4.21.2009

あの時代・・ 「アメリカン・ニューシネマ」



60年代後半、 大金をつぎ込んだ映画が当たらず、 ハリウッドシステムは崩れていった。 スタジオは企業に買収され、 その結果として監督の権限が拡大した。 ロック、 ヒッピー、 ベトナム戦争、 ウーマンリヴ、 黒人運動・・ 同時代を生きる監督は観客が求めるものを知っており、 映画会社は監督の好きにさせることで観客を取り戻せるという手応えを持った。 余った予算とスケジュールでもう1本撮ってよ的な低予算作品は、 学生街で外国映画を観ていた若い監督志望に門戸を開き、 じゃあゴダールみたいな映画を撮ってやる、 と。 そうしてアメリカの新しい映画は始まった。 銀幕のスターよりも等身大の俳優が数多く誕生、 娯楽作品に飽きた観客は、 やがて映画に意味を求めるようになった。 どこかで見たような物語や語り口は喜ばれず、 斬新な試みとリアルな表現が受けた。

自分などにとっては、 幼い頃の映画体験も含めまさにこれが映画なのだが、 蒼々たる顔ぶれが自らの体験を振り返って綴られる1時間50分は、 当時の熱気を伝えてくれると同時に、 あらたな発見をもくれる。 70年代のアカデミー候補リストは他に例を見ない異色作のオンパレードとなっているそうだが、 そんな時代が再来してくれることを望みながら、 それはありえないと冷めている自分もいる。

70年代の終わり、しだいに観客はリアルな現実を描く映画に疲れ、 ここに食い込んだのが 「ジョーズ」 そして 「スター・ウォーズ」 だったわけだが、 それらの大ヒットは奇しくもハリウッドをよりビジネス志向に変えてゆく。 この方向はいまなお顕著であり、 海外から注目の監督を引っぱってくるというクセも、 この70年代の特異な成功体験に基づいているのかもしれない。 低予算で作家性の高い映画はインディペントに受け継がれたというようなまとめ方になっている。 70年代の映画に思い入れのある人はもちろん、 これから映画製作に関わりたい人にもぜひ見てもらいたいドキュメンタリーだ。 上の画像は大好きな作品 「アリスの恋」 (1974) で、 他にも 「真夜中のカーボーイ」 をはじめ名作、 衝撃作が何本も登場する。


アメリカン・ニューシネマ 反逆と再生のハリウッド史 (2003) 日本未公開 
A DECADE UNDER THE INFLUENCE *ドキュメンタリー 
監督 テッド・デミ+リチャード・ラグラヴェネーズ 
ロバート・アルトマン ジョン・G・アヴィルドセン ウォーレン・ベイティ 
リンダ・ブレア ピーター・ボグダノヴィッチ ピーター・ボイル 
マーシャル・ブリックマン エレン・バースティン ジョン・キャリー 
ジョン・カサヴェテス ジュリー・クリスティ フランシス・フォード・コッポラ 
ロジャー・コーマン ブルース・ダーン クリント・イーストウッド 
ルイーズ・フレッチャー ジェーン・フォンダ ピーター・フォンダ 
ミロス・フォアマン ウィリアム・フリードキン パム・グリア 
ゴールディ・ホーン モンテ・ヘルマン ジミ・ヘンドリックス 
デニス・ホッパー ミック・ジャガー マーティン・ルーサー・キング 
パイパー・ローリー シドニー・ルメット ポール・マザースキー 
マイク・メダヴォイ ポリー・プラット シドニー・ポラック 
ロナルド・レーガン ロバート・レッドフォード ジェリー・シャッツバーグ 
ロイ・シャイダー ポール・シュレイダー マーティン・スコセッシ 
シシー・スペイセク ロバート・タウン ジョン・ヴォイト 

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