6.08.2015

フォローしないで IT FOLLOWS



トレーラーを見ると殺人鬼モノかなという印象だが、まったく違っていて、都市伝説的な不思議エピソード。予想以上に不気味だし、フォローという現代的な暗示を含め、いろんなニュアンスが盛り込まれていながら、シンプルでオリジナリティを感じる新鮮な作品となっている。

何かがついてくる…。それは色情霊のように、たいてい裸に近い格好で、見たことのある人だったり、見たことはないがどこにでもいそうな人だったり。しかし確実に自分に近づいてくる。それに捕まるとどうなるかは最初のシークエンスでしっかり見せてくれる。これにフォローされている者と寝たら、今度それは自分をフォローしてくる。助かるには別の誰かと寝るしかないが、相手が死ん場合はまた戻ってくる。

風にそよぐ木々、プール、古いブラウン管のテレビ、白黒映画などゴシック的な引用を取り入れながら、音楽は懐かしい感じのジョン・カーペンター風だったり。かと思えば、構図などは凝っていてモダンな気がするし、スローモーションやステディカムなどもさりげなく入ってくる。そのくせ詰め込みすぎでもなく涼しげで、巧みな計算の得意なセンスのある監督といった印象。

目立ったキャストはいないものの、退屈で気だるい若かりし日の夏休みをふと思い出すような、ああホラーってこれいいんだよな、とホラー映画のアーキタイプのように自分的には思えた作品。というのは褒めすぎかもしれないが、こういう作品が今後増えてくるとしたら歓迎すべきトレンドではある。公開されるのかされないのかは知らないが、上映するならまさに今という季節だろう。そんなことを書きながらふと空を見上げると、子供の頃の早朝ラジオ体操で見た空と同じで、物悲しく爽やかな朝だ。




イット・フォローズ IT FOLLOWS (2014) 日本公開2016
監督 デビッド・ロバート・ミッチェル 
マイカ・モンロー キーア・ギルクリスト ダニエル・ゾボット 
ジェイク・ウィアリー リリ・セペ オリヴィア・ルカルディ 
ベイリー・スプライ 
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5.23.2015

中庭の木 Ex Machina



監督は眠そうな目をして、このエヴァのデザインも自分で考えたそうだが、この山奥の研究施設が外から見たらボロい小屋なのに、地下には中庭を配した空間が広がっているなど、建築にも造形の深そうな人だ。AUTOMATAのように、人類は機械生命体を生み出すのが役割で、人類の進化形こそがAIだという微妙な屁理屈はなかなかいいし、面白い映画ではあった。

CGにはお金がかかってそうだが、その分キャストは節約され登場人物はほぼ4人、ロケーションもほとんどが山小屋内というワンシチュエーション・ドラマ。世界を覆う検索エンジンもAIを作る過程に過ぎなかったと語る男は、この施設にこもって、たった一人で、なぜか女性型ばかりバージョン9.6まで完成させたという家内工業的なニュアンスも少し笑える。ブルーボックス社の優秀なプログラマーだから選ばれたという青年も、実は彼女がいなくダマされやすそうだからという理由で選ばれており、エヴァの顔も実は青年がよく見ていたポルノサイトから収集されていたなど、いい感じでB級っぽさが露呈する。

もう一人、キョウコと呼ばれる謎の寿司職人が出てくる。プロフィールでは東京出身のバレエダンサーということらしいが、映画で披露するダンスはなぜか70年代風ディスコ・ステップ。CEOはこれだけの天才でありながら、毎日のように酒に酔いつぶれるわ、ちょっと来いと言ってポロックの絵の前で「もし画家が、これから自分が何を描こうとしているかわからないなら描けない者であれば、点すら描けない」という持論を説くわで、なるほどなあと思いつつ、なぜか笑いを誘うシーンに満ちている映画だ。もちろん、いい意味で。

青年がエヴァに、描きたいものを自分で選んで描いてくれと言うと、彼女は中庭の木を描く。生まれてこの方、部屋から出たことがないからだが、そのことがなぜか可愛いと思った。AIと言えど入力される情報が乏しいとアウトプットも子供っぽい。1000年以内に人類は滅亡するとホーキング博士は語ったそうだが、対象が人間か機械かを見定めてからでないと愛せない者は、何も愛せないということだろうか。愛にあふれた人類は、やはり次の進化のカタチであるものを生み出すためのステップなのかもしれない。乞うご期待。




エクス・マキナ Ex Machina (2015イギリス) 日本公開未定
脚本・監督 アレックス・ガーランド 
ドーナル・グリーソン オスカー・アイザック アリシア・ヴィキャンデル 
ソノヤ・ミズノ 

5.09.2015

問うな “GOD'S NOT DEAD”



続けざまに何かしら書きたくなった作品、アメリカの大学での実話をベースにしているとのこと。無神論者の哲学教授が単位を人質に、学生に「神は死んだ」と本人のサイン入りで書かせる。クリスチャンの学生が孤軍これに抵抗し、最終的には教授を論破する。改宗して家を追い出される女学生、ガンを宣告される人気ブロガーなどのエピソードが平行して散りばめられる。宗教臭い話は苦手で、ともすれば自分は教授派だと思っていたところ、見ているうちにこの教授が思いっきりウザくなり、最後はロックでミサをやるようなバンドで締めくくられてちょっと軽いなと思ったが、ヘンなすがすがしさが残った。

この教授は無神論に改宗せよと言っているに過ぎず、それは無神論という名の宗教とも言え、とくに信者集めをしようというわけでもなく、勝手に信じてくれればいいというクリスチャン側の態度に好感が持てたというところか。プロパガンダ映画でもないようだが、ロックでミサ、と同様のエンタテイメント性が上手く使われているのかもしれない。しかしながら宗教というコンセプトはさておき、信仰ということについて多少なりとも考察したくなるテンションのある作品だと言える。

去年、日本公開されてはいるものの、果たして客は入ったのか。IMDbではそこそこ書き込みも多く、レビューを見て気になるのはこの映画がoffensive(攻撃的)と評されていることだ。へえ、やはりそうなっちゃうのか、とは思うものの、新鮮さを感じる作品ではあった。しっかりNOTと否定しているのに邦題はなぜ問うのか。そこだけイラついた。


神は死んだのか GOD'S NOT DEAD (2014) 公式サイト
監督 ハロルド・クロンク 
シェーン・ハーパー ケヴィン・ソーボ デヴィッド・A・R・ホワイト 
ハディール・シトゥ コリー・オリバー トリシャ・ラガチェ ニュースボーイズ 

5.08.2015

苦いシロップ “SYRUP”



前回のエントリーから17本め、ようやく何か書いてみたい作品に出くわした。ポスターはロシア版がオシャレだったのでこれを使うが、原題はシロップ。炭酸飲料のマーケティングにまつわる、古く言うと広告代理店もの。ネーミングやイメージ戦略がすべて、それを取ってしまