3.26.2009

たのしい悪夢 「TOKYO!」



いやあ何と言ったらいいのかな、 去年すごく見たくて、 でも見れなかったヤツ。 これが、 予想以上にサイコーだったね! 映画をたくさん見るほどに、 地味でつまらない作品にも多く当たるようになる。 俺って本当に映画が好きだったのかと疑問になってくる。 そんななか、 これは映画のプリミティブな魅力がたっぷり詰まった1本。 (もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、 今日から '' です^ ^ '自分' だと、 どうもマジメでイカンですわ。 '俺' 第1回目にぴったりの作品でよかった!!)

別にいまさら東京でもないし、 そんなことは端からどうでもいいのであって、 どっかのいいかげんなプロデューサーがぶち上げたトンデモ企画? というようなノリだが、 それが逆によかったのだろう。 というか引っぱってきた監督がよかっただけなのだが。 カラックスも最近はどうしてるかと思えば意外に健在なようだし、 他の二人もあらためて才能にあふれる人たちなんだなと。 褒め称えてるわけではないし、 むしろ半分は呆れているのだが、 地球上にこのように呆れた人たちがいるのは、 なんと勇気づけられることだろう。

どれだけ東京や日本について取材したのか、 あるいは知識を持っていたのかは定かではないが、 へえ、 東京ってこうなんだ!と思って見たよ。 俺、 東京在住なんだけどね。 意外とよく知ってるじゃないか、 一昔前のジャポネスクみたいなのとは一線を画すなあ、 と思ったのも束の間、 ところどころ、 ありえないニュアンスが飛び出す。 日本の俳優たちに、 わけのわからない注文をつけているような撮影風景まで目に浮かんでくる。 だが反対に、 日本の監督がパリについての映画を撮ってくれと頼まれたら、 ここまで我流を通せるだろうか。 しかも、 それなりの説得力を持って。 三池崇史くらいだろうね。

ミシェル・ゴンドリーの1話目は "インテリア・デザイン" なんて それらしいタイトルがついているが、 欺されないほうがいい。 東京に出てきてインテリアデザイナーをめざしてがんばってます、 なんて話ではない。 藤谷文子はすっ裸で街を走らされるし、 この仕事を受けたこと、 さぞ悔やんだことだろう^ ^

そしてカラックスの2話目は、 まずタイトルそのものが Merde=糞 ・・ カラックスが結局どういう人か、 はっきりわかった気がする^ ^ にもかかわらず独自のテンション、 絵づくりは、 やっぱり力強い。 オムニバスの1エピソードという短い時間でもそれなりにまとまってるし、 ワンショットの移動距離はやはり一番長いだろう。 ドニ・ラヴァンは銀座を走り回らされ、 フリチンで逮捕され、 未知の言語をハイトーンでしゃべらされる。 コメディです、 っていうコメディよりよっぽど笑えたし、 湯水のようにお金を使わなくてもやれるじゃん、 と。 でもやっぱり、 お金は食べるんだね^ ^

ラストのポン・ジュノは、 意外にストーリーテラー。 蒼井優というキャスティングに、 知りすぎ、 という気もするが、 彼女の場合は、 ふとももにスイッチを貼り付けられるだけで済んだようだ。 オムニバスのアンカーにふさわしいラヴな展開で、 日本語でしゃべっていても韓流を感じた。 韓流の一時期の勢いはこのように、 思いつきでいいんだ、 という自由闊達さから生まれたのだろう。 東京、 あるいは日本をモチーフにしながらも、 今の日本映画にはない '手綱のすり抜け方' がある。

どのエピソードもオリジナル脚本であることが、 完成度の低さと同時に、 映画の原始的な魅力を封じ込めるに至ったポイントだろう。 安易に原作を持ってくることをやめるだけで、 映画は新たなステップへ踏み出せそうな気がすると常々思うのだが、 ひとつのサンプルがここにあるのではないか。 ただし、 面白い人が撮らなければいけない。 つまらない人ほど技を磨こうとし、 その努力に見合う評価を欲しがるものだ。 面白い人は、 つい楽しませることを考えてしまう。 どんな状況でもギャグの一発は入れないと気がすまない人が撮った映画のレビューは一言、 よかった、 で済んでしまうのだが、 それでいいではないか。 そういう地点に戻るべき時なのだ。


TOKYO! (2008/フランス・日本・韓国 オムニバス) 公式サイト& ENTER 

INTERIOR DESIGN  脚本・監督 ミシェル・ゴンドリー 
藤谷文子 加瀬亮 伊藤歩 妻夫木聡 大森南朋 

MERDE  脚本・監督 レオス・カラックス 
ドニ・ラヴァン ジャン=フランソワ・バルメ 

SHAKING TOKYO  脚本・監督 ポン・ジュノ 
香川照之 蒼井優 竹中直人 

その他 豪華キャスト テーマ曲 HASYMO 

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