4.30.2010

当惑顔のデーモン 「グリーン・ゾーン」



GWはいかがお過ごしでしょうか。 自分は近場に出かける程度なので、 気分は早くも休日明けに公開されるこの作品へ。 ボーン・シリーズのグーングラス監督による 「グリーン・ゾーン」。 イラク戦争におけるアメリカ政府高官の陰謀を暴くサスペンス・アクションで、 大量殺戮兵器がみつからないという周知の話ながら、 これを兵士の立場から描いたという点がポイントか、 あるいは事実を知り、 イラクから罵倒されながら返す言葉のないデイモンの当惑の表情が見どころか。

面白いし迫力あるし娯楽映画としては何の文句もないが、 今頃こんな映画作られたって すべては後の祭り的な空しさが漂う。 戦争を起こして、 それを映画という商売にして完了、 みたいな。 政府の陰謀を告発するような立場を取っても、 当惑顔のデーモンと同じこと。 中途半端に事実を重ねるより、 どうせなら徹底したフィクションでアクションのほうがよかったんじゃないの。


グリーン・ゾーン Green Zone (2010) 日本公開5/14 公式サイト・予告 
監督 ポール・グリーングラス  象のロケット 
マット・デイモン グレッグ・キニア ブレンダン・グリーソン 
エイミー・ライアン ハリド・アブダラ イガル・ノール 

4.29.2010

こんな時のためにね・・ 「弁当夫婦」



俳優やミュージシャンに撮らせた6編のオムニバスということで、 正直興味がなかった。 ざっと流しても これといったオーラは感じないし、 ここのところ時間もないので やめとこうかと。 だが allcinemaのレビュー欄に "弁当夫婦だけは見ろ" という書き込みを発見。 ユースケ・サンタマリアが監督した作品だが、 何かの出演作で興醒めして以来あまり好きじゃないので迷ったものの、 まあ実質20分ほどだしと、 書き込みに従ってみた^ ^ 結果、 概ね楽しい20分だった。 以下ネタバレ注意・・

朝、 マンションのキッチンで淡々と料理する女。 え、 これが永作博美?と疑うほどのフル・すっぴん! 度胸あるよな、 ヌードより恥ずかしいかも。 ほどなくサンタマリア演じる夫が起きてくるが、 ぶっきらぼうな感じ。 冷めた夫婦なんだな、 と。 それから永作はスーツを着て、 タバコを吹かしてから出勤するが、 出かけに言う。 "のちほど〜" と。

妻は画廊勤めで280万の絵を売ったりしている。 夫は近くにミニバンを停めてコーヒースタンドを営んでいる。

昼、 近隣の公園のベンチで永作が弁当を広げているとサンタマリアもやって来る。 朝作ってきた弁当、 だが大した会話もなく黙々とランチタイム終了。 ふたたび "のちほど〜" と言って妻は勤務に戻る。

夜、 夫はそそくさと風呂に入って寝る。

そんなある日、 コーヒースタンドの主人に異変あり。 画廊のオフィスからはコーヒースタンドが見えるが、 親しく話す女がいる。 その日のランチタイムに夫は言う。 "今日は夕食 いらないから" と。 コーヒースタンドに残業はあるのだろうか。

翌朝、 帰りが遅かった様子の夫に "のちほど〜" と言って出かける妻。 自転車通勤の彼女の疾走を併走して追うカメラ。 さりげなく心象表現を見せた後、 お昼でもないのにスタンドに顔を出す永作。 "話、 しようよ" と・・

そして、 ここが見せ場で落ちなのだが、 あとは見てのお楽しみ^ ^ ギリギリ ネタバレを回避したかな。 正直、 まあ欺された感じ。 しかし上手いエピソードではある。 短編というのは忙しい時代にはいいかもね。 しかしこのDVD、 不思議だな。 6編全部が収録されたものとバラ売りとがあり、 値段は大差ない。 特典が違うんだろうけど、 どっちで見てもいいから 「弁当夫婦」 だけはお見逃しなく^ ^ エントリータイトルはラスト間際の永作のセリフより。 あ、 今日もいちおう ラブストーリーではあったね^ ^

