1.15.2011

岩は動かず 「127時間」



コーディングやら何やらで忙しくてあいてしまったが、 ひさしぶりに見た映画がコレ。 日本公開はまだ日程も決まってない噂のダニー・ボイルの新作。 ロッククライミングのアクシデントで岩に腕を挟まれてしまった人が、 約5日間の孤独な格闘の末、 自ら腕を切断して脱出を果たしたという実話モノ。 想像するだけでも痛そうで こんな目には遭いたくないが、 考えてみればウェブサイト構築や javascriptをあれこれやって、 IEだけ動いてくれない~なんて もがいているのも ある意味では同じかもしれない^ ^

だが帰結はわかってるし、 場面の変わらない状況が延々と続くため映画化には一工夫いると思われる。 始まりは軽快な調子で、 これから悲惨な思いをするのがわかっているホラー映画を見る気分。 岩の割れ目に閉じ込められてからは回想や幻想シーンになるのだろうと予想したら、 その通り。 ダニー・ボイル流によくボイルされている?が微妙に物足りない印象が残った。

よくボイルされているだけに惜しい気もするが、 足りないのが何かを考えてみたら それは、 深夜に一人黙々と作業をするときの静けさやバカさ加減なのではないかと。 意識がモウロウとしてくる感じはさすがに上手いが、 闇と静けさ、 悲惨すぎる状況を笑ってしまうような味わいがもっと欲しかった。

たった一人 岩に腕を挟まれた状況の中、 誰にも行き先を告げずに来たし、 携帯も電波の届かない場所、 水も残りわずか。 手元にあるのはカメラやロープ、 そしてスイス・アーミーナイフのようなものだけ。 これでどうやって腕を切るのかと思っていたが、 こんな風にやるのか・・ 勉強になるな。 。 いやいや、 そんな手順は覚えたくない^ ^

動悸が激しくなるなか回想に逃避しながらも、 ふと目を覚ますと目の前の岩は動かずそこにある。 考え、 手段を講じなければ、 死ぬしかない。 一人の人生の小ささと大きさを同時に実感したというか、 あれこれ言いながらも見ごたえのある1本、 乞うご期待。



127時間 127 HOURS (2010アメリカ・イギリス) 日本公開2011.6/18~
監督 ダニー・ボイル 脚本 サイモン・ボーフォイ  公式サイト 象のロケット 
ジェームズ・フランコ アンバー・タンブリン ケイト・マーラ 
クレマンス・ポエジー 
127時間 (ダニー・ボイル、 サイモン・ビューフォイ 監督) [DVD][DVD]


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1.08.2011

髪を切るとき・・ 「塔の上のラプンツェル」



タランティーノも去年のベスト5に挙げていたとか いないとかのディズニーアニメの新作。 歌うと光り、 時間を戻してしまう魔法の金髪を持っていたため、 少女は塔の上階で幽閉生活を送ることに。 しかし18才になったとき、 彼女の中の冒険心は閉じ込められることを拒否し始める。

お話は王道ながら、 髪が光るなどアイディアは最近の映像表現向きか。 ややダークそうな雰囲気はディズニー作品の中では多少そそられたが、 見てみたらそれほどダークでもなかった。 カメレオンをはじめいろんなキャラが登場するが、 作画の特徴として登場人物のオデコが全般に狭い。 それはなぜかと考えてみたが作風としか言えず、 しかし上映中も人物のオデコばかりに意識がフォーカスしてしまった。

ラパンゼルのその狭いオデコから生えた長い髪は身長の何倍もあり、 切ると魔力が消えてしまうために伸ばしっぱなし。 しかしあるとき、 それは切られることになる。 なくなってしまったかに見えた魔力は実は髪の毛に備わっていたのではなく、 自分自身に宿っていたことを知るときハッピーエンディングは訪れる。 3月、 新しい環境に向けて自分を変える季節にふさわしいロードショーか。 乞うご期待。



塔の上のラプンツェル Tangled (2010) 日本公開3/12 公式サイト・予告
監督 パイロン・ハワード+ネイサン・グレノ  象のロケット 
マンディ・ムーア ザカリー・リーヴァイ 

