6.22.2012

ハイファイブがきらい 「ゴッド・ブレス・アメリカ」



今風のボニー&クライドがまさにコンセプトなんだろう。 そう言われるとハスに見てしまうかもしれないが、 比較するのは禁物。 こちらは大上段のタイトルの通りベタベタにアメリカな内容で、 テレビ番組がらみのシーンがかなり入るし、 リアリティ番組やその周辺の名前を知らないとわかりにくい。

もちろん知らなくてもだいたいの想像はつくが、 憎悪の対象にどっぷり触れていないと、 スカっとさわやか銃乱射映画とか、 中年男と女子高生のファンタジック・ロードムービーとして消費されるだろう。 現に日本公開を来月に控えてノリノリのお祭り映画としての宣伝攻勢が始まろうとしている。

自分としてはこの手は好きだし、 楽曲の使われ方もセンスあるし、 演出も流れもディテールもかなりしっかりしていて記憶に残る映画になりそうだが、 何%かの冷めたものが残る。 しかしこの冷めたものこそがこの作品の意義かもしれない。

中年男フランクはある日 会社をクビになり、 さらに末期の脳腫瘍と診断される。 離婚してアパート暮らしだが、 小学生の娘も会ってくれなくなっている。 ふと、 しまってあった銃を取り出してくわえるが、 たまたまテレビに映し出された わがまま放題の女子高生が娘とかぶってしまい、 どうせなら、 こいつを殺してから死のうと考える。

計画は遂行されたが、 それを目撃した別の女子高生ロキシーにつきまとわれる。 彼女にとっては今日が人生最高の日らしい。 こうして二人は "deserve to die" な者を殺して回るようになる。 盗んだ黄色いスポーツカーで。 ティー・パーティ、 キャスターで石油会社の御曹司、 新興宗教、 映画館でのマナーが悪い者、 駐車場で2台分のスペースを取った男が殺される。 そして最後はおバカ素人を弄ぶテレビ局に乗り込み・・

旅の過程で中年男と女子高生は特別な信頼を築くが、 あくまでも二人は "platonic spree killers"。 彼らが憎悪する対象でアメリカの多数派と、 それから外れた者があらためて明確にされる。 それは人種や民族に関わらず、 文化的なマジョリティとマイノリティとも言える。 マイノリティはマイノリティのまま静かに生きることが許されない社会のお仕着せに苦しむ姿が見て取れる。 それは恐怖をまき散らして消費を煽るアメリカという経済活動。 それらへの怒りは一気に吹き出すが "腐ったアメリカ" を正そうという大義名分も最後には裏切られる。

"Beat the Devil's Tattoo" by Black Rebel Motorcycle Club, "Let's Get Away from It All" by Rosemary Clooney, "I'm Not Like Everybody Else" by The Kinks, "I Never Cry" by Alice Cooper などの曲が随所に埋め込まれる。 フランクは実は銃が上手く、 クマのぬいぐるみを使ってロキシーに銃の扱いを指導する。 ロキシーはアリス・クーパーを "accept" していて、 このアリスを論じるシーンがけっこう長い^ ^

殺しのシーンでは最初のクロエが印象的だが、 その他ロキシーの縦の腹かっさばきも見もの。 映画館での出来事をモバイル撮影するスタートアップ企業ファウンダー風の男の撃たれ方もいい^ ^ フランクがAK-47を買うときの銃のディーラーもいい味だ。 7月末公開、 乞うご期待。




ゴッド・ブレス・アメリカ (2011) 日本公開2012.7/28 公式サイト 
GOD BLESS AMERICA
脚本・監督 ボブキャット・ゴールドスウェイト 
ジョエル・マーレイ タラ・リン・バー マディ・ハリソン 
アリス・アルバラード ダン・スペンサー マイク・トリスターノ 

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