11.29.2009

普通。 「2012」



見てしまった^ ^ それほどお祭り感もなく 「イングロリアス・バスターズ」 の方が盛り上がってる気がするが、 いまどき終末思想に酔いしれるほどヒマではないというのが正直なところだろう^ ^

マヤの予言が現実となり、 ニュートリノの異常により地球が地殻変動を起こす。 選ばれた人間と金持ちだけがノアの箱舟で新世界へ脱出。 そこへ箱舟のチケットも持たない庶民代表のキューザック・ファミリーが裏口乗船を図る、 みたいなストーリーで、 終末感は思ったほど強くなく、 パニック映画、 いやむしろアクション映画と言えるかもしれない。 庶民が生き残るためには、 運とドライビングテク、 それに神業的 飛行機操縦技術が必要になるのだ^ ^

それなりに手に汗握ったが、 明日には忘れてるだろう。 ディザスターで儲けるのだったら、 バカ高い箱船チケットを売るより、 コンパクトな5人乗り程度の救命カプセルなどを作ってリーズナブルな値段で大量に売るほうがいいのではないだろうか。 津波の衝撃に耐え、 1ヶ月ほど浮遊して生き延びればいいのだから、 デカい箱船を数隻建造するという発想はスパコンと同じで もはやリアリティがない。

しかもその箱船カプセルを人々はローンで買い、 大変動のあとにはクレジット会社もなくなっているから実質 踏み倒しだったりすると面白い。 1ヶ月分の食料として宇宙食のようなのが各社から発売されたり、 サバイバル中の退屈をしのぐための商品が出回る。 と言っても衝撃に強いDVDプレーヤー程度のもので、 人々はカプセルの中で 「インディペンデンス・デイ」 を見たりしている、 などという展開でも・・ え、 それでは製作費が下りない? 失礼しました〜


2012 (2009) 11/21〜 公式サイト&予告 
監督 ローランド・エメリッヒ 
ジョン・キューザック キウェテル・イジョフォー アマンダ・ピート 
オリヴァー・プラット タンディ・ニュートン ウディ・ハレルソン 

11.27.2009

バラを星だと思い・・ 「ベルサイユの子」



ホームレスが子育て・・ ということで公開時はショッキングな、 あるいはタイムリーな映画としてそれなりに興味をそそられたが、 いざ見てみると どうってことない映画だな。 そのあたりがまさに、 良くも悪くも今のフランス映画だ。 思わせぶりなセリフやムードに反して いかにもな展開、 行き当たりばったりで作ってるようなストーリー、 35mm一眼レフで言えば80mmレンズくらいの画角・・ その狭い視野の中で展開される、 イヤイヤ覗き見させられているような感覚。 独りよがり、 観客不在、 あるいは心の広い観客にスポイルされた製作陣・・

字幕も下手だな。 そのフランス映画の唐突な感じを さらに強調するかのような 'こなれない' 言い回しで "欲しいか" だの "すすいでやる" だのが乱発される。 原文がそのような構文であっても日本語では "するか" で十分だし、 シャンプーは 'すすぐ' のではなく '流す' のだ。

結局は子役の可愛さが売りの映画で、 雰囲気だけシリアスぶっても本当のシリアスさはゴソッと抜け落ちている。 "人を呼んでこい" と子供を助けを呼びに走らせて、 次のシーンは病院で医者に "世話になった" と言う。 フランスでは健康保険の心配もなければ、 申請さえすれば子供を養育する親というだけで生活保護が受けられるらしい。

そもそも彼らがどうしてベルサイユの森で暮らすことになったかなどの経緯はまったく出て来ず、 時が経てば何となく問題は解決できたような気になって終わり。 だったら最初から悩むなよ。 唯一 面白いなと思えたのが、 森の仲間の葬式で読まれた詩。