1.03.2011

初めて見る朝日 「トロン : レガシー」



遅ればせながら見た。 ダフト・パンクが DJしてたね^ ^ バイクのゲームなんかも懐かしい。1982年の 「トロン」 は印象的な作品だが、 どちらかと言えばキワモノだった。 あまり意識しないがディズニー版のサイバーパンクでもあったわけだ。 続編モノのリソースとしては いいものが残されていたものだが、 30年近く経ってみればキワモノがすっかり王道になっていて、 時代の流れとは不思議なものだなと改めて思う。 今回のウェアは太いラインが暗闇に浮き出てキレイだが 「仮面ライダーファイズ」 のようでもある。 白いラインはデルタか。

正直、 期待したほどではなかったが、 オリヴィア・ワイルド扮するクオラはちょっとよかったね。 ネタバレするけど、 デジタル世界で生まれた奇跡を現実世界に連れ出してしまうというのは、 続編でもできそうなドラマチックさだ。 朝日を見たことのないクオラにフリンの息子が説明する。 "それは暖かく まぶしくて 美しい"・・ 彼女は二人乗りのバイクから生まれて初めての朝日を見る。

そしてジェフ・ブリッジス。 前作もこれジェフ・ブリッジスだったんだな、 ほとんど覚えてないけど。 。 30年後の二役でクルーのときはデジタル整形したような若さが不思議な雰囲気。 グリッドを作った彼だが、 電脳世界は もはやグリッドという気がしない。 今のサイバーワールドは、 リッチコンテンツが山積みされた宅配便のベルトコンベアみたいではないか。 すでにレトロフューチャーとなったサイファイ作品を象徴するかのように、 子供の頃のサムの部屋には初代マッキントッシュが置かれている。

もしトロンが新シリーズとして製作されるなら、 もちろんタイトルは変えなくてはいけないが、 ギーク版の 「20世紀少年」 のようになれば面白いのではないかと。 懐かしいコンピュータなんかが次々出てきた日には、 ATARIファンのマシューもきっと見に行くことだろう^ ^



トロン : レガシー TRON : Legacy (2010) 12/17~ 公式サイト ↑ こちらファイズ^ ^
監督 ジョセフ・コシンスキー 音楽 ダフト・パンク  象のロケット 
ギャレット・ヘドランド ジェフ・ブリッジス オリヴィア・ワイルド 
ボー・ガレット マイケル・シーン ブルース・ボックスライトナー 

1.02.2011

窓・・ 「スイートリトルライズ」



たまには俺だって、 こういう映画を見てもいいだろう^ ^ 結婚して数年もすれば誰もが、 こうした夫婦の機微を経験するに違いない。 概ね映画としてもよくできている。 DINKSなんてマーケティング用語も思い出すし、 原作にはバブリーな匂いの名残を感じるが、 ここに描かれているような、 高度成長期の日本が簡単には追いつけないと言われたヨーロッパ的洗練と成熟は、 不況と言われる日本の一方で すでに普通の感覚になったのかもしれない。

こだわりのあるインテリアに囲まれ、 毎朝 柱時計のネジを巻こうが、 サイフォンでコーヒーを入れようが、 ポーチドエッグの朝食を作ろうが今や誰もツっこまないだろう。 それでも "この家には恋が足りない" と言われると "声が足りない?" と聞き間違えるかもしれないし、 恋人のためにテディベアを探しにくる男も珍しいに違いない。 "人間って暖かいのね 忘れてた 私の目当てはあなたの体温かもしれない"・・ このあたりは やはり、 こそばゆい。 。

ガラス窓の内側の安全な空間に住み、 ときどきは窓を開けて冒険に出かける。 セーフティネットとしての夫婦と、 恋というリスクをバランスされることが大切なのよ、 そのためには嘘も方便。 そういう内容ではあるが、 多少退屈なのは、 それはどこまで行っても予定調和でしかないということ。

