10.26.2008

多重人格のディラン 「アイム・ノット・ゼア」



結論から言うと、 気に入った! ボブ・ディランの伝記、 あるいはオマージュなのだが、 そこはクセ者監督トッド・ヘインズ、 普通には描かない。 何とディランを6人の人格に分裂させ、 時代も繋がりも関係なく2時間15分のシークエンスにぶち込んだのだ。 オムニバス映画などによくあるように、 ちらっと小物がリンクしていたりはするが、 ディランのアイデンティティを統合するのは貧乏揺すりぐらいのものか。 フェイクドキュメンタリーは流行りの手法だが、 これはドキュメントをあえてフェイクにしていると言える。 しかし映画のラストで語られるように、 真に自由に生きるとはこういうことなのかもしれない。

さらに興味深いのは、 分裂した人格の一つであるロックスターとしてのディランを演じるのはケイト・ブランシェット、 女性が演じているのだ。 最初、 声はアフレコかな、 それにしては違和感ないな、 ブランシェットってこんな声だっけ・・ とか考えてしまった。 監督の思うつぼ、 まんまとマジックに引っかかってしまったわけだが、 ブランシェットの役者っぷりもあって、 映画をより印象深いものにしている。 ブランシェットのみならず、 6人のディランがそれぞれに印象深い。

ディランを扱うというのは それなりに覚悟がいったと思う。 ましてや監督は自分と同世代なのだから、 リアルタイムで知っているのは彼の後期だけではないか。 とすると半分以上はあの時代へのスノビッシュな憧憬でしかない。 にもかかわらず、 いやだからこそ、 非常に魅惑的なトリップが味わえる。 ディランのオリジナルにカバーも混ざるが、 当然ながら音楽にも圧倒される。 ( フォークかロックか? むしろ 元祖パンクではないか、 ディランって・・ ) そして何よりこの映画で上手く描けていると思うのが 'ブーイング'。 分裂したどのディランもが奇しくも人々の非難の目、 非難の声に晒され、 6人6様に痛々しい。 監督が自覚的かどうかはわからないが、 もしかして過去の作品で受けた監督自身へのブーイングの嵐が肥やしとなっているのかもしれない^ ^ 娯楽映画しか見ないというのでなかったら、 ぜひご一見あれ。


アイム・ノット・ゼア I'M NOT THERE (2007) 日本公開2008
脚本・監督 トッド・ヘインズ  公式サイト&トレーラー 
(右上 photo の順)
クリスチャン・ベイル ベン・ウィショー ヒース・レジャー 
リチャード・ギア マーカス・カール・フランクリン ケイト・ブランシェット 
シャルロット・ゲンズブール ジュリアン・ムーア 
アイム・ノット・ゼア[DVD]
おすすめ平均 star
star素晴らしいです。
starちょっと企画倒れ
starへったくそなカバー曲みたいだ
starなんだろこの充足感は。 。
star難解でちょっと分かりづらいけれど、 面白い!!
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 Dylan Speaks The Bootleg Series, Vol. 8: Tell Tale Signs - Rare and Unreleased 1989-2006 テル・テイル・サインズ ボブ・ディラン写真集 時代が変る瞬間(プレミア版) キャンディ

10.25.2008

デ・パルマ的フェイク 「リダクテッド」



デ・パルマよ、 お前もか、 、

というのはつまり、 またも出ました、 フェイクドキュメンタリー・・ この映画も全編まさしくそれ。 誰しもが一度はやってみたい手法なのかもしれない。 しかしそこはデ・パルマ、 この手法にありがちな 'わざとらしさ' は一切排し、 どこまでも真実味の追求のための表現に昇華されていると言える。 カメラを回すのは映像作家志望の青年ということで、 多少の技巧も言い訳が立つようになっていたり^ ^ 兵士たちのカメラを嫌う態度もリアリティたっぷりで、 青年は途中からヘルメットに仕込んだCCDカメラに切り替える。 問題のシーンは赤外線映像で盛り上げたつもりが、 逆に [REC] っぽくなってしまったかな。

この手法の欠点として、 事実をそのまま切り取る体裁であるため、 メッセージやポイントが曖昧になることが挙げられる。 それは見た者が それぞれに考えてくれということかもしれないが、 自分なりに一言述べるなら、 どっちがテロリストかわかったもんじゃない、 ということかな。 家族をオモチャのように壊された男の独白が最も痛く残る。 。 本日公開!


リダクテッド 真実の価値 redacted (2007)
10/25〜 公式サイト&トレーラー 
ブライアン・デ・パルマ監督 ※ベネチア銀獅子 監督賞 
リダクテッド 真実の価値 [DVD][DVD]

 インクレディブル・ハルク デラックス・コレクターズ・エディション 【Amazon.co.jp 限定リバーシブル・ジャケット仕様】 [DVD] イーグル・アイ スペシャル・エディション (2枚組) [DVD] 告発のとき [DVD] 1408号室 [DVD] ハプニング (特別編) [DVD]

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10.24.2008

賢者の現実 「賢く生きる恋のレシピ」



セックス・アンド・ザ・シティ」 のサラ・ジェシカ・パーカー、 「ジュノ」 のエレン・ペイジなど、 スキャンダラス?な顔ぶれで送る "スマート・ピープル" (賢い人々) は 「サイドウェイ」 のマイケル・ロンドンらが製作し、 同じくサンダンスでデビューしたということで、 気のせいかポスターデザインまで似ている。

