一人の人間の起承転結の '結' が、 残された者たちの '起' となって新たな物語が始まる。 最愛の人を亡くしてからの日々を描くという点では公開中の 「P.S.アイラヴユー」 などともよく似ているが、 あちらはラブコメ的ノリで、 こちらは薬物依存などもからめ大まじめだ。
スサンネ・ビア監督はデンマークからハリウッドに招かれてこの作品を撮ったようだが、 ベニチオ・デル・トロが気に入ってしまったのか、 シナリオ的にはトリックスターであるはずの '個性顔' のジャンキーがむしろ主役になっている印象さえ受ける。 手持ちカメラとクローズアップを多用する演出は、 ともすれば物語から遊離して、 意味深な空白をいたずらに強調しているだけのようにも思えるが、 ハリウッドでもマイペースを貫いてますよ、 ということはわかった。 ハル・ベリーは "いままで会った中で一番美しい女性" というセリフに反して、 全編を通して 'お疲れ顔' だ。
ヒロイックな死を遂げる夫、 残された妻と子。 葬式には夫の親友も現れるが、 未亡人はこの男を毛嫌いしている。 男はヘロイン中毒で、 スモーカーで、 狭いアパートに住んでいる。 しかし夫にとっては幼なじみで生前も、 ときには家族を放ったらかして遊ぶくらい仲がよかった。 男は親友の家に、 親友が残した家族とともに住むことになるが、 やがて未亡人はこの男の魅力に気づきはじめる。
夫は生前、 妻に内緒で子供に学校をサボらせてまで白黒映画特集に通ったというエピソードがあるが、 なかなか素敵な子供とのつきあい方だ。
原題の "火事で失ったもの" は喪失感の象徴というよりは、 生前の夫の言葉 " 燃えたのはただのモノ、 君たちが残っているから大丈夫" が代弁していると言えるだろう。 株価暴落のアメリカの '転' を予言していると言えば言いすぎかもしれないが、 何はともあれ、 しっとりした映画が観たくなったらお薦めだ。
悲しみが乾くまで (2008アメリカ・イギリス)
THINGS WE LOST IN THE FIRE 公式サイト&トレーラー
製作 サム・メンデス 監督 スサンネ・ビア
ハル・ベリー ベニチオ・デル・トロ デビッド・ドゥカヴニー
アリソン・ローマン オマー・ベンソン・ミラー
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2 コメント:
こんばんは!お久しぶりです~^^
これ何気に役者が揃ってるのですね。デヴィッド・ドゥカヴニーまで(笑)。凄いです。
スサンネ・ビア監督、デンマークの人だそうですが、手持ちカメラとクローズアップ多用でついラース・フォントリアーを思い出してしまいます。デンマークだとドグマ95なんて戒律も思い出すのですが、似てたりするのでしょうか?
最近、昔のキワモノ映画ばっか観てます。ファンタズムとか(爆)。
温故知新の温故ばっかりで、知新がないのですよ~(笑)。
ガツンと応援いきますよー♪凸
>umetraman さん
コメント、応援ありがとうございます!!
ビアさん(本当はビエールかな)、 確かにドグマ95に名を連ねてる監督ですね。そもそもアンチハリウッドな戒律ですよね。だからハリウッドで撮るときに、どこまで意識しているのかはわかりませんが、手持ちとかオールロケもいまではそんなに珍しくなくなったので、すでにドグマは一般化したということでしょうか。トリアーほど凝った感じはしませんが、カメラがじーっと見つめてる雰囲気は独特です。
さすがにハリウッド作品と思わせるのは、やはり役者の豪華さですね。
昔のキワモノ^ ^ 1しか見てないですがファンタズムは好きです。インスピレーションあふれる作品です。また新作も行ってください〜
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