 北を目指し南へ行った
 小麦を水だと思った
 彼は間違えた

 海を空だと思い
 夜を昼だと思った
 彼は間違えた

 バラを星だと思い
 雪を春だと思った
 彼は間違えた

かつてヌーベルバーグを生み出した国に、 今は文化的なオリジナリティもモチベーションも見出すことはできない。 変われば変わるものだ。 レオス・カラックスが言ってた "目覚めよ パリ"、 だが まだ目覚めてはいないどころか、 ますます深い眠りに落ちてゆくかのようだ。

ベルサイユの子 VERSAILLES (2008フランス) 日本公開2009 
監督 ビエール・ショレール  公式サイト 
ギョーム・ドパルデュー マックス・ベセット・ド・マルグレーヴ ジュディット・シュムラ 
ベルサイユの子 [DVD][DVD]

 扉をたたく人 [DVD] 夏時間の庭 [DVD] 路上のソリスト [DVD] ミルク [DVD] 愛を読むひと (完全無修正版) 〔初回限定:美麗スリーブケース付〕 [DVD]

 powered by G-Tools

11.26.2009

冷たい8月 「ライフ・ドア 黄昏のウォール街」



未公開、 だがこの邦題ではDVDになっても見落とされるだろう。 一昔前の いわゆるドットコム企業の盛衰を扱った作品で、 映画で扱うには難しいテーマなのか、 これだけドットコム企業、 あるいはWEB2.0企業数あれど、 この手の作品は意外と少ない。 デビッド・フィンチャーがfacebookを題材にした映画を製作中とのことでそれも楽しみだが、 この作品も悪くない。

しっかし邦題を作った人たちは、 よっぽど知らないのだろう。 日本ではウェブ企業というとライブド・・ということでこういうタイトルが発想されるのだろうが、 日本企業でもTechCrunchで大プレゼンをやったトンチドットなんかもあるのだ。 ベンチャー感覚が日本人に馴染み薄だとしても、 さすがに 'ウォール街' は外れすぎだろう。 株価の問題が出たからと言って証券会社の話ではないし "黄昏のシリコンバレー" ならまだしも、 これはあまりにお粗末なタイトルだ。 聞いてるか、 発売元?

原題は "8月(August)"。 映画に登場するベンチャー企業ランドシャークが、 ロックアップをあと数週間で抜けるという辛い時期のこと。 8月は自分の誕生月でもあるが、 真夏ながら どこか裏寂しい季節感は悪くないタイトリングだ。 ロックアップというのは上場したての企業がまだ株を売買できない期間のことで、 市場ではすでに過大評価されて株価が吊り上がっていたとしても資金繰りはショートする可能性をはらんでいる。 ジョシュ・ハーネット演じるランドシャークのCEOはテレビのインタビューで、 市場を牽引していることについて "我々こそが市場だ" と豪語する。 クールな表情、 向かうところ敵なしの態度はカッコイイのだが、 現実は甘くはなかった。

わずか数ヶ月前に弟とともに立ち上げたウェブ企業だが、 またたく間に急成長し、 雑誌の表紙になるなど一躍 時の人。 弟は技術系っぽいが、 兄はハッタリで各所から金を引き出すのが得意。 だが8月、 出資先の倒産とともに資金繰りは悪化、 そこへ とある企業が救いの手を差し伸べてくるのだが・・

ネタバレしない程度に結論を言ってしまうと、 アメリカと言えど財界はハーバード出身者が牛耳る世界で、 腕一本、 ハッタリ一丁で のし上がってきた者には冷たい。 財界のフィクサー役で いきなりデビッド・ボウイが登場するのだが、 有無を言わさぬ権力の行使と新参者への嫌悪はなかなか見ごたえがあった。

"この間 会社を見てきたが、 オレオを食べながらIKEAのデスクに座っているだけで大金が転がり込むのか" という父の皮肉に対し "父さんが作れなかった世界を俺たちは作ってるんだ" と返す兄。 だがやがてビジネスモデルは机上の空論であり、 自分たちはしょせん大手企業の '噛ませ犬' に過ぎないことを悟る。

