7.27.2013

Sではなかったんだ^ ^ 「マン・オブ・スティール」



アメコミのヒーローが映画化されるなか、 正統派すぎてか、 ヘアスタイルがオッサンぽいからか、 敬遠されていた感のある大御所がリアルに、 そして大迫力に作り込まれて帰ってきた。 エピソードはスーパーマン誕生の物語で、 クリプトン星の崩壊と地球にやってきた経緯が描かれる前日譚となっているが、 そもそもそんなに深く考えてないだろうという原作を、 しっかりと 'つじつま合わせ' してくれる^ ^

例えば胸のSの文字はSupermanのイニシャルではなく、 クリプトン星の希望のマークであるとか、 すぐ破れそうなタイツスーツがしっかりとした素材感のものになっている。 スーパーマンと呼ばれるようになるのも後のことで、 最初はエイリアン。 さわやかでハンサムなエイリアンだ。 しかし機能性のよくわからないマント、 そしてあのヘアスタイルも健在だ^ ^

話はいい感じで進行、 ラスト間際で地球はテラフォーミングまでされそうになり、 これでもかというド迫力で、 夏休みの最後を飾るのに持ってこいかもしれない。 概ね人類に希望を持つさわやかな世界観と、 それにふさわしいさわやかなキャスティングがなされていて、 これはこれでいい出来だと思う。 ザック・スナイダーは楽しんで作っている感じがするし、 バットマンのクリストファー・ノーランなども製作に参画していて、 ようするにみんな好きなんだなあ。 乞うご期待。


マン・オブ・スティール MAN OF STEEL (2013) 日本公開8/30 公式サイト・予告
監督 ザック・スナイダー  象のロケット 
ヘンリー・カヴィル エイミー・アダムス マイケル・シャノン 
ケビン・コスナー ダイアン・レイン ラッセル・クロウ 

7.24.2013

ビッグダディどころじゃない “STARBUCK”



見る前から結論づけるな、 っていう邦題だが、 原題はSTARBUCK、 カフェではなく、 男が精子提供の際に使った偽名。 提供されたものは実際に使用され、 男は初めて誕生を見届けようとする子が恋人のお腹にいるが、 実はすでに533人の息子・娘がいたという話。 最近、 試験管ベビー的な話は聞かないせいか一昔前の映画を見ている気にもなるが、 この分野の現状はどうなのだろう。

男が小銭欲しさに輸血感覚で病院に通ったのは80年代で、 今ならDNAの解明が進んで却下されそうな素性の男ではあるが、 映画のポイントは医学的な問題でも法律的な問題でもなく、 この男の人柄の描き方にある。 男は家族経営の精肉店に勤め、 借金をかかえるサエない男ではあるが、 情に厚く、 憎めない奴。 子どもたちから集団訴訟で匿名権の放棄を要求されるが、 原告団のファイルから一人一人を訪ねて歩き、 こんな親父ですまないと感じながら密かに見守ってしまう。

子どもたちはすでにそれぞれに成長していて、 ある者はプロサッカー選手だったり、 ある者は薬物依存だったり、 またある者はゲイだったり、 ある者は障害を抱えていたりする。 しかし自分の血を引いているという愛おしさからか、 放っておけない。 あるいはこの男の場合、 たとえ血のつながりがなくても出会った者に対してはそうしたかもしれない。 そして最後は人類みな兄弟、 ブラボー!

物語的な破綻はいくつも見つけられることだろう。 しかしまあ、 それにも増してブラボー!な気分になれる作品ではある。 人には、 思いもよらない可能性がある。 確かにそうだろう。 これから子どもを持とうとする人に見てもらえばいいのか、 やめといたほうがいいのかは微妙なところだが。 。


人生、 ブラボー! STARBUCK (2011カナダ) 日本公開2013年1月 公式サイト
監督 ケン・スコット 
パトリック・ユアール アントワーヌ・ベルトラン ジュリー・ルブレトン 
サラ=ジャンヌ・ラブロッセ 

帝王窃盗 Absence



アメリカでもDVDあるいはBlu-rayスルーされているようすで、 評判もぱっとしないが、 この手のが見たくなったのでつい。。 予想通り地味でつまらなかった^ ^

例によってわざとらしい、 あるいは少しオーソドックスすぎる手持ちドキュメンタリー調だが、 鏡などに映るシーンを見るとデジタル一眼レフを使っての動画撮影らしい。 スチールとムービーの機材スタイルが曖昧になる昨今ではあるが、 それはさておき、 ネタはゴーストでも悪魔でもなく、 エイリアン・アブダクションだった。

撮影者の妹に不思議なことが起きた。 お腹にいた赤ちゃんがこつ然と消えたのだ。 彼女とその夫は悲しみと怒りのなか警察に事情聴取されるが、 みな何が何だかわからない。 それでも癒しの旅行に出ようということで、 古い日本車に荷物を積んで三人はレッツゴー。 しかし行き先でも不可解な出来事は続き、 やがて・・

