3.29.2009

愛なき情熱 「胡蝶の夢」



イージーとは言えないにしても脚色されすぎた邦題。 原題の "若さなき若さ" では雰囲気がないと見たのか。 しかし世界ではそれで通っているののだから、 違和感を覚えずにはいられない。 こういうアレンジは、 ある意味、 観客をバカにした行為だろう。 'コッポラの' を足しているのも、 保険のつもりか。 配給側の自信のなさをアピールしてるにすぎないことがわからないのだろうか。

10年ぶりにメガホンを取ったコッポラには "キューブリックほどではない" だの "ゴダールを始めた" だの罵声あるいは賛辞が浴びせられているようだが、 期待の裏返し、 あるいは すり替えに他ならない。 でもゴダールという例えは何だ? 難解で哲学的だからか。 しいて言うなら、 お金のかかったゴダールだろう。

老人が若返ったりするものだからベンジャミン・ボタンの二番煎じのように感じる人もいそうだが、こちらの方が1年以上早い。 タイトルなどから 「潜水服は蝶の夢を見る」 を連想する人もいそうだが、 "ドラえもんの最終回は植物人間となったのび太の夢だった" という都市伝説の方が近い。 IMDbのコメントの1件は笑えた。 ティム・ロスはエルヴィス・プレスリーと誕生日が同じで、 原作が出版されたのもプレスリーの命日だなどと、 生まれ変わり的な妄想を刺激されたようす。 いろいろと妄想するのもわからなくはない壮大な不思議物語ではあるが。

で自分はどうかというと、 エンディング以外は面白かった。 それほど難解だとも思わない。 言語の起源や人類の始まりにまで旅をしてきて、 この先にあるのが水爆やミュータントという発想が微妙にカワイイ。 古典もSFも一線上に繋げてしまうことは好意的に評価する。 こういう原作を取り上げたコッポラのアンテナも鈍っていないように思う。 映像も美しいし、 とくに冷めるような部分もなかったのだが 特別の驚きもなかった気がする。 IMDbでは誰かもう一人上手いことを言ってたな。 "Romance without love" 愛なき情熱・・ けっして悪くない作品なのに、 このフレーズが言い得て妙なのはどうしてだろう。 3本目の薔薇をどこに置くかが、 いまいちキマらなかったからだろうか。


コッポラの胡蝶の夢 (2007) 日本公開2008 公式サイト&トレーラー 
YOUTH WITHOUT YOUTH
監督 フランシス・フォード・コッポラ 原作 ミルチャ・エリアーデ 
ティム・ロス アレクサンドラ・マリア・ララ ブルーノ・ガンツ 

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