11.30.2008

砂漠の男と女 「007 慰めの報酬」



ジェームズ・ボンド・・ 非常に調子のいいキャラクターだと思う。 だからショーン・コネリーのニヤけたボンドが、 いかにもボンドらしいという気がするが、 長く続く007シリーズのすべてをフォローしているわけではないので、 ファンの方には誠にふがいないエントリーで恐縮だ。

それでもダニエル・クレイグのボンドは、 初代ボンドとはえらく違った人物になったということはわかる。 風貌、 体格はもちろん、 調子の良さがまったくない。 ある種、 古風ないい奴で、 そんな奴の例に漏れず女にはモテない。 当然セクシーシーンへの展開も、 お約束程度に軽くあるだけ。 こんなボンドで客が入るのか? それが入っているから不思議なんだが、 それなりに時代にコミットした結果なんだろうなと思う。

それに、 もはやスパイ映画でもない。 少年の頃に、 暗躍する悪を垣間見て、 大人の世界の大きさを感じた時代は過ぎ去り、 いまでは悪は目の間に歴然と立ちはだかり、 自分もとっくに大人の仲間入り、 さらに世界はチャンネルを切り替えるだけでどこへでも飛べるくらい狭くなった。 そんな世界にニヤけたボンドは、 きっと場違いなだけなのだ。

そしてボンドガールも、 すでにプレイメイトでもミスユニバースでもない。 意志と戦略を持ち、 自らの状況と闘う一人の戦士なのだ。 男と女は目的のために共闘し、 また共感ゆえに助け助けられる関係になったのだ。

監督や脚本スタッフを見てもわかるとおり、 アクションシリーズの予算を上手に自分たちのやりたいことへシフトしてきたような映画で、 もちろんクルマ、 ボート、 飛行機、 あるいは格闘とアクションシーンも満載なのだが、 見終わったあとも微妙に考えさせられる作品となっているように思う。 逆にもっと考えたい人には しょせん娯楽映画に過ぎず、 なにか不完全な後味の悪さを残すのではないかと思う。 まあ個人的には、 脱ぎはしないがオルガ・キュリレンコがよかったように思う^ ^

007 慰めの報酬 Quantum of Solace (2008イギリス・アメリカ)
2009.1/24 公開予定 オフィシャルサイト&トレーラー 
監督 マーク・フォースター 脚本 ポール・ハギス 他 
ダニエル・クレイグ オルガ・キュリレンコ マチュー・アマルリック 
ジェフリー・ライト ジェマ・アータートン ジュディ・デンチ 

11.29.2008

サッシーで勝負! 「猟奇的な彼女 in NY」



クァク・ジェヨン監督のオリジナルはエポックメイキングな作品だし、 チョン・ジヒョンが可愛かった。

オリジナルから6年の歳月を経て、 NYを舞台にしたラブストーリーに生まれ変わった Sassy Girl だが、 このタイミングの外し方、 何のフックもないストレートなリメイク。 日本未公開DVDスルーも当然かもしれない。 しかし見終わってみると、 やはり良くできた話だし、 アメリカでも概ね好感を持って受け入れられているようだ。

それにしても、 とにかくリメイク流行りのハリウッド。 面白い映画でも、 一般のアメリカの観客になじみのない設定やキャストを逐一なじみのあるものに置き換え、 字幕嫌いの観客のために、 外国語を英語に吹き替えるような感覚でリメイクは今日も生まれる。 かつて世界に発信してきたアメリカ映画は、 いまや逆に世界から優れたソースを輸入し、 ローカライズに精を出す役割になりつつあるのかもしれない。 お金をかけられるシステム的な優位性で平均点はソツなく稼ぐが、 そのシステムゆえに爆発的なオリジナリティを生み出すことは難しくなったのかもしれない。

そんなNY版の Sassy Girl はこの人、 エリシャ・カスバート。 カナダ生まれということで、 アメリカ人にとってはどこか非ヤンキーなエスプリを感じるのだろうか。 最近よく見かける彼女だが、 個人的には日本未公開のコレなんかが印象的だった。 どちらの彼女が猟奇的なまでに可愛いか、 見比べてみるのも悪くないのでは。

猟奇的な彼女 in NY my sassy girl (未2008) 日本未公開 
監督 ヤン・サミュエル 
エリシャ・カスバート ジェシー・ブラッドフォード 
猟奇的な彼女 in NY [DVD][DVD]

フールズ・ゴールド/カリブ海に沈んだ恋の宝石 [DVD] ベガスの恋に勝つルール (完全版) [DVD] 噂のアゲメンに恋をした! コレクターズ・エディション [DVD] あいつはママのボーイフレンド [DVD] 近距離恋愛 [DVD]

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猟奇的な彼女 ディレクターズ・カット特別版 [DVD]猟奇的な彼女 ディレクターズカット特別版 [DVD]
チョン・ジヒョン, チャ・テヒョン, クァク・ジェヨン監督

