11.07.2010

I'm CEO, Bitch. 「ソーシャル・ネットワーク」



面白そうな映画は数あれど、 自分的に そそられたのは今年の前半が 「The Runaways」なら、 後半はコレ。 日本では来年早々の公開となってしまうが遅れ方は少ない方で、 良い傾向と言える。 前者については まだ公開の予定もない。 。 まったく傾向の違う二作品ではあるが、 下世話な部分に切り込んだものが好きなんだなと、 我ながらあらためて思う^ ^

今をときめく facebook の内幕を描いた本作は、 IT版の 「ファイト・クラブ」 とも言えるし、 学生版 「市民ケーン」 とも言える。 想像を大きく裏切っているのは、 全編がほぼハーバード大学 理事会での審議で、 その間に回想として各シーンが放り込まれるという思い切った構成になっていること。 ある種の法廷劇のようだ。 また出会いと決別が交互に来る皮肉なスタイルは 「(500)日のサマー」 を思い出したりもする。

facebook のファウンダーであるマーク・ザッカーバーグは後に大きな成功を手にするが、 立ち上げ当初からアイディアの盗用で訴えられ、 さらには共同創設者である親友のエドアルド・サヴェリンからも訴えられる。 傷ついた友情は苦みを噛みしめながらまだ結ばれている・・ そんなネット時代の青春物とも言える。

原語についていくのは普通の映画の3倍近く大変だったが、 それは早口のザッカーバーグやITの専門用語のせいだけではなく、 ハーバード大学内のハウスであるとか、 Final Clubsであるとか、 あるいはクリムゾンという学内の新聞? このあたりをよく知らないので ”キング・クリムゾン” って何? とか思ってしまう^ ^ だが1月の公開では、 こなれた字幕が付いていることだろうし、 ウィキペディアなどでハーバードやアメリカの大学について読んで行けば準備OKだろう。 ただし facebookが何であるか、 あるいはナップスターが何だったのか、 ネット事情やスタートアップに関心がないと、 丸出だめ男かもしれない^ ^

いま日本語字幕付きの予告を見たところ、 随分と印象が違うのだが、 ザッカーバーグが自腹で払うようなシーンなんて あったっけ? 不思議だな。 。 予告編の音楽 "Creep" の聖歌隊バージョンは本編では流れなかった。 タイトルバックでインストルメンタル化されたバージョンが使われているだけ。

ハーバードの二回生だったザッカーバーグは、 彼女にフラれた腹いせに わずか数時間で facemash.comなるサイトを立ち上げ、 ハーバード内の各寮の学生名簿をハッキング、 女子大生ミスコンをオンライン開催する。 これが学内のネットワークをパンクさせるほどのアクセスを獲得、 問題児は注目もされ、 名門ボート部の連中から声をかけられ、 進行中のサイト開発を任される。 それは facebookに似て非なるものだったが、 独自にアイディアを進めたザッカーバーグは後に、 ボート部の坊ちゃんたちからアイディア盗用で訴えられることとなる。

ザッカーバーグの着想は人気を博し "Facebook Me" (フェイスブックして) が合い言葉になる。 ビジネス専攻の親友とともに会社を設立、 TheFacebookをハーバード以外の大学にも広げてゆく。 スタンフォードの女子大生の部屋でこれを見た、 かつてのナップスターのファウンダーであるショーン・パーカーの嗅覚が働く。 TheFacebookはTheを外し、 ベンチャーキャピタルの投資を受けてグローバル企業へと躍進。 しかしこの経緯の中でザッカーバーグは親友を裏切り、 パーカーをも使い捨てる。 最年少の億万長者となった彼は、 パーカーの十八番であった "I'm CEO, Bitch." というフレーズを遺言のように名刺に印刷しながらも、 一人ノートパソコンに向かって、 かつてのガールフレンドにフレンド・リクエストを送るのであった・・

アメリカの大学は進んでいると思っていたが、 それでも いろいろあるようで、 そもそも学校教育、 あるいはビジネススクールのセオリーに従順についてくる者にアントレプレナーの素質がないことが暗に指摘されている。 ビル・ゲイツもハーバードだが中退だし、 ナップスターのショーン・パーカーは大学にも行ってない。 ビジネスというよりサバイバル、 そう形容するほうが近いシリコンバレーの様子を垣間見れて、 自分などはワクワク。

稼動から数日でハーバードのほぼ全学生が登録した TheFacebookだが、 それまでモテなかったザッカーバーグに女の子のほうから寄ってくる。 それはまるでグルーピーで、 このあたりは '作り' じゃないかと推測するが それでも、 今や起業家はロックミュージシャン、 みたいな捉え方は誇張とも言えない。

知り合いのフランス人に勧められて数年前 facebookに本名で登録した自分ではあるが、 ソーシャルな素養が薄いらしく、 休眠状態だ。 インターフェースは軽く、 ちょっとマジメすぎる気もするが MySpaceなどに比べると知的な感じがするし、 ハーバード発というブランディングも初期には効果的だったのだろう。 全世界に拡大してからも、 あいかわらず本名での登録を推奨しているのは、 もともとが生徒名簿だったからだ。

本名で登録しているメリットとして実際に、 現在は海外に住んでいる古い知り合いからコンタクトがあったし、 mixiを世界に広げた感じは面白いなと思ったこともある。 ただ世界に広がってしまった分だけ、 リアルで会えることも少なく、 ギャルからフレンドの申込みがあってもトキメキは小さいし、 スペイン語などでメッセージが来ても Google翻訳にでもかけないと対応できない。 全世界を巻き込む生徒名簿は、 このあたりが限界かもしれない・・

今回、 脚本も読むことができたが、 エドアルドの東洋系のガールフレンドの名前がジェニーからクリスティに変更され、 いくつかの実名が伏されている以外は、 多少のアドリブを除き大きな修正がない。 最終稿までに修正されたのかもしれないが、 構成も ほぼシナリオ通り。 しかしその行間にある雰囲気を具体化すること、 これがフィンチャーの手腕なのだと感じ取ることもできた。

前半は比較的シリアスだが 後半はややコミカルな味を強め、 リアリティは薄まる気がするが、 それでもこんな分野をタイムリーに取り上げるフィンチャーやソーキンの、 時代への嗅覚はあいかわらず鋭いと言える。 これまでは よく知らなかったザッカーバーグというやつが、 心なしか好きになった気もする。 ヘンリー・ロイヤル レガッタのボートレース・シーンで、 ジオラマ的な映像が入る。 遊んでるな、 と思う反面、 意外に効果が上がってる気もした。 パーカーというエキセントリックなキャラ、 下着通販のビクトリアシークレットのエピソードも効いている。

と、 いろいろ書いてみても総括できないのは、 現在進行中の物語でもあり、 ある意味では早すぎた映画化だからか。 バブル期の日本に似た部分もあるね。 東京国際映画祭で見た人もいるのかな。 1月のロードショーには、 字幕付きで もう一度見ていい作品かもしれない。 パーカーのしゃべりがダンスミュージックに乗ってラップになってる・・ あそこも もう一度見たい^ ^




ソーシャル・ネットワーク the social network (2010) 
日本公開2011.1/15 公式サイト・予告 象のロケット 
監督 デビッド・フィンチャー 脚本 アーロン・ソーキン 原作 ベン・メズリック 
ジェシー・アイゼンバーグ アンドリュー・ガーフィールド 
ジャスティン・ティンバーレイク アーミー・ハマー マックス・ミンゲラ 
ブレンダ・ソング ルーニー・マーラ ラシダ・ジョーンズ 

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