美人テディベア作家とIT関連のサラリーマン・・ テディベアを作っている人は一人知っているが、 へえ、 こんな風に作るのかと。 IT関連と言ってもIDカードを首からぶら下げているだけで事業内容には触れられず。 夫婦であってもそれぞれの時間は尊重し、 家では部屋に閉じこもってゲームをする夫を別室から携帯で呼び出す妻。 ときどき訪ねてくるマネージャや夫の妹に さしたる色づけもないところは、 淡々とした日々を描くための演出とも言える。

自分的になぜか印象的だったのは、 二人の女がミルクやミネラルウォーターを豪快に飲むところ。 そして犬の飼い主である一人暮らしの婆さんの存在感。 その昔 庭に生えたトリカブトで夫を殺したと語る婆さん、 浜辺に打ち上げられた心中死体の足を結ぶ紐、 二体のテディを結ぶリボン。 これらは安全な生活のなかに潜むリバーシブルな生と死を上手く表現しているように思える。

中谷美紀は義理の妹に "留璃子さん キレイ" と言われるわりに何となく老けた感じがし、 夫にアプローチする大学の後輩である池脇千鶴に、 クラクラっと傾くものがないのは玉に傷か。 。 まあ、 そもそもこの映画は男をターゲットにしてないのだろうが。


スイートリトルライズ (2010日本) 公式サイト 象のロケット 
監督 矢崎仁司 原作 江國香織 
中谷美紀 大森南朋 小林十市 池脇千鶴 安藤サクラ 
大島優子 黒川芽以 風見章子 
スイートリトルライズ [DVD][DVD]

大森南朋 さもあらばあれ SWITCH Vol.28 No.11(2010年11月号) パレード (初回限定生産) [DVD] ヴァイブレータ スペシャル・エディション [DVD] 鍵がない デラックス版 [DVD]

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1.01.2011

娘はフーターズで・・ 「アンストッパブル」



奇しくも去年のラストエントリーで "時間を止めて" みたいなことを書いたら、 そうは問屋が卸さないとばかりに新年の初エントリーはコレになってしまった^ ^ 問屋が卸してくれないんだったら中抜きすればいいじゃん、 ということで、 さまざまなものが電子化する時代、 今年のテーマは ずばり "アンストッパブル"。 何も考えてなかったのでちょうどいい、 これで行きたいと思う^ ^

もうすぐ公開のこの映画は、 今しきりにウザいバナー広告展開中だが、 何だ今どき列車?なんて思っていたら、 これがどうして、 なかなか王道の見応え。 ひさびさのトニー・スコット監督だが、 きっちりと仕事をするプロフェッショナリズムを感じた。 バスが暴走するというのは ずいぶん前にあったが、 列車とは。 リメイクなのかなと思わせる古めかしさに、 あえて振ってきたか。 。 暴走列車を止めるというのも、 考えてみたら何かしら象徴的な気はする。

物語的には雇用問題をからめたりするのは今っぽいが、 上層部の甘い判断、 家庭問題、 それらをいっきに解決してくれる一点突破型のありきたりなプロット。 しかしまあ、 ちょうどいい感じの ありきたりさというか、 正月早々ムズカシイ映画観るのもなんだし的な良さはある。 それ以上でも以下でもないが、 フーターズTOKYO もオープンしたことだし (デンゼル・ワシントン扮するベテラン機関士の娘が、 エロい制服で有名なこの店でバイトしている) 密かに応援してやりたい気分^ ^

ソーシャル・ネットワーク」 をはじめ当ブログでは すでに去年中にエントリーした作品が次々と日本公開を控えているが、 手に汗握り、 最後にじんわりさせるだけの映画もいいもんだと・・ せっかくアートっぽいヘッダーグラフィックに替えたのに、 能天気な始まりになって残念ではあるが^ ^ ちなみにこのヘッダーは、 ふと見かけたコンテンポラリーアートを拝借、 というかパクってます。 すいません、 しばらくだけ貸してください^ ^ ノイズだけのスクリーンを見つめるなんて、 カッコよすぎ。 。 ということで何はともあれ、 明けましておめでとうざいます。 今年も夜露死苦!


アンストッパブル UNSTOPPABLE (2010) 日本公開2011.1/7 
監督 トニー・スコット   公式サイト・予告 象のロケット 
デンゼル・ワシントン クリス・パイン ロザリオ・ドーソン