結論から言うと、 気に入った! ボブ・ディランの伝記、 あるいはオマージュなのだが、 そこはクセ者監督トッド・ヘインズ、 普通には描かない。 何とディランを6人の人格に分裂させ、 時代も繋がりも関係なく2時間15分のシークエンスにぶち込んだのだ。 オムニバス映画などによくあるように、 ちらっと小物がリンクしていたりはするが、 ディランのアイデンティティを統合するのは貧乏揺すりぐらいのものか。 フェイクドキュメンタリーは流行りの手法だが、 これはドキュメントをあえてフェイクにしていると言える。 しかし映画のラストで語られるように、 真に自由に生きるとはこういうことなのかもしれない。
さらに興味深いのは、 分裂した人格の一つであるロックスターとしてのディランを演じるのはケイト・ブランシェット、 女性が演じているのだ。 最初、 声はアフレコかな、 それにしては違和感ないな、 ブランシェットってこんな声だっけ・・ とか考えてしまった。 監督の思うつぼ、 まんまとマジックに引っかかってしまったわけだが、 ブランシェットの役者っぷりもあって、 映画をより印象深いものにしている。 ブランシェットのみならず、 6人のディランがそれぞれに印象深い。
ディランを扱うというのは それなりに覚悟がいったと思う。 ましてや監督は自分と同世代なのだから、 リアルタイムで知っているのは彼の後期だけではないか。 とすると半分以上はあの時代へのスノビッシュな憧憬でしかない。 にもかかわらず、 いやだからこそ、 非常に魅惑的なトリップが味わえる。 ディランのオリジナルにカバーも混ざるが、 当然ながら音楽にも圧倒される。 ( フォークかロックか? むしろ 元祖パンクではないか、 ディランって・・ ) そして何よりこの映画で上手く描けていると思うのが 'ブーイング'。 分裂したどのディランもが奇しくも人々の非難の目、 非難の声に晒され、 6人6様に痛々しい。 監督が自覚的かどうかはわからないが、 もしかして過去の作品で受けた監督自身へのブーイングの嵐が肥やしとなっているのかもしれない^ ^ 娯楽映画しか見ないというのでなかったら、 ぜひご一見あれ。
アイム・ノット・ゼア I'M NOT THERE (2007) 日本公開2008
脚本・監督 トッド・ヘインズ 公式サイト&トレーラー
(右上 photo の順)
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