R246 STORY 弁当夫婦 (2008日本) 25分短編 公式サイト 
脚本・監督・出演 ユースケ・サンタマリア 
永作博美 
R246 STORY ユースケ・サンタマリア 監督作品 「弁当夫婦」 [DVD][DVD]

その日のまえに 【初回限定生産2枚組】 [DVD]R246 STORY 浅野忠信 監督作品 「224466」 [DVD]R246 STORY 須藤元気 監督作品 「ありふれた帰省」 [DVD]同窓会 デラックス版 [DVD]鈍獣 プレミアム・エディション [DVD]

powered by G-Tools

4.27.2010

帰りたくない 「21番目のベッド」



どこかへ出かけて、 それが遠くでも近場でも、 ハッピーでも そうでなくても、 そろそろ帰らなきゃというときが迫ると・・ ダルくなるんだよね。 若い頃はとくにそうだった。 最近は律してるけど、 それでもときどき、 子連れで出かけていても思う。 帰りたくないな・・ と。 地球の一日は短かすぎる。 24時間の枠組みの中に押し込めると、 すべてがチマチマしてくる。 きっと、 もっと大きな惑星から来たんだろうな、 遠い昔に・・

なんてセンチメンタルな書き出しで始めてしまったが、 突然のラブストーリー企画 本日は第三弾、 そしてたぶん最終日^ ^アルゼンチン出身の監督によるイギリス映画は、 昨日おとといとは打って変わって、 未成熟でストレートな物語が交錯する青春ラブストーリーだ。 帰りたくない・・ これを女の子に言われると甘酸っぱいセリフとなるが、 あくまでも I Love You とは違う。 だからラブストーリーと言うよりは、 旅立ちの物語かもしれない。

青年は父を捜しにロンドンにやってきた。 ライブハウスで知り合った人の家になんかに点々と寝泊まりし、 寝たベッドやソファの数は青年の歳と同じ20。 そして21番目のマットレスは、 これから出会う予定の彼女が捨てたもの。 青年はイギリスの高校の制服を拾い これを気に入って着ているが、 これも彼女が捨てたもの。

制服とは言ってもエンジにベージュのストライプが入ったカッコイイもので、 一時期のヨージヤマモトな感じのジャケット。 しかし青年には着慣れないテイラードだから、 会う人にはいつも "ビジネスマンみたいかな?" と聞く。 自分も遠い昔の、 初めてテイラードのジャケットに袖を通したときの感覚を思い出す。

そして出会うべき彼女は、 空を見上げて "仕事はスチュワーデス" と嘘をつき、 名前も告げず交わされる一夜限りの恋に寄り道し、 思い出は次から次へと捨てていく。 青年も酒に弱く、 夜の出来事は翌朝 完全に忘れている。 そんな慢性記憶喪失の若き二人が出会うのはラスト21分。 さらには、 これはどう見ても 'ボーイミーツガール' の物語だと思っていたのに、 結局二人はその出会いすら忘れ、 捨て去ってしまう。

青年を見守るライブハウスの店長といっしょに、 朝はいつもコーンフレークを食べながらスカイダイビングのビデオを見ることとなる。 彼は一度失敗したダイビングに再挑戦するつもり。 青年が探し当てた父は不動産会社勤務の普通のビジネスマンで、 小さな娘がいた。 そして思い出を捨ててきたはずの彼女は、 ステージで歌う自称 "X線技師" 男と再会する。 その曲のリズムはなぜか水戸黄門。 。