僕の彼女を紹介します 特別版 〈初回限定生産〉 [DVD] 猟奇的な彼女-サウンド・トラック- 4人の食卓 [DVD] 猟奇的な彼女 デイジー [DVD]

11.28.2008

ロブ・ロウの '真顔' 「ノーラヴ・ノーライフ」



よくわからん邦題がついておりますが、 タイトルがイメージさせるようなラブコメなノリではありません。 しかもテレビ映画。 どうしてこんなものを見ることになったのか、 自分でもよくわからないが、 意外に面白かったのでメモ。

原題はパーフェクト・デイ、 奇しくもルー・リードさんの名曲と同じ。 そして星の数ほどある映画のなかにあって、 このタイトルを冠した映画は不思議なことにこれ1本しかない。 「ホテル・ニューハンプシャー」 あるいは 「アウトサイダー」 のロブ・ロウさん、 と言っても詳しいわけではありませんが、 出ております。 不思議な雰囲気の '真顔' ができる人だなと思う。

勤続15年のラジオ局の営業マン、 ある日突然解雇される。 昇進の話もあった矢先のことだから、 家族も面食らう。 サプライズパーティではカッコをつけて、 自分から辞めた、 これから本を書く、 と言ってしまうが、 作品があるわけではない。 それでも妻に励まされ、 娘を思い、 職探しと肉体労働のかたわらで一つの物語を書き上げる。 エージェンシーに送るが '今回は見送らせていただきます' の通知ばかり。 このへんの一進一退の雰囲気なども、 なかなかいいんだな。 。

そんなある日、 NYから1本の電話。 一転して話はとんとん拍子に進み、 一躍ベストセラー作家に。 男は調子に乗ってしまい、 テレビ出演でカッコつけたトークをしたり、 サイン会ツアーでアメリカ中を回って家庭をかえりみなくなったり、 あげくはヤリ手のエージェントに乗り換え、 映画化権まで販売・・

これまでもときおり現れては予言めいたことを言う男がいるんだが、 その男からいきなり 'クリスマス以降、 お前はこの世界にいない' と告げられる・・

ベタなストーリーで、 いわゆるテレビ映画の範疇を出ない作品にもかかわらず、 プレーヤーにかけたら残り30分となるところまで一心に見てしまったのは、 人生に翻弄されながらも一生懸命なロブ・ロウの '真顔' が可笑しかったからだろうか。


No Love, No Life ノーラヴ・ノーライフ A PERFECT DAY (2006TV)
監督 ピーター・レヴィン 
ロブ・ロウ クリストファー・ロイド フランセス・コンロイ 
NoLove,NoLife ノーラヴ・ノーライフ [DVD][DVD]

 ラブ・アペタイザー [DVD] 近距離恋愛 [DVD] 幸せのレシピ 特別版 [DVD] 主人公は僕だった コレクターズ・エディション [DVD] 007 カジノ・ロワイヤル デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]

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おまけ (内容もトーンも映画とはまるで関係ないが)
Lou Reed "Perfect Day"

11.27.2008

ヴァンパイア版 小さな恋のメロディ?! 
ぼくのエリ 200歳の少女



きのうに引き続き、 ヴァンパイアの話題。 来年4月に日本公開を控える話題作 「トワイライト〜初恋〜」 (何だ?初恋ってのは) もヴァンパイアと人間の恋を描いた作品で、 アメリカでは 「007 慰めの報酬」 を抜いて興業成績トップ1に躍り出たとか。 早く見たい! 4月なんて待てないので、 海外版DVDが出たら速攻チェックだ。 それにしても、 なぜ、 いま吸血鬼なのか。 世にヴァンパイア映画は数多く存在するが、 なぜ、 いままた脚光を浴びようとしているのか。 ゾンビには少し飽きたってだけのことかもしれないが。 。

そしてここに、 もう1本の注目すべきヴァンパイア映画がある。 しかも(当ブログで)何かと話題のスウェーデン製^ ^ これがとっても素敵なので、 、 ホラー映画と言っていいかどうか微妙だが、 あえてホラー嫌いの人にお薦めしたい。

"正しき者を迎え入れたまえ" 原題はそんなニュアンスだろうか。 人間とヴァンパイアの恋の物語、 だがこの映画では12才の少年と'永遠に'12才の少女が主役となる。 語弊を承知で言うなら、 ヴァンパイア版 「小さな恋のメロディ」! これには、 しびれた!