こんな状況をかいくぐってGoogleもfacebookも今があるのかもしれない。 映画では現実の壁だけが冷酷に描かれていて、 起業家たちには何の励みにもならないかもしれないが、 邦題から想像するよりはるかに価値のある作品とだけは言えるので、 機会あればぜひレンタルされたし。



ライフ・ドア 黄昏のウォール街 AUGUST (2008) 日本未公開
監督 オースティン・チック 
ジョシュ・ハーネット ナオミ・ハリス デビッド・ボウイ 
ライフ・ドア 黄昏のウォール街 [DVD][DVD]

プライド&グローリー [DVD] ワイルド・ライズ [DVD] 3時10分、決断のとき [DVD] ザッツ★マジックアワー ダメ男ハワードのステキな人生 [DVD] 幸せのセラピー [DVD]

powered by G-Tools

11.23.2009

白い水着が透けた頃・・ 「色即ぜねれいしょん」



アイデン&ティティ」 以来のじゅん&トモロヲ ゴールデンコンビによる珠玉の "青春ノイローゼ"。 夏の終わりに見たかったが、 冬の始まりとなった。 DVDは1月リリース予定。

隠岐島って小さい頃に一度だけ行ったことがあって "牛突き" と呼ばれる闘犬の牛版みたいなのを見た。 ほとんど記憶にはないが、 そのとき初めて飛行機に乗った。 小さいセスナだったのだが。 映画では船で渡るのだが、 隠岐島が関東エリアでいうところの '新島' だったなんて初めて知った。 MJ氏が高校生の頃にはまだヒッピーがユースホステルやロック喫茶をやったりしていたんだなあ。 氏の世代くらいまでが全共闘世代なのかもしれない。

ギターで曲を作る文科系男子と体育会系ヤンキーの文化祭バトルもよかった。 あくまで文化系であって草食系ではないところがポイントだろう。 黒猫チェルシーの渡辺大知は歌い出すと初期の町田町蔵みたいだ。 自分にも中学の頃だが、 音楽の時間、 歌のテストを無言で通すナイーブなヤンキーに共感したことがある。 ヘンなことを思い出す映画だ。

銀杏BOYZ、 くるりからのキャスティングも味わい深い。 オリーブ役の臼田あさ美もいい。 本当にその時代の奔放な女性に思えた。 そう、 昔の白い水着は透けたのだ。 白い水着が透けなくなったのが、 まさに今という時代を象徴するかのようだ^ ^

堀ちえみのオカンも、 何とも言えない感じだった。 "不良にもなれない中流のコンプレックス" がテーマということだが '一億総中流' なんてフレーズもあったわけだから、 今となってはヘンな悩みだよな。 実体験をベースにある種 緻密に作られているわけだが、 たんに昔を懐かしむというより、 ブレークしたいという願望は何十年経っても時代が変わっても相変わらずこの胸にあって、 青春ノイローゼは、 あのときステージに上がっての第一声への意気込みを取り戻させてくれるかのようだ。 そう言えば 'ノイローゼ' なんて言葉も使わなくなったな。 。


色即ぜねれいしょん (2009日本) 公式サイト 
原作 みうらじゅん 監督 田口トモロヲ 
渡辺大知 峯田和伸 岸田繁 堀ちえみ リリー・フランキー 
臼田あさ美 石橋杏奈 森岡龍 森田直幸 古川雄弥 
色即ぜねれいしょん [DVD][DVD]