ときどき二人のネイティブ言語であるポルトガル語やフランス語が混じり、 今のロンドン事情も垣間見れると同時に、 ひらめきのあるカメラワーク、 編集、 音楽・・ 映画に若さを取り戻すかのようなフレッシュさに満ちている。 エポックメイキングな何かは見当たらないが、 倦怠でも暴力でもない新世代の若さがここにはある。 そのくせ、 かつて青年だったオジサンにも共感できる。 ナイーブすぎるこんな感性が、 いま現在 主人公と同年代の人には、 実際のところ どのように映るのだろうか。 映画はこれからも若者に支持されるのだろうか。




21番目のベッド Unmade Beds (2009イギリス) 日本未公開 
監督 アレクシス・ドス・サントス 
フェルナンド・ティエルブ デボラ・フランソワ ミヒル・ホイスマン 
イド・ゴールドバーグ リチャード・リンターン 
21番目のベッド [DVD][DVD]

命を燃やして [DVD] 灼熱の肌 [DVD] 獲物の分け前 HDニューマスター版 [DVD] あの日、欲望の大地で [DVD] 夜のバッファロー [DVD]

powered by G-Tools

4.25.2010

咲き乱れ 咲き誇れよ 「天使の恋」



ラブストーリー第二弾・・ 突如そんなモードになっているなか、 本日はコレ。 携帯小説が原作ということで、 まあ その手のだろうとは思ったが 「Dear Friends」(2007) をその年のベストテンに入れていたことがある俺だし、 佐々木希も注目だし、 微妙に期待もしてたけど、 始まったら '難病もの' だとわかり、 ああ またか、 と。 。 にもかかわらず見入ってしまっただけでなく、 何か所かは熱く込み上げるし、 まったくもって あなどれない作品なのだ^ ^

難病ものではあるが、 死が誰にもいつかは訪れることの延長としてのリアリティがあり、 それ以前に監督は大まじめに純然たるラブストーリーをやろうとしているふしがある。 だから 'あざとい' だけの難病ものとはちょっと違って、 大目に見れる。 谷原章介の希望のない顔も上手い。

で佐々木希はというと、 可愛い、 きれい、 少々エロいのはもちろんのこと、 なかなか堂々とした演技っぷりで、 セリフの発声もキレイだし、 今後いい作品に出会ったら大化けするかもしれないという可能性を感じる。 前半のハイスクール援交セレブぶりと後半の恋する普通の乙女ぶりも過不足なくコントラストがついているし、 彼女のプロモーション作品としても成功していることは間違いない。

以前に駅のホームで目撃し、 いまだに忘れられない現実の1コマがある。 女子高生二人連れ、 一人は電車に乗り、 もう一人は方向が違うのか乗らず、 そのままドアは閉まる。 車内の女の子はドア越しに手を振り 「愛してるよっ」 と言う。 もう一人の女の子も照れずに手を振っている。 電車は走り出す・・

俺に、 冗談でいいから これをやってくれと言われてもできないだろう^ ^ でも彼女たちには できてしまう。 自然に、 普通に。 愛しているという言葉は外国語の翻訳で、 日本人には似合わないと思っていた。 でもバッチリ似合ってるじゃないか。 しかも相手は同性の友達。 この瞬間から俺はギャル様好きなのだが、 佐々木希が演じた理央というギャルも、 こうしたピュアさが正確に封じ込められていて 悪くないなあ。

彼女が恋したのは、 デートに戦国時代の合戦の跡地を案内するような野暮な男だが、 カッコつけた男を見慣れている彼女には逆に新鮮だったのだろうか、 好き!と言って追いかけ回すところなんかも、 本当にこいつが好きなんだなという感じが伝わってくる。 しかも迷いなどは一切なく、 きっちりとポリシーを持ってこうした行動を取っている。 "愛は表現されるべきもの" として・・ 以下引用。

私は先生を愛してるよ だから言葉にするよ 
大きい声で叫ぶよ 長い長いメールで想いを伝えるよ 
表情で ネイルの色で お気に入りのワンピースで 
念入りに巻いたヘアスタイルで あの手この手で 
あなたへの愛を表現するよ 

