10.09.2009

恋の四季はめぐる 「(500)日のサマー」



公開時、 アメリカでも劇場数は少なかったらしい。 ところが、 面白い!とクチコミで評判になり大ヒットとなった作品。 非常に気になっていた映画で、 一足先に見ることができて感激のエントリー^ ^

主人公の青年は、 サマーという女の子と500日つきあう。 少し変わった娘だけど、 そこがまたいいと青年は夢中になる。 出会い、 盛り上がり、 いろいろな出来事があって、 そして・・ と一見、 普通のラブストーリー。 でもポイントは、 ハッピーな頃とサッドな時期が交互に編集されていること。

映画が始まると、 すでに別れの一歩手前。 だが次には、 出会った頃の初々しい二人。 しだいに接近して、 少しづつすれ違い、 口論が増える。 かと思えば最高潮の二人。 熱いシャワーと冷水を交互に浴びるかのような構成、 こだわりのある音楽。 なかなかフレッシュな映画体験だった。

青年トムには "BRICK" のゴードン=レヴィット、 そしてサマーには、 不思議娘デシャネルさん。 グリーティング・カードを作る会社に勤めるトムは、 新しく入社してきたサマーに恋する。 古い表現をすれば、 いわゆるオフィスラブだ。 トムはブリティッシュロック通でロマンチスト、 彼女のことが気になってもアプローチはせず、 二人が接近するのは社員参加のカラオケ大会、 いわゆる飲み会なのだ。 このあたり、 アメリカと日本のオフィスラブは似たようなもんだ。

サマーは "恋なんて おとぎ話" と語るタイプだったが、 思いを寄せられるのは まんざらでもない様子で、 しだいにホットになる二人。 だが恋に落ちたのはトムのほうだけで "しゃらくさいカードの制作は仮の姿 建築家をめざしてる" とカッコをつけ、 彼女の一挙一動に一人喜んでは落ち込む彼だったが、 やがてサマーに変化が訪れる。 後半の映画デートで見るのは 「卒業」 だが、 彼女はこの映画に予想外に感動する。 ロマンチックな変化が彼女に起きていたのだ。 かたやロマンチストだったはずのトムは、 モノクロのフランス映画を観てニヒリストになってゆく。

レコードショップ、 IKEAの家具店、 映画館、 バー、 部屋、 友人のウェディング、 建物が美しく眺められる高台・・ それがデートスポットなのだが、 このへんの普通っぽさは、 一昔前の恋愛物っぽくて親近感すら覚える。 アメリカも変わったなという気がするが、 強がっていただけで地はこんなものだったのかもしれない。 画面を二分割して、 期待と現実を対比させたり、 一瞬 「スター・ウォーズ」 のハリソン・フォードが映るなど、 飽きさせない。 カラオケでデシャネルが甘ったるく歌う "シュガータウンは恋の町"、 ゴードン=レヴィットの熱唱もお楽しみ。

トムが恋愛相談をする相手は、 小学生の妹なのだが、 このあたりは 「ピンクパンサー2」 の脚本家の微妙に狙い過ぎなところかもしれない。 人の大勢いる公園で 'チン●' と叫ばせてみたり、 サマーがアダルトビデオのプレイをやってみようと言うなど下ネタも満載だが、 そういったギャグとナイーブな男心のリミックスのような作品と言えるだろう。

こうして書くとテンション低めだが、 たぶんネタバレしないようにしてるせいだ。 だが ひさびさに "映画って、 いいものですね" と思える作品だった。 日本公開は1月。 真冬のサマー、 お楽しみに!



(500)日のサマー (2009) 日本公開2010年 1/9〜 
(500) DAYS OF SUMMER  公式サイト&予告 
監督 マーク・ウェブ 脚本 スコット・ノイスタッター+マイケル・H・ウェバー 
ジョセフ・ゴードン=レヴィット ズーイー・デシャネル ミンカ・ケリー 
ジェフリー・エアンド マシュー・グレイ・ガブラー クラーク・グレッグ 
クロエ・モレッツ 
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(追記7/12) 時間も経ったしネタバレありの感想も聞いてみたい、 とのコメントをいただきまして、 そうだな、 参院選も終わったし、 いいか・・^ ^ とまあ関係ないですが、 ちょっと追記してみようと思ったしだい。

セリフが聞き取れなかった部分なども含め、 何回もプレイバックして通常よりかなり多く見たはず。 にもかかわらず、 どこか曖昧模糊としたものがいつも傍らにあり、 もしかいたらそれは永遠に明らかにできないのではないかと思う。 良くも悪くもそれが、 この映画の本質を言い当ててる気がする。 ある種 右脳的、 つまり恋という本能をいくらロジックで紐解いても、 なるようにしかならないさ。 そんな感じが素敵なんだと。

