1.19.2013

天使の声 「レッド・ステイト」



タランティーノが "I fucking love this movie!" と絶賛する (とされる) トレイラーは いかにもそれっぽい感じで、 まああのオッサンは何でも絶賛するからなあ、 と思いつつも見た。 しかしなかなか凄い。 まず銃が凄い。 派手な銃撃もあるが、 硬い鉄の弾が柔な人間を貫通する様が生々しい。 ベースにあるのはヘイトクライムで、 これを真正面に捉えるのでもハスに眺めるのでもなく、 斜め45度くらいから捉えた微妙な硬派。

プロットはと言うと何段ものロケット切り離し方式で、 唐突にマトリョーシュカを解体していくと中には何もなかった、 みたいなパターンではあるが、 しいて言えば玉ねぎの芯? だけが残るような。 。

そういう話だからディテールを書くわけにはいかないが、 新興宗教が出てきて人間のモラルの低下を神に代わってお仕置きし、 今日こそが世界の終わりだと勝手に盛り上がる。 そう言えばこの国にもあったが、 ここに登場するのは あれと比べてもあまりに小規模なカルトで、 にもかかわらず政府側はこれをあっさりテロとして処理できる時代の恐さみたいなものが痛烈に描かれている、 とも言える。 。

そして世界の終わりを告げる天使の声はヘタクソなラッパのように響く。




レッド・ステイト RED STATE (2011) 日本未公開 
脚本・監督 ケヴィン・スミス 
マイケル・アンガラノ カイル・ガルナー ニコラス・ブラウン 
ケリー・ビシェ メリッサ・レオ スティーヴン・ルート 
ジョン・グッドマン 

1.15.2013

重力の属性 UPSIDE DOWN



双子星あるいは二連星、 地球がもしそうだったら・・ 見上げるとそこに空はなく、 もう一つの地球が逆さまに、 しかもかなり接近して浮かんでいる。 なのに二つの世界は行き来できず、 搾取する側とされる側に二分されている。 それをひっくり返すのは一つのロマンス・・ みたいな設定のファンタジー作品だ。

上下がリバースした映像表現はなかなか壮観で、 その世界に属するものは、 そちらの重力に引っ張られるという理論に無理がある気はするが、 最後はその論理破綻を上手く利用してあっさり着地。 深く考えなければ楽しめる^ ^ さらにピンクのパウダーなる魔法的要素まで入ると完全にSFではなくなるし、 巨大企業を手玉に取るようすなどはあっさりしすぎてサスペンス性に欠けるものの、 思いつきのまま展開するのも悪くない。

まあそんなカナダ・フランス合作のファンタジー大作、 ハリウッド作品ともインディ作品ともひと味違うということで。 。




アップサイドダウン 重力の恋人 UPSIDE DOWN (2012カナダ・フランス)
監督 ファン・ディエゴ・ソラナス  日本公開2013.9/7
ジム・スタージェス キルステン・ダンスト 
ティモシー・スポール ジェームズ・キドニー 

1.10.2013

注射違反 「パンクチュア」



based on a true story と書いとけば、 とりあえず重みが出るかもしれない。 だがこれは、 相当に重みのある事実ではないだろうか。 いつの頃からか注射器がガラス製からプラスチックに変わったのは知っているが、 その背景には、 医療器具の製造や流通を独占する組織があったということらしい。 煮沸消毒のできないプラスチックの注射器が、 実はHIVやB型肝炎の広がる要因だったというのだ。

この状況に風穴をあけるのは型破りな弁護士。 型破りと言っても自信家で、 派手な服装で法廷に立ち、 ドラッガーで、 アシスタントにハンドジョブをさせる程度だが、 その奥には正義の血が隠されていた。 旧友と二人で設立した貧乏事務所の売名に動く日々のなか、 この事件に突き当たる。 年間100人近くが、 注射器の事故による不慮の感染で亡くなっている。 片やセイフティ・ニードルなる発明があるにもかかわらず、 病院側はこれを使おうとしない。

劇中でも二児の母である看護師が、 暴れる救急患者への注射器を自分に刺してしまうことでHIV患者となる。 セイフティ・ニードルはこうした事故を防ぐための特殊な機構を備え、 また再使用のできない構造を持つイノベイティブな製品だったが、 なぜか無視し続けられた。

巨悪に挑むストーリーは疲れるし、 この作品も映画としての完成度は高いとは言えずスムーズには見れないかもしれない。 しかしエンディングは壮快で、 こういう事実があったこと、 こういう男がいたことを知るのは意義がある。 そんな作品に限って未公開で、 合衆国の陰謀とかトンチンカンなサブ題が付いていたりで借りる気もしない人がほとんどだろう。

でも、 こんな注射器は見たことがないし、 日本ではどうなっているのだろう。 医療関係者にはぜひ見てほしいし、 状況を教えてほしい。 痛くない注射器というのを聞いたことがあるが、 うち子も使ったことがない。 やはり、 何かある?