 ディア・ドクター [DVD] 扉をたたく人 [DVD] 映画 ハゲタカ(2枚組) [DVD] レスラー スペシャル・エディション [DVD] ウルヴァリン:X-MEN ZERO <2枚組特別編>〔初回生産限定〕  [DVD]

 powered by G-Tools

硬いワッフル.. 「ロフト.」



本国ベルギーで大ヒット・・らしいが、 つまらなかった^ ^ ようするに密室劇の犯人捜しで、 何重にも嘘が張りめぐらされている。 だが誰が犯人かなんて関心はそもそも起こらないし、 自ら作ったパズルを自ら解く過程を娯楽と称して見せられているだけ。

オープニングは屋上からドサッと落ちてくる人、 これでツカミはOKのつもりか。 そして中年の男数人が共有するロフトで、 女が殺される。 事件の前後のさまざまシーンが入るので、 密室劇とは言えないかもしれない。 警察での取り調べや事件の成り行きが交互に進行するが、 どれも表面的で入っていけない。

インテリアや建物など建築的な美術は得意なのか、 ドイツ語の響きとあいまって硬質な美しさを狙っているようだが とくに新鮮味もない。 数々の美人が登場し・・みたいな解説を見た気がするが、 ベルギー美人は自分の美的基準とは違うようだ。

衣装もパリコレなどで活躍するベルギー派な雰囲気だが、 ダルデンヌ兄弟を輩出してもベルギーのメジャームービーはこの程度なんだということだけがわかった。

ロフト. LOFT (2008ベルギー) 11/20〜 公式サイト&予告 
監督 エリク・ヴァン・ローイ 
ケーン・デ・ボーウ フィリップ・ペータース ブルーノ・ヴァンデン・ブルーク 

11.22.2009

廃虚の遊園地 「ゾンビランド」



アメリカでけっこうウケてるようなので見てみた。 いわゆるゾンビものの終末感に 「リトル・ミス・サンシャイン」 的な家族再生の物語を取り込んで 「ゴーストバスターズ」 へのオマージュをちょっぴり振りかけた、 みたいなニッチか。 そこそこのスプラッター度を有しているが、 基本はコメディ。 観に来た以上はポップコーンをほおばりながらガハハと大笑いして元取ってやる、 みたいなノリで選ばれる映画か。

進化した狂牛病からアメリカはゾンビの国となり、 生き残ったわずかな人たちは自分なりの教訓を持って孤独なサバイバルを続けるが、 ふと他の人間に出会ったりすると喜ぶ前に構えてしまう。 しかしながら ともに旅をすることになった4人、 LAの遊園地にはゾンビはいないという12才の少女の希望を聞き入れてそこへ向かう。 途中、 荒廃したビバリーヒルズで立ち寄ったセレブの家はB.M邸だった。

プライベート・シアターで 「ゴーストバスターズ」 を観て、 サバイバルにともなうストレス解消にと物を壊しまくる彼ら。 たどりついた遊園地には人っ子一人いなくて、 安心したように次々と乗り物に電源を入れるのだが。

テーマ曲はメタリカだが、 本編中には他作へのオマージュとおぼしき曲もいくつか交え、 ロードムービーの気分もそこそこ味わえる。 ここには確かに、 現在のアメリカを映した何かがあるような気がする。 "ウォルマートの人々" というサイトがあって、 スーパー ウォルマートに来るさまざまな人たちをスナップして投稿するだけのコンテンツなのだが、 眺めてると妙にこの映画とシンクロするものを感じる。 ゾンビランドとは、 まさにアメリカのことかもしれない。




ゾンビランド ZOMBIELAND (2009) 日本公開2010.7/24 公式サイト 
監督 ルーベン・フライシャー  象のロケット 
ウディ・ハレルソン ジェシー・アイゼンバーグ アビゲイル・ブレスリン 
エマ・ストーン アンバー・ハード ビル・マーレイ 
ゾンビランド [DVD][DVD]

ぼくのエリ 200歳の少女 [DVD] マチェーテ [DVD] キック・アス DVD ビッチ・スラップ [DVD] 悪魔の墓場 -HDリマスター版- [DVD]

powered by G-Tools