見る前に想像してたのは、 もっと珠玉のラブストーリー。 でも実際は、 どことなく日本の放送作家が書いたようなネタのオンパレード。 ハリウッドライクな子ネタの数々は、 それでも幸運にしてツボを得ていて、 そのコアにあるのは脚本家の 「卒業」 が好きという感性。 「卒業」 が好きだった脚本家が、 現在のギャグ的な仕事のなかでふとフラッシュバックして、 一番やりたかったものに大シフトしてしまった。 でもヒットになったので結果オーライ。 そんな部分は確実にある。

こうした突然変異体は映画、 音楽にかかわらず、 かつては日本だけで支持される傾向が強かったのだ。 日本だけでヒットした 「小さな恋のメロディ」、 あるいは日本だけで絶大な人気を誇ったバンドなどが希に存在した。 本作が日本で受けたのはある意味すごく納得がいくが、 面白いと思うのは、 アメリカで受けたということ。 自己主張して、 好きな女がいれば何度振られてもアタックしまくる。 極端に言えばそれがアメリカだったのが、 才能はあるが開花しないウジウジした男、 そのくせ降ってきたラッキーな状況には溺れやすく、 そのあげく一人エンジンを吹き上げて結果的に自己嫌悪に陥り、 バーンアウトしてはまたその灰の中から立ち上がる。 この自己陶酔的なアホ男こそは自分であると誰もが自己投影し、 アメリカにも日本にも、 恐らくはヨーロッパやその他 世界中にこうした男は蔓延してるのだろう。 こんな男を辞めたいなと思う反面、 それに代わる男性像も見当たらない。

男がそうこうしてるうちに女はしたたかにその野生の根を張っていく。 こんな世界観は非常によくわかるし、 しかも抵抗することができない。 むしろ俺はグダグダやってるから、 もっともっと翻弄してよ、 みたいな^ ^ 切ないのも500日の間、 その後は ‘秋’ がやってくるさ、 みたいな楽観主義がやっぱり心地いいのだと思う。

自分はエレベーターのなかでサマーが “それスミス?” と聞いてくるところが何とも好きだが、 それはなぜだろうと考えてみても全くわからない^ ^ 単純にその言い方が可愛いからか、 あるいは獲物が近づいてきたことに対する肉食動物の冷静な興奮か。 けっして草食系男子ではない。 でも男って元々こんなもんだ。 どんな理想的な男性像も もういらない。 そんなふうに思えるのもこの映画の美点だと思うが どうだろう。

4 コメント:

のぼんば さんのコメント...

はじめまして。

映画体験として間違いなく楽しめたし、とても好きな映画のひとつになったんですが、

この映画のフレッシュな体験。なかなか伝えるのが難しいですよね。

ひとことで言えない。

「クールな映画」というのも違う。

「泣ける映画」とも違いますし…

(泣きたくなる気持ちは思い出しましたが(笑))



初めてUSの予告編を観た時に予感がしたので、

期待を込めて、

Twitterで応援アカウント作って応援してます。

予感は当たりました。ステキな映画。

こういう映画、日本でもヒットしてほしい。

Twitterからリンク+フォローさせていただきました。

kiona さんのコメント...

>のぼんば さん
コメントありがとうございます!!

映画について書くのは難しいことですね。 いい映画ほど、よかった〜 で済んでしまい、 かつ、 それで満足です。 で、 すこし経ってから、 微妙に "観たよ" って自慢したくなる^ ^

ぐっとくる部分もたくさんありました。 わかっちゃうんで書けないんですが。 。

日本公開は早いほうですが、 それでも半年以上は遅れるので、 このタイムラグの間に冷めてしまいそうでイヤな感じではあります。 でも日本でも評判になってほしですね。

Twitterのフォローありがとうございます。 こちらからもフォローさせていただきます。 またよろしくお願いします。

kentaroharahiro さんのコメント...

はじめまして、いつも楽しくブログ拝見させていただいてます。
本作、本日DVDで鑑賞しました。
「コレ、俺やん」って思って観てましたが、そんな人がたくさんいるみたいで、意外と普遍的な感覚なんだなあ。と
もう時間がたったので、ネタバレありの感想も聞いてみたいものです。

kiona さんのコメント...

>kentaroharahiro さん
コメントありがとうございます!!
時間が経ったところでの追記をしてみました。 よかったらまた読んでください^ ^