これを書くために、 もう一度このあたりを再生してもビリビリ来る^ ^ 選ばれているロケ地などもいい感じだし、 雨や傘のシーンの反復、 Love Psychedelico などの音楽もいい。 しょせん難病ものだし、 ギャルものだし、 物語的な深みには欠けるかもしれないが、 やはり、 あなどれない映画だと言える。 しいて言えばタイトルがつまらない。 もう少しエッセンシャルかつハンドリングのいいものがあったのではないか。

例えば? うーん、 例えば・・ (730)日のコウキ ある愛の戦国史 ラブ∞ ・・ というのは冗談で、 何案か出たけど書くのはよそう。 もし見たなら、 アナタだけのタイトルを考えてみるのも悪くない。 でもそれは、 たぶん人に言えないものになるはず。 いや、 それでも表現しなくては? そうだな、 これを見たんだからな。 よし、 書くか。 ・・やっぱ無理、 まだ修行が足りん。 。



天使の恋 (2009日本) 公式サイト 象のロケット 
監督 寒竹ゆり 原作 sin 
佐々木希 谷原章介 山本ひかる 加賀美早紀 大石参月 七菜香 

4.24.2010

時期はずれに見ると気恥ずかしい 「バレンタインデー」



DVDリリースは7月だから中途半端な時期だが、 予約受付が始まったのでエントリーしておく。 母の日が近いというのにバレンタインとはこれいかにだが、 アメリカ式バレンタインは日本とは一味違い、 日本のクリスマスイブに近いと言える。 西洋のクリスマスは日本の正月に近い雰囲気で、 遠くに行っていた家族も帰省して集まるという感じ。 バレンタインが花束を贈ったり、 エッチをキメたりする日なのだ^ ^

日本ではなぜか女が男にチョコをあげることになっているが、 向こうでは男が女に花束を贈るから、 その日忙しくなるのは花屋。 LAの花屋の若い主人役がアシュトン・カッチャー、 その友達以上恋人未満 (古い^ ^) な存在である小学校の先生がジェニファー・ガーナー。 この二人を中心にいくつかのカップルの恋愛模様が描かれる。

ジェシカ・アルバが主演みたいに記載している映画サイトもあるし、 こちらも そのつもりで見たのだが、 ジェシカは端役。 あいかわらずなジェシカ・・ アン・ハサウェイは臨時雇いの社員で、 勤務中にも携帯テレフォンセックスのバイトをしている貧乏ギャルという役柄だが、 微妙にミスキャストながらもそのミスぶりが楽しめる。 数年前ならこれはジェシカの役となっていたかもしれない。

プレゼントのぬいぐるみを抱えて登校する チアリーダー役のテイラー・スウィフトは、 なかなかキュートな収穫だったし、 かつてマーシャル監督の 「プリティ・ウーマン」 でブレイクしたジュリア・ロバーツも、 たった一日だけ帰省する女性大尉というクールな役柄で登場、 ラスト間際をグッと引き締めてくれる。

熟練のスタッフが贈る王道のラブコメは全年齢層がターゲットで、 甘さよりも苦みが強めながら 笑いあり涙あり、 いまさら持ち上げても仕方ないし批判すべきポイントもないが、 1年に数本くらいは映画を見るかなという人には超お薦め作品と言えるだろう。 アメリカっぽすぎてダメという人もいるかもしれないが。



バレンタインデー VALENTINE'S DAY (2010) 公式サイト 象のロケット 
監督 ゲイリー・マーシャル 
アシュトン・カッチャー ジェニファー・ガーナー テイラー・スウィフト 
アン・ハサウェイ ジェシカ・アルバ クイーン・ラティファ 
キャシー・ベイツ ジェイミー・フォックス テイラー・ロートナー 
トファー・グレイス パトリック・デンプシー ジェシカ・ビール 
ジュリア・ロバーツ エリック・デイン ブラッドリー・クーパー 
ジョージ・ロペス ヘクター・エリゾンド シャーリー・マクレーン