宙観を持ったエポックメイキングな作品と言えるだろう。 フォロワーがあふれそうでコワくもあるが。

しかしまたそれ以上に、 新たなニュアンスの映画的体験を届けてくれる、 一見に値する作品と言える。 それだけと言えばそれだけだが、 そのそれだけさがいいように思う。 乞うご期待!


ゼロ・グラビティ GRAVITY (2013) 日本公開12/13 公式サイト・予告
監督 アルフォンソ・キュアロン  象のロケット 
サンドラ・ブロック ジョージ・クルーニー 

12.08.2013

老紳士が手袋を外すとき 「鑑定士と顔のない依頼人」



ここのところ不作ぎみであったが、 これはなかなか面白かった。 そこそこの年齢になって、 それなりの地位にいるものの、 実は若い娘が好き、 という男が見るとさらに面白いはず。 ちょっとネタバレしちゃったが、 あえてこの可憐な、 顔のない依頼人の写真は貼らないでおこう。 それらしい邦題は完全な作り込みで、 インターナショナルタイトルはシンプルにベスト・オファー。 オークションの用語でもあるそうだが、 このままでなぜいけないのかな。

ジェフリー・ラッシュが演じるヴァージル・オールドマンは、 鑑定士ではあるがオークションを主催するオークショニアでもあるので、 邦題が何かしらの偏向をもたらす。 また顔のない依頼人となっているが、 これまでに “顔のない” とついている映画の隠喩的ニュアンスとは違っているので、 明らかにダメ邦題と言える。 顔どころか姿も現さないのだが、 それは中盤までの話だし、 顔のないと言うよりは引きこもり的な意味あいのほうが強い。

両親を亡くした若い娘が、 有名なオークショニアに名指しで遺産処分の依頼電話をかけてくる。 屋敷に出向いたオークショニア ヴァージルは、 依頼人が姿を現さないことに憤慨するが、 同時に好奇心も湧いてくる。 肖像画の美女の扱いは上手いが、 リアルの女性を拒絶してきたヴァージニア、 しかしなぜか若い女たらしの知り合いがいて、 この男にアドバイスを受けながら少しづつ引きこもりの依頼人に接近していく。 やがて彼女の閉ざされた心を開き、 愛にまで変えたヴァージニアであったが、 そこには思いもよらない嘘があった。

その傍らで機会じかけのオートマトンが組み立てられ、 またヴァージニアが一生かけて集めたプライベートコレクションが披露される。

なかなか面白かったのだが、 最後にきてこのオークショニアの呆然とした顔がシリアスすぎて、 もっと笑い飛ばした部分がわずかでもいいからあると、 トーンが崩れちゃうのか、 あるいは弾けたか。 別の味わいの終わり方があってもいい気がしたが、 冬の寒空にふと人生をふりかえってしまいそうなムードになったら、 映画館に飛び込んでみるのも悪くない。 乞うご期待。


鑑定士と顔のない依頼人 The Best Offer (2013イタリア) 日本公開12/13
脚本・監督 ジュゼッペ・トルナトーレ 公式サイト・予告 象のロケット 
音楽 エンニオ・モリコーネ 
ジェフリー・ラッシュ シルヴィア・フークス ジム・スタージェス 
ドナルド・サザーランド