1.25.2012

母さん、僕だよ THE SKIN I LIVE IN



大御所になってもヘンな映画を作るアルモドバルには敬意を表したいが、 これはどうなんだろ。 自分的にはそれなりに面白かったが、 ポスターやスチールのビジュアルの通り、 ヘンな話。 ストーリーに触れるとかなりネタバレしてしまいそうだが触れないとわからないので、 片目で読んでほしい^ ^

優秀な整形外科医がいて、 遺伝子組み換えの技術も独自研究している。 彼は妻を亡くし、 娘まで亡くす。 娘はレイプされたものと思って、 相手の男を誘拐、 性転換手術によって女に変えてしまう。 ついでに亡き妻の肌と顔にしてしまう。 女にされた男は、 そのケはなかったのでけっして嬉しくはなく^ ^ 形成された膣の痛みに耐えながら外科医に愛されるがやがて・・。

思いっきり安モンのサスペンス劇場みたいな話だし、 遺伝子組み換えなどの技術的側面も曖昧で、 何を描きたかったのかもイマイチよくわからない。 ただ自分が望まないものになってしまった者の悲しみみたいなものだけは少しわかる気もする。 近年の流行であるヴァンパイアの向こうを張った現代版フランケンシュタインなのかもしれない。 過大な期待を持たなければ楽しめる小品と言える。

この邦題が最終決定なのかどうかは現時点でわからず。 忠実に訳してはいるのだろうけど "これが私の生きる道" みたいだな、 読点も機能不全だし。 皮膚にまつわるこだわりは実際それほどあるようにも思えなかったし "セカンド・スキン" とか "アナザー・スキン" くらいのヘボ邦題のほうがむしろふさわしい作品と言えるかもしれない。 いやむしろ、 もっと意訳して? "全身タイツを着せられて" がいいかも。乞うご期待。



私が、 生きる肌 THE SKIN I LIVE IN (2011スペイン) 日本公開2012.5/26予定 
監督 ペドロ・アルモドバル 
エレナ・アナヤ アントニオ・バンデラス ヤン・コルネット ブランカ・スアレス 

siriとevi



(いつも以上に) ヘンテコなタイトルながら、 これ両方とも音声認識/秘書アプリの名前。 siriはご存知、 iPhone4S専用で他の機種にはジェイルブレイクしないと入らず。 一度この音声秘書というものを試してみたいと思っていたところ、 eviというものが登場。 85円でiOS版とandroid版があるのですが、 さっそくダウンロードしてみたらけっこう面白い。

現状、 英語だけですが、 自分のブロークンイングリッシュが通じるかとか、 アホなことも聞いてみたりして遊べます。 (遊び用ではないはずですが・・)

この eviちゃん、 TechCrunchなどでも性能はそこそこ優秀と言われておりますが、 まだどこにも書かれてないポイントとして、 開発元がイギリスということもあってバリバリのクイーンズイングリッシュで答えてくれる^ ^ YouTubeとかで見る限る siriはアメリカンなアクセントだったので、 隠れた対比となりそう。 この際この不気味なアイコンとともに、 イギリス英語に親しんでみようか。 。

1.20.2012

公開なんてしないわ LIFE 2.0



この映画、 かなり前に噂を聞いて注目していた。 ところが日本公開の情報もないどころか、 サンダンス映画祭に登場したっきりアメリカでもDVDスルーされた?もよう。 取り上げられるのは仮想世界 "セカンドライフ"。 一時期は広告媒体としても持てはやされたセカンドライフだが、 現在は盛り下がってるということかもしれない。 しかし勝手に持てはやしたり盛り下げたりするのも世間のほうであって、その世界の住人にとっては どうでもいい話だろう。

自分はその世界の住人ではないが、 見たい度の高い作品だった。 "セカンドライフで作られた" みたいに聞いていたのに そういうプロジェクトではなく、 何人かのセカンドライフにハマった人たちを追った純然たるドキュメンタリー作品だ。 登場するのは・・

セカンドライフで恋に落ち、 リアルライフではともに所帯持ちであったのに、 それを捨てて恋を現実化しようとする二人。 なんとなく始めたセカンドライフで、 欲しいファッションアイテムがあったがお金がなかったので自分で作り、 今ではこのバーチャル世界にブランドを持って6桁を稼ぐという人。 リアルライフではフィアンセもいる男、 何を思ったか 少女のアバターを精密に作成、 チェックのスカートにネコ耳姿で空を飛ぶ・・ そんな人たちが出てくる。