不要なシーンが多く見せ場が少ない。 心理的なアプローチもいまひとつ到達せず。 最後に一瞬、 上空からのショットが入るが、 多少なりとも感心したのはそれくらいか。 宇宙人に人体実験されるというネタは掘り下げるといろいろありそうなのに、 薄すぎる内容だった。 こうした事件は Caesarean theft と言うらしいのだが、訳すなら “帝王窃盗” か。 いつかどこかで乞うご期待。



Absence (2013) 日本公開未定
監督 ジミー・ロウェリー 
エリン・ウェイ エリック・マセニー ステファニー・ショルツ 
ライアン・スメイル 

7.20.2013

お嬢さん方、目をつぶって何も見なかったことに
ONLY GOD FORGIVES



非常にざっくり言えばだが、 リンチ+タランティーノな感じ。 北野武的でもあるだろうか。 シンプルで集約されていて、 バイオレンス1本勝負。

舞台はタイ。 ドラッグ・ディーリングでのさばるアメリカ人兄弟とその母。 しかしこの映画でゴズリングよりスコット・トーマスより存在感を放つのが、 タイ警察のチャンことヴィタヤ・パンスリンガム。 日本刀の先を折って、 少し中国刀のシェイプに近づけたようなタイ刀を背中に挿し、 ムエタイも達人の域に達している眼光鋭いオッサンだ。 オッサンは警察官のようではあるが、 裁きを法に委ねない。 その場で私刑が行われ、 私刑執行の後はキャバレーでタイ歌謡を熱唱する。

ゴズリング演じるジュリアンは、 母の愛をめぐる兄との確執を心に抱え、 キレるとコワいが、 冷徹になりきれない優しさも持ちあわせている。 兄が私刑され、 そのことで母が乗り込んできてもふっ切れない何かがある。 ジュリアンはチャンと対峙するときに言う。 Wanna fight? (やるか?)

母は彼がお腹にいるとき中絶を勧められたが、 生む意思は固かったと語る。 が彼は結局、 この世に生まれてきたことを嘆いているのかもしれない。 この世に生を受けるということが最も残酷な行為であると言わんばかりに。 バイオレンスシーンはスローモーション多用でワンパターンな気もするが、 独特の世界観が楽しめる作品。 日本公開は半年先だが乞うご期待。 エントリータイトルはキャバレーでの拷問シーンより。




オンリー・ゴッド ONLY GOD FORGIVES (2013 フランス・タイ・アメリカ・スウェーデン)
日本公開2014年1/25
監督 ニコラス・ウィンディング・レフン 
ライアン・ゴズリング クリスティン・スコット・トーマス ヴィタヤ・パンスリンガム

幸せは心の持ちよう 「スモール・アパートメント」



サブ邦題 「ワケアリ物件・・」 は不要かつホラー映画かとの誤解を招く。 中途半端な思いつきのタイトリングはやめてくれ。 確かにマット・ルーカスの眉毛なしハゲはホラーっぽいし、 登場人物はこのバッジの似合う奴ばかりだが、 北欧的ペーソスあふれる 'ヘンテ' コメディだ。

監督のジョナス (ヨナス) ・アカーランドは黒髪のお化けのような風貌でスウェーデン人ぽくないがスウェーデン出身。 ぼろアパートの住人=loser という発想は日本では理解しやすいが、 アメリカではloserでも一軒家に住んでいるし、 NYの高級アパートメントは富裕層狙いだから、 多少ギャップを含み込んでいる気がする。 むしろ画一的な作りのアパートばかりの日本なら、 アールの階段がある青いドアのオシャレな物件になるだろう。

物語は突如、 このアパートの大家の死とスイスに憧れるフランクリン・フランクリン (姓と名が同じ) が部屋でアルペンホルンを吹くところから始まる。 スイスとスウェーデンを大半のアメリカ人が混同するというギャグを織り交ぜながら、 アパートの隣人や向かいのギャル、 そして精神病院にいる兄や、 妻に浮気された犬好きの心優しい刑事を交えて展開する。

ヘンテコなノリが出だしから自分的にはすべったので、 10分くらいで見るのやめようかなと思った。 が忍耐強く見てよかった^ ^ 一見ヘンテコな人らは、 精神病院の兄を含めて意外にマトモ、 状況から抜け出そうと試みるもそれは思いのほか簡単なことではなく、 そこにおかしみと悲しみを見出し、 一片のメッセージを残すといった正統派の映画でもあった。

最近よく見かけるジュノー・テンプルだが、 ここではそれほど出番は多くなく、 ブリーフ姿で郵便物を取りにいくフランクリンことルーカスはもちろん、 目標設定と達成を毎日実践する革ジャンのコンビニ店員トミー・ボールズ役のジョニー・ノックスヴィルが印象的。 一昔前ならセゾン系が持ち上げそうな "イビツなカウリスマキ" といった作風だが、 こういうタッチは今、 意外に少ないのかもしれない。 最初の10分を乗り切れればOKなので、 ぜひ。



スモール・アパートメント ワケアリ物件の隣人たち (2012) 日本未公開
Small Apartments
監督 ジョナス・アカーランド 
マット・ルーカス ジュノー・テンプル ビリー・クリスタル ジェームズ・マースデン ジョニー・ノックスヴィル ドルフ・ラングレン ジェームズ・カーン 

7.19.2013

ナショナルジオグラフィック提供? Europa Report



木星の衛星エウロパへ、 有人での探査プロジェクトが始動。 すべては順調に思われたが、 乗組員たちが地球に戻ることはなかった。 彼らは氷の星エウロパで光を見る。 それは地球外生命の発見には違いなかったが・・

予告ではハラハラ・ドキドキで面白そうだったが、 見てみると 「アポロ18」 を真面目にした感じ。 演出もイマイチ冴えず、 ショックに欠ける印象。 エウロパから見上げる木星などのファンタジックな風景、 あるいは暗い宇宙を漂うかのような、 そこはかとない恐さを楽しむべき作品か。

キャスティングはヨーロッパ勢を中心にインターナショナル・プロジェクトな雰囲気はよく出ている。 ダニエル・ウーもビジュアルの個性化に貢献。 しかしもう一押し、 何かが欲しかった。



エウロパ Europa Report (2013) 日本未公開
監督 セバスチャン・コルデロ 
アナマリア・マリンカ カロリーナ・ヴィドラ ダニエル・ウー 
ミカエル・ニクヴィスト エンベス・デイヴィッツ 

[DVD]

7.17.2013

長いトンネルを抜けると 「アフターショック」



チリに旅行に出かけたアメリカ人がひどい目に合うというパニックホラー。 チリもご存知のように地震国で内容もそれがらみ。 ただしキャッチコピーにあるように “恐ろしいのは自然災害より人災" ということで、 さまざまに皮肉な展開が待ち受けている。

イーライ・ロスは予算の少なさをカバーするかのように自ら出演、 長いまつげを潤ませながら、 娘を思い惨禍を駆け巡る。 キレイどころを三人揃え、 さらにプラスα、 セレーナ・ゴメスというコがカメオ出演してる。

冒頭、 その出来事が起きるまでかなり長く、 ダラダラした観光ホラーな雰囲気。 災害は突如リアルで不気味に襲い、 その後の悲惨な展開も悪くない。 それだけと言えばそれだけだが、 ラストにもう一つドラマチックな結末が待っている。 内容的にも正規公開はなさそうで、 10月シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクションにて本邦初公開らしい。 乞うご期待。 エントリータイトルはラストシーンのさわり。




アフターショック Aftershock (2012) 日本公開2013.10月シッチェス映画祭にて
監督 ニコラス・ロペス 
製作・出演 イーライ・ロス 
アンドレア・オズヴァルト ナターシャ・ヤロヴェンコ ロレンツァ・イッツォ 
セレーナ・ゴメス (カメオ)

7.16.2013

コールバックは危険 The Call



いわゆる電話を使ったサスペンスかなと思っていたら、 911コールを受け取るオペレーターの話で、 予想以上に面白かった。 911は日本の110番と119番をミックスしたような、 とにかく緊急時にはここにかけろみたいな番号で、 状況によってはオペレーターが陣頭指揮を取って、 危機に瀕している人を助けようと努める。

ハリー・ベリー演じるジョーダンは優秀なオペレーターなのだが、 助けきれずに少女が誘拐され、 その後死体となって発見される。 そのショックから立ち直れないうちに、 新たな誘拐事件発生。 トランクに閉じ込められて高速を移動中に911コール、 それはまたブロンドの少女だった。 少女はジョーダンの指示に従ってテールランプを壊し、 そこからトランクにあったペンキを流すのだが・・

どうやら犯人はブロンドの髪への執着があるらしく、 頭皮ごと髪を切り取ろうとしている。 そんなホラー的な後半、 少女を見つけられない脱力感と同時に緊張感が高まり、 意外な結末を迎える。 それほどエグいシーンが出てくるわけではないので安心して見れるだろう。だから多少、 物足りない気もするが、なかなかの緊迫感が味わえる上出来のスリラーと言える。 音楽はなぜか80年代のカルチャークラブやTACO? がかかる。乞うご期待。



ザ・コール 緊急通報指令室 The Call (2013) 日本公開11/30 公式サイト  
監督 ブラッド・アンダーソン 
ハル・ベリー アビゲイル・ブレスリン モリス・チェスナット 
デニース・ダウス マイケル・エクランド