パンクチュア 合衆国の陰謀 Puncture (2011) 日本未公開 
監督 アダム&マーク・カッセン 
クリス・エヴァンス ヴィネッサ・ショウ 

お前、バカだな 「王 (ワン) さんとの遭遇」



キッチュなタイトルではあるが意外にマジメ?な内容・・ と書くとネタバレしてしまうのだが、 「エイリアン」 へのオマージュなども入っている、 イタリア発インディSF。

そのエイリアンは王 (ワン) と名乗り中国語を話す。 通訳が呼ばれ、 最初は暗闇での尋問を通訳させられるが、 これではやりにくいから明かりをつけてと頼む。 わかったよ、 覚悟はいいな・・

中国語を習得したのは、 その言葉を話す人口が最も多いからと論理的な答え。 地球へは友好目的で来たと話すが、 政府関係者はこれを信じず、 拷問へと。 通訳は人道的立場からこれを受け入れられず、 信念のままに行動するが・・

信じるというのは、 裏切られたときの対処ができている場合にのみ許されるのだな、 と。 。 予算上、 地味ではあるが、 まあ面白い。


宇宙人王 (ワン) さんとの遭遇 (2011イタリア) 日本公開2012.10 公式サイト
The Arrival of Wang
脚本・監督 マネッティ兄弟 
フランチェスカ・クティカ エンニオ・ファンタスティキーニ 

1.09.2013

血の花火 DJANGO UNCHAINED



この映画に対してスパイク・リーが憤慨の意を表していたらしいが、 タランティーノ自身は本編終盤に出てきてダイナマイトで吹き飛ぶ^ ^

元ネタがどうとか今回も語られるのかもしれないが、 ようするにマカロニウェスタンの変わり種で、 銃を持った奴隷が奴隷商人に復讐。 マカロニ好きのタランティーノが自然と得た着想に過ぎないとも言える。 しかし独特のテンションで引っ張られ、 最後はスカっと。 本作もまた心なしか、 いつもよりロマンチックかもしれない。

Dはサイレントだ、 との決めぜりふを吐くジャンゴは、 タランティーノ作品2回めの歯医者 兼 賞金稼ぎのドクター・シュルツことクリストフ・ワルツ (ヴァルツ) に拾われ、 銃の手ほどきを受け、 賞金稼ぎのパートナーとして金をため、 売られた妻を買い戻しにいく。

怪しまれないためには正面突破でいこうと、 ジャンゴは奴隷商人として、 ヤバいミシシッピのなかでもひときわヤバいキャンディランドに潜入する。 馬に乗った黒人を、 白人も黒人もみな珍しがって眺め、 彼は奴隷ではなく、 奴隷商人だと紹介されるときの '何でもいいよ' 感^ ^

いつもより凝った会話やプロットは少ないように思っていると、 最後にド派手な肉弾戦で決めてくれる。 噴き出す血の花火。 キャンディに "bad loser 救いようのない敗者" と呼ばれたワルツは言い返す。 "abysmal winner 救われようのない勝者め" と。 勝者の歴史に風穴をあけることはできないが、 敗者は復活して一矢を報いて散る。 いつもながら選曲がいい。




ジャンゴ 繋がれざる者 (2012) 日本公開2013.3/1 公式サイト・予告 象のロケット 
DJANGO UNCHAINED
脚本・監督 クエンティン・タランティーノ 
ジェイミー・フォックス クリストフ・ワルツ レオナルド・ディカプリオ 
ケリー・ワシントン サミュエル・L・ジャクソン 

1.05.2013

5年後を想う 「ハッピーサンキューモアプリーズ」



サンダンスで観客賞を取ったが日本未公開。 審査員賞はノミネート止まりということでも作品のカラーがわかる。 しかし観客賞の方が名誉とも言え、 ジョシュ・ラドナーは書き上げた脚本を監督し、 主演もしている。 "5年後に恥ずかしくなる" というセリフがあるが、 身をもってそれを実践したわけだ^ ^

DVD化に際しては 「ニューヨークの恋人たち」 と長いタイトルをさらに長くするサブタイトルが付加されているのには恐れ入る。 それでレンタル数が伸びるとでもいうのか、 空セオリーにつき合わされ味気なくされる。 確かにニューヨークの恋人たちは出てくるが、 それを言えばこのサブタイトルが付けられる映画はゴマンとあるはず。

それはさておき、 基本的に登場人物はみないい人なので、 やはり5年後に恥ずかしくなることだろう。 これが観客賞ということは、 みなハッピーに飢えているのかもしれない。 舞台は穏やかな季節のNYで、 ある意味NYでなくてもよかったかもしれない。 あるいはNYも普通の街になったということかもしれない。

しかしエントランス下の階段に座って話す風景はいかにもNYっぽく、 東京でも名古屋でもできることではあるが、 意図してか、 せずかはわからないものの、 そのショットが目についたので並べてみた。 するとどうだ、 まさにニューヨークの恋人たちだ^ ^

ミシシッピという名前の女の子が好きになり、 田舎だろ? と軽くバカにするシーンもあって、 てっきり監督はニューヨークっ子かと思いきやオハイオ出身だった^ ^ 5年後の自分はどうなってるんだろうなあ。 5年以内にテレビででも放送されたら・・ と言わず近々レンタルしてやってくれ^ ^




ハッピーサンキューモアプリーズ ニューヨークの恋人たち
HAPPYTHANKYOUMOREPLEASE (2010) 日本未公開
脚本・監督・主演 ジョシュ・ラドナー 
マリン・アッカーマン ケイト・マーラ ゾーイ・カザン 
パブロ・シュレイバー トニー・ヘイル