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8.06.2012

London bridge is falling down. 「薔薇の葬列」



8月になって1週間が過ぎようとしているが、 今月ようやくの1本目は意外なものを。 まあ噂には聞いていたが見る機会がなく今に至り。 それは想像していたほどオドロオドロしいものではなく、 むしろユーモラスで、 鮮明に写し取られている当時の風俗がスノッブを通り越して神々しく、 スパークするインスピレーションの断片が自由に突っ走っていて、 スタンリー・キューブリックに影響を与えたらしいことも納得。 日本って、 面白い国だったんだな。 それが第一の印象。

では、 いつ頃から つまらなくなったんだろう、 この国は。 バブル崩壊以後? いや、 バブルが始まったときからかもしれない。 上手く言えないが日本が失ったもの、 古い映画にはそれが鮮やかに焼き付けられているように思う。 実は父親であるゲイバーのオーナーの "エディに恥をかかせやがって" というセリフに、 何らかのヒントがある気もする。 つまり恥という概念が60年代にはまだあったという発見。

物語は allcinemaの解説にもある通りオイディプス王の悲劇を引用するスタイルだが、 本筋とは関係のないシーンには、 マリファナの回し呑み (呑む、 と言ってたらしい) のあと白線をまっすぐ歩くゲーム、 オカマ三名様の立ちション、 ケバい人らに囲まれてお経を上げる坊さんなど。 治外法権的な思いつきが削除されずに残されていることにも古き良き時代を感じる。 "London bridge is falling down" の曲があのように使われるセンスにも。 (ロンドン橋じゃなかった、 正しくはウィーン民謡 「愛しのアウグスティン」 。 。 すんません)

時系列をランダムに並べたり、 メイキング映像を本編に取り込んだり、 マンガの吹き出し風、 シリアスな部分で突如 淀川長治さんが出てくるなど、 アングラや前衛とは呼ばれてみたものの、 作り手はただ、 いたずら心、 風刺精神、 そんな自由闊達さにあふれていたことが伺い知れる。 60年代が古き良き時代になってしまうこと自体が感慨深いとも言えるが、 今見ても面白い、 あるいは今さら見てもどうしようもない、 けれど時々は振り返ってみたい1本だ。


薔薇の葬列 (1969ATG)
脚本・監督 松本俊夫 
ピーター 土屋嘉男 小笠原修 東恵美子 
特別出演: 秋山庄太郎 粟津潔 篠田正浩 淀川長治 

2.19.2009

走れトロイカ! 「フリークスも人間も」



設定は20世紀初頭ということで セピアカラーでサイレント映画風の作りになっているが、 1998年の作品。 想像したほど奇々怪々な世界ではなく、 むしろ北国ロシアの叙情を感じる作品だった。 叙情と言うよりは時代の、 あるいは人生の機微。 川を漂う流氷、 サンクトペテルブルクの寂しい街並み・・

そうした映像にも増して印象的なのは、 音楽や登場する歌曲。 サイレントな雰囲気に反して、 これがぐっと来る。 繰り返し聴かされる汽笛の音さえも・・

部分部分を取り出せば凄い映画じゃないかと思うのに、 全体を通して観れば、 明日になればすっかり忘れてしまいそうなのはどういうわけなんだろう。 監督の力量の問題、 あるいは映画の総合性ということかもしれないが、 そうやって切り捨ててしまう前に、 そこには何か大きな意味が隠されている気もする。 たとえば死ぬ前に自分の人生を振り返って、 まあ大した人生じゃないなと思う。 にもかかわらず、 子供の頃の思い出のひとつ、 あるいはこれだけは忘れられないという出来事。 それだけで十分じゃないか、 というような。 。


フリークスも人間も (1998ロシア) 日本公開 2001 
ПРО УРОЛОВ И ЛЮДЕЙ/OF FREAKS AND MEN 
監督 アレクセイ・バラバーノフ 
セルゲイ・マコヴェツキー ディナーラ・ドルカーロワ リカ・ネヴォリナ 
フリークスも人間も [DVD][DVD]

フリークス [DVD] 善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD] チェチェン・ウォー [DVD] ビクトル・エリセ DVD-BOX - 挑戦/ミツバチのささやき/エル・スール 上杉 大 [DVD]

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2.07.2009

コンテンツとしての無声映画 「狂った一頁」



75年のサウンド版というもので見たが、 尺八などを使った前衛的な音楽が付いている。 とりあえず削除されずに残っているこのYouTubeの冒頭の数分と同じものだ。 オリジナルを無声のまま映写し、現代音楽のピアノ曲などを生演奏するといった上映会もあったようだ。 音を主役にするだけでなく、 リカットやリミックスに通じる楽しみ方とも言える。

セリフも字幕もないのでわかりにくいが、 資料によるとストーリーはこんな感じ。 "男は妻子を捨て、船乗りとして外国へ渡る。 数年後に帰国したとき、 妻は発狂し精神病院に収容されていた。 娘には恋人がいたが、 母のこともあり結婚できず。 男は病院の使用人となり妻の世話をするが、 妻にはそれが誰か認識できない・・" 原作は川端康成とのこと。

アヴァンギャルド、 ドイツ表現主義、 シュールレアリズム、 アングラ・・ 正しい系譜はこの際置いといて; ざっくりとそんな感じだが、 コマ数が少なく、 オーバーラップを多用する短いカットの連続は、 詩情と不気味のあいだを揺れ動いて、 自分などがまず思い出したのが 「リング」 の中の呪いのビデオだ^ ^

こうした素材は得てしてDVD化などはされていないが、 ロングテールなコンテンツとしてじゅうぶんなポテンシャルを持っているのではないだろうか。



狂った一頁 a Page of Madness (1926/大正15年 日本) 無声 58min
監督 衣笠貞之助 原作 川端康成 撮影補助 円谷英一 
井上正夫 中川芳江 飯島綾子 根本宏 関操 高勢実 高松恭助 坪井哲 南栄子
製作 新感覚派映画連盟・ナショナルアートフィルム社