4.12.2012

選択しないという選択・・ 「ミスター・ノーバディ」



本日は見逃したものをDVDで。 評判は聞いていたが、 何となく独りよがりの、 映像表現だけの作品かなと思って忘れていた。 半分はその通りだったが、 あと半分は、 予想外に印象に残りそうな作品だった。 何かを選択するということは他方を捨てるということでもあり、 もしもあの時こうだったら、 というのはやはり映画的なテーマに違いない。 寡作な監督とのことで、 前作も見てはいるようだが記憶にない。 恐らくは監督自身、 選択のできない人なのではないかという気がして共感を覚える。

人の命が永遠となった近未来、 最後のモータル (死ぬ人) となったニモ。 その死に際は全世界に中継されている。 ニモは医師の催眠術で、 あるいは飛び込んできたジャーナリストの問いに答えて過去を振り返るが、 物語はまるでパラレルワールドのようだった。 離婚を決めた両親に、 列車の出発間際に聞かれる。 さあ、 どっちについてくるの?

初恋の女の子、 他にも気になる女の子。 彼女と結婚していたら、 あるいは彼女だったら。 その帰結が平行線のまま語られる。 そして恐らく自分はすでに事故で死んでいる。 では、 ここにいるのは誰なのか? ・・誰でもないのだ。 この世界自体が、 少年だった自分の想像の世界にすぎないのだ。 そしてビッグバンの反対であるビッグクランチによって、 時間は逆行する。 ざまあ見やがれとばかりに。

そんな哲学的なストーリーが斬新な映像表現と音楽で描かれる。 「ベンジャミン・バトン」 や 「ツリー・オブ・ライフ」 とオーバーラップする部分もあるが、 もっとわかりやすいのとも言えるのが取り柄か。 以下、 自分的にグッと来たのはこんなセリフ (意訳) ・・

人間が死んでいた頃の世界? ・・空気を汚す車が走り、 みなタバコを吸い、 肉を食った。 毎日は、 フランス映画のように大して何も起こらず。 人間的生殖行動もバンバンやっておったよ。ハハハハ・・ お前に私はどう見える? 頭のおかしくなったジジイか? ごちゃまぜの記憶喪失者か? 日々の糧にあくせくと働いた男か? それは私じゃない。 私は・・ 半ズボンをはいた9才の少年だ。 列車より速く走り、 背中の痛みもない。 15才の青年でもある。 恋する15才の・・




ミスター・ノーバディ (2009フランス・ドイツ・ベルギー・カナダ) 日本公開2011 
Mr.NOBODY 監督・音楽 ジャコ・ヴァン・ドルマル  象のロケット 
ジャレッド・レト ダイアン・クルーガー サラ・ポーリー トビー・レグボ 
リス・エヴァンス ナターシャ・リトル 

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