博識だが学生の顔も覚えない大学教授、 成績優秀ながら友だちもいない娘、 その兄は詩を書いたりしているが父からはあまり関心を持たれず、 母は数年前に他界。 '賢い人々' は裏を返せば、 現状に満足できずいつもイライラし、 そのくせ変化や妥協を恐がる '普通の人々' でもあるのだが、 そんな、 けっしてリッチとは言えない家族の元に、 好き勝手をしてきたツケで 中年になってもビラ配りや空き缶収集のようなことをやっている父の弟が金に困って転がり込んで来る。 先日のコレとは違い、 このトリックスターは本来の機能を果たしているようだ。



しかしながらニュアンスが難しすぎるのか、 コメディとしては楽しめず、 ラブも中途半端、 人々が殻を破って変わってゆく後半にややカタルシスを感じるものの、 総じて地味な、 ターゲットの狭い作品ではないかと思う。 それでも、 自分の状況にドンピシャという人が見たら、 そこはかとなく素晴らしい映画に出会ったということになるのかもしれない。 未公開で終わる可能性も濃厚だが。 。

(追記2009.9.1) 'レシピ' なんて、 いかにもな邦題がついて見事DVDスルー!!^ ^


賢く生きる恋のレシピ Smart People (2008) 日本未公開 
監督 ノーム・ムーロ 
デニス・クエイド サラ・ジェシカ・パーカー エレン・ペイジ 
トーマス・ヘイデン・チャーチ アシュトン・ホームズ 
賢く生きる恋のレシピ [DVD][DVD]

イエスマン “YES”は人生のパスワード 特別版 [DVD] マックス・ペイン (完全版) [DVD] オー!マイ・ゴースト スペシャル・エディション [DVD] ベッドタイム・ストーリー [DVD] パッセンジャーズ 特別版 [DVD]

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サイドウェイ(特別編)サイドウェイ(特別編)
ポール・ジアマッティ, トーマス・ヘイデン・チャーチ,
ヴァージニア・マドセン, アレクサンダー・ペイン監督

Amazonで詳しく見る

10.20.2008

本当は君も 「星から来た男」



"スーパーマンだった男" という原題、とくに '・・だった' という部分に何かを感じて見たわけだが、コンセプトは秀逸ながら映画としての出来はまあ平均的な韓流といったところ。今回のチョン・ジヒョンは映像制作会社のディレクターということで、髪なんていつもクシャクシャという殺風景な役柄。'元' スーパーマン役のファン・ジョンミンは好演だったのではないか。

人助けをして回っている、自称スーパーマン。頭にクリプトナイトを埋め込まれて今は能力を使えないが、自分がスーパーマンであることを忘れないために人を助けるのだと言う。女は、この男を追うドキュメンタリー番組制作のために同行するうち、しだいに男の過去を知ることになる。


"誰しもが特別な力をそれぞれに持っているのに、そのことを忘れている" "過去は変えられないが未来は変えられる" "そのために必要なものは大きな力ではなく、小さな鍵である" ・・ そんな素敵なメッセージが詰まった良作、現在、見る機会は少ないようだがそのうちDVDになると思われるので、見かけたらちょっと思い出してほしい。

 韓流シネマフェスティバル 
星から来た男 A Man Who Was Superman (2008韓国)
監督 チョン・ユンチョル 
ファン・ジョンミン チョン・ジヒョン 

10.19.2008

ヒーローとトリックスター 「悲しみが乾くまで」



一人の人間の起承転結の '結' が、 残された者たちの '起' となって新たな物語が始まる。 最愛の人を亡くしてからの日々を描くという点では公開中の 「P.S.アイラヴユー」 などともよく似ているが、 あちらはラブコメ的ノリで、 こちらは薬物依存などもからめ大まじめだ。

スサンネ・ビア監督はデンマークからハリウッドに招かれてこの作品を撮ったようだが、 ベニチオ・デル・トロが気に入ってしまったのか、 シナリオ的にはトリックスターであるはずの '個性顔' のジャンキーがむしろ主役になっている印象さえ受ける。 手持ちカメラとクローズアップを多用する演出は、 ともすれば物語から遊離して、 意味深な空白をいたずらに強調しているだけのようにも思えるが、 ハリウッドでもマイペースを貫いてますよ、 ということはわかった。 ハル・ベリーは "いままで会った中で一番美しい女性" というセリフに反して、 全編を通して 'お疲れ顔' だ。

ヒロイックな死を遂げる夫、 残された妻と子。 葬式には夫の親友も現れるが、 未亡人はこの男を毛嫌いしている。 男はヘロイン中毒で、 スモーカーで、 狭いアパートに住んでいる。 しかし夫にとっては幼なじみで生前も、 ときには家族を放ったらかして遊ぶくらい仲がよかった。 男は親友の家に、 親友が残した家族とともに住むことになるが、 やがて未亡人はこの男の魅力に気づきはじめる。

夫は生前、 妻に内緒で子供に学校をサボらせてまで白黒映画特集に通ったというエピソードがあるが、 なかなか素敵な子供とのつきあい方だ。

原題の "火事で失ったもの" は喪失感の象徴というよりは、 生前の夫の言葉 " 燃えたのはただのモノ、 君たちが残っているから大丈夫" が代弁していると言えるだろう。 株価暴落のアメリカの '転' を予言していると言えば言いすぎかもしれないが、 何はともあれ、 しっとりした映画が観たくなったらお薦めだ。



悲しみが乾くまで (2008アメリカ・イギリス)
THINGS WE LOST IN THE FIRE  公式サイト&トレーラー 
製作 サム・メンデス 監督 スサンネ・ビア 
ハル・ベリー ベニチオ・デル・トロ デビッド・ドゥカヴニー 
アリソン・ローマン オマー・ベンソン・ミラー