後半ではその顛末が描かれる。 恋の相手はアバターとのギャップもなく、 運命の人に思えたのに、 それすら仮の姿だったり。 システムのフリーズは収入に直結し、 さらには著作権問題を現実の法廷で争う。 現実の生活も健康もそっちのけで没頭する男に愛想をつかすフィアンセ、 切りをつけようと男のアバターである少女は銃を乱射し、 サテライトボムで自殺を図る。

恐らく、 その世界の住人には大して面白くもない話だろう。 しかしテクノロジーによって創出された第二の人生に本当の自分を見出し、 どこへ行き着くかもわからない世界と真剣に向き合う彼、 彼女らには何らかの感銘を覚える。 それはすでに人生の一部なのだ。

運営会社であるリンデンラボのCEOは語る。 ネット社会の危険性ばかりが取りざたされるが、 現実が危険に満ちているというのに、 それに寄り添うようにしてある仮想世界がある程度危険なのはしかたない。 少なくともフィジカルな危険はないよ。 (概略)

バーチャルベッドシーンあり、 ラスベガスでのOFF会と友情あり、 最初は顔出しNGだったのが いつのまにか出てる、 あり。 バーチャル世界の売れっ子デザイナーは、嫌煙ムードに覆われる現実世界に反旗を翻すような堂々のヘビースモーカーであり・・ 話が進むにつれ、 現実の彼らの姿がアバターに見えてきたり。 見終わると、 この自分の身体も、 別の自分のアバターではないかと思えたり。 。




LIFE 2.0 (2010) 日本公開未定 ドキュメンタリー
監督 ジェイソン・スピンガーン=コフ 

1.03.2012

おちゃめ系サラ・パクストン.. 「インキーパーズ」



新年三日目ともなればダラけて、 つい ホラーに走る^ ^ でも "HOSTEL III" も先日見ちゃったし、 いまコレといったものがない。 そんななか、 見繕ってきましたこの作品。 はたして、 どうか。

うちのブログではホラーとスプラッターをいっしょくたにタグ付けしちゃってますが、 大きく分けても心霊ものと殺戮ものでは違うし、 そのそれぞれにも細分化された さまざまなテイストがありうるので^ ^ もうめんどくさいから、 いっしょにしちゃえと。 この "The Innkeepers" はホテルや宿の経営者あるいは管理人という意味で、 古き良き心霊もののようで、 新春にはふさわしいかとチョイス。

もうすぐ取り壊しになるという古いホテル。 それほど高級でもなく、 また それが原因で取り壊しになるというわけでもないが、 幽霊が出るとの噂のあるホテル。 ここで働くフロントマン、 フロントガールの二人がいて、 客もほとんどいないガラガラの空間で気だるそうに過ごしている。 つまらないイタズラを仕掛けあったり、 また霊現象を捉えようとEVPなどを持ち出してきたり。

フロントマンが、 ちょっとこの映像見てくれよと、 フロントガールを呼ぶ。 え、 ついに何か映った? と画面に見入る彼女。 しかし用意されていたのはこんな映像で、 これまたイタズラだった。

そんなある日、 フロントに老紳士が一人で現れ、 353号室を指定して一晩だけ泊まりたいと言う。 その部屋は準備中だと言っても聞かず、 フロントマンはしかたなく了承する。 クレジットカードを、 と言うと、 現金で と答え、 クシャクシャになった札を握りしめて差し出す。 部屋に案内すると懐かしそうに眺めて、 なんでもハネムーンで泊まった部屋だと言う。

このへんまでは、 なかなかいい感じ。 総じて効果音で脅かすような部分はあるが、 それもまあよしと。 しかし その後崩れ出し、 もう一人の宿泊客である、 元女優で霊能力者のようなオバサンもあまり有効に関連せず。 ササッと結末を迎え、 あっさり THE ENDしてしまう。 ある程度 予想はしていたものの、 残念な福袋だった。 。



インキーパーズ The Innkeepers (2011) 日本未公開 
脚本・監督 タイ・ウェスト 
サラ・パクストン パット・ヒーリー ケリー・マクギリス 

1.02.2012

水平線の彼方には 「島の女」



普段は (好んで) 新作に追われる毎日だが、 正月くらいは名作選を、 ということで、 最近DVD化されたらしいこの作品を。 ソフィア・ローレン初のアメリカ映画主演作だそうで、 撮影時は21か22才、 目映いばかりのナイスバディで見応えがある^ ^

共演は "シェーン、 カムバック" のアラン・ラッドで、 舞台はギリシャのイドラ島。 一度は行ってみたい青い海、 青い空、 白い壁のあの国だが、 当時から経済的には貧しかったようで、 海女として海綿を採って暮らす女とアメリカから来た考古学者が出会うという設定。 そこへ財宝を略奪して売り飛ばそうとする輩が絡んで、 一度はカネに目がくらんだフェドラが、 最後にはプライドとお宝を取り戻すという話。

宝は原題の "イルカに乗った少年" の像であり、 この頃から邦題は脚色しすぎていたようだが、 島の女フェドラの美しさ、 歌、 踊りは天然の美として時間を超えたエロスに満ちている。

アメリカには文化を尊ぶ者と略奪する者の二者があり、 イギリス人の医者が助け、 お宝の話をフランスに持って行くと 'つねられ'、 イタリアに持って行くと 'もうたくさん' と言われた、 というエピソードが出てくる。 わかったような、 わかんないようなだが、 基本的に大娯楽作品、 しかしながら適切な奥行きとバランスに支えられた古き良き一本の映画。 どうせならデジタル・リマスタリングなどで出してほしかったところだが、 公開時をリアルタイムで知っている人はもちろん、 まだ生まれてなかった人にもコレクターズアイテムではないだろうか。



島の女 BOY ON A DOLPHIN (1957)
監督 ジーン・ネグレスコ  象のロケット 
ソフィア・ローレン アラン・ラッド 

1.01.2012

It's a crazy fuckin' world... 「アニマル・キングダム」



新年早々ヘビーなものから入ってしまった。 イヤな年になりそうだ^ ^ タランティーノも絶賛との触れ込みの本作、 公開は今月21日からだが、 さわりを聞いたらすぐに見たくなって、 プチ先行上映。 ところが思いっきりコックニーなまり?のオージーイングリッシュで、 100%理解できた自信はないが乱暴に書きなぐってみよう。 。

タランティーノが好みそうな、 イヤらしい雰囲気たっぷりの上の写真を、 本編は多少地味にしたような感じではあるが、 何と言っても中央に鎮座するママが不気味。 このママは少年にとっては祖母だが、 その娘である少年の母親がヘロインのオーバードーズで死んでいるシーンから始まる。 脇には18才の息子が呆然とたたずみ、 テレビからは雑多な音声が流れている。

少年がコンタクトを取ったのは、 長年 音信の断たれていた祖母。 亡き母がなぜ この祖母や兄弟と音信を絶っていたかは やがてわかるが、 彼には他に頼るべき身寄りがなかった。 入れ墨の男たちが出入りするこの新しい家庭で、 警察に目をつけられていた仲間の一人が撃たれる。 銃不携帯にもかかわらず誤認にカコつけた射殺だった。 上の叔父がこれを腹に収めきれず、 警官を罠にかけての復讐。 さらに少年のガールフレンドがまたヘロインによって死ぬ・・

やがて警察は少年を証人にする作戦を遂行、 誰がこの動物園のボスかをよく考えろ、 もはや あの家族にお前を守る力はないと少年を説得する。 しかしこの事態を傍観する祖母ではない。 裏の手を画策、 裁判での少年の証言は・・ そしてさらに・・

みなまで言うわけにはいかないが、 それでも最後に一抹の爽やかな印象が残るのは、 老獪な者たちがひしめくこの動物園で、 自分は若くて弱い存在だという思い込みを、 自分自身が否定するということだろう。 悪知恵も法律も自分を守ってはくれない。 未熟だが若い、 その悲しみと希望だけがこの世界を切り裂けるのだと。 乞うご期待!


アニマル・キングダム (2010オーストラリア) 日本公開2012.1/21
ANIMAL KINGDOM  公式サイト・予告 象のロケット 
脚本・監督 デビッド・ミショッド 
ジェームズ・フレッシュヴィル ベン・メンデルソーン ジョエル・エドガートン 
ルーク・フォード ガイ・ピアース ジャッキー・ウィーヴァー