スウェーデンの寒々とした雪景色から始まり、 まずは12才の少年の日常を活写。 両親は離婚していて母と暮らしているが、 ときどき父にも会いに行く。 勉強は好きだが、 学校ではイジメにあっている。 街では誰かが 血を抜かれて殺されるという事件があり、 行方不明者が連続する。 そんなある夜 少年は、 寂しげな少女に出会う。 最近引っ越してきた娘らしい。 ルービックキューブを簡単に解いてみせた少女は、 少年がイジメにあっていることを知ると 'やり返せ' と言う。 でも相手は三人だ、 と少年が答えると '私がついてるから' と・・ (中略) 少女の付き人であった男は壮絶な最期を遂げ、 一人っきりになった少女は、 少年との親交をより深くする。 だが犠牲者が増え、 目撃者がヴァンパイアハンターとなるとき、 少女は 'もうここにはいられない' と少年に別れを告げる。 少年は課外水泳クラスに呼び出されるが、 待ち受けていたのは・・


ヴァンパイアが実在したら、 そして今もこの社会に生きているとしたら・・ そのあたりをリアルに描き込んで、 干からびたこの世界を 真っ赤に染めてくれる 新世代ブラッディローズ! あちこちの映画祭で賞をかっさらい、 ギレルモ・デル・トロも絶賛だそうで、 何とすでにハリウッドリメイクも決まっているというのだから、 来年は吸血鬼の年になりそうだ。

(追記) こんな邦題になって公開が決定。


ぼくのエリ 200歳の少女 Let The Right One In/Låt den rätte komma in
(2008スウェーデン) 2010.7/10 公式サイト 象のロケット 
監督 トーマス・アルフレッドソン 
原作・脚本 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト 
カーレ・ヘーデブラント リーナ・レアンデション 
ぼくのエリ 200歳の少女 [DVD][DVD]

ゾンビランド [Blu-ray] 瞳の奥の秘密 [DVD] キック・アス Blu-ray(特典DVD付2枚組) 悪魔の墓場 -HDリマスター版- [DVD]

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11.26.2008

音の吸血鬼


とくに映画とは関係ないのだが、なぜかシネマを感じるユニット。インダストリアル歌謡? ビート演歌? ゴス? 自分の世代的には懐かしいサウンドでもある。戸川純とかゲルニカとか、ヒカシューとか近田春夫とか。。思いっきり好きだったかと聞かれればそうでもないのに、突然の郷愁。このテクノ吸血鬼は海外でも受けそうだな。。
要チェック!

Aural Vampire






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11.25.2008

幸せって何だっけ 「散歩する惑星」



愛おしき隣人」 「スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー」 のアンダーソン監督の未見だった作品をフォロー。 寡作な監督の3作はこれですべて見たことになるが、 この作品がやはり最も完成度、 あるいは描きたいことの集約度が高いように思う。

原題の "二階からの歌声" とはどういう意味なんだろう。 抽象的な意味合いにしろ、 ぴったりな感じがする。 散歩・・ なんて邦題は必要なかったのではないだろうか。 それにしてもスウェーデンにこれほどまでに重苦しい時代があったのだろうか。 詳しくはないが、 過去よりむしろ未来に対する憂鬱なのかもしれない。 そしてここで描かれた未来は、 いままさに全世界的な現実になりつつある。

700人をリストラする会社、 経営陣はどこか別の場所にひそかに移住する計画。 意味不明の深夜の渋滞、 胴体切断に失敗するマジシャン。 家具屋の火事と新商売の十字架販売。 若い命を犠牲にして延命する老人たち。 心を患った詩人・・ 平行するエピソードが交錯して、 人生の空しさを浮かび上がらせ、 世界の終わりを予言する。

詩人の兄を励ます弟。 人々は関心がないことを装ってるだけさ、 兄さんの時代がきっと来る。 父は言う、 ささやかな幸せを守りたいだけなのに、 なぜそれが叶わないんだ?

その昔ヴィスコンティの映画で見たような白塗りの顔をした登場人物は一様にゾンビのようで、 後半は実際に幽霊まで物語に参加してくる。 しかしここで描かれるのは上流階級の苦悩ではなく、 持たざる人々を取り巻く不条理。 白人が顔をさらに白く塗るというのは、 日本人が顔を黄色に塗って映画に出演するような自虐的な意味合いが込められているのだろうと推察するが、 苦しみや息苦しさもアンダーソンにかかると、 眉間にしわを寄せるような類のものではなく、 陸揚げされた魚が口をパクパクさせるような滑稽さとして描かれる。

オフビートでペーソスあふれる映画として見るか、 あるいは不気味な予言書として見るか、 それは見る人しだいだが、 会議のために用意した長期的ヴィジョンに関する資料をなくしてしまった男は言う。 私たちに運命を変える力などない。 できるのは運命に、 ちょっと手抜きをしてもらえるよう頼むことぐらいだ。


散歩する惑星 (2000スウェーデン・フランス) 日本公開2003 
SONGS FROM THE SECOND FLOOR ロイ・アンダーソン監督 
*カンヌ審査員特別賞 公式サイト&予告 
散歩する惑星 愛蔵版 [DVD]愛蔵版 [DVD]

 不思議惑星キン・ザ・ザ [DVD] 愛おしき隣人 [DVD] スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー [DVD] モンテーニュ通りのカフェ [DVD] リスボン特急(ユニバーサル・セレクション2008年第11弾)【初DVD化】【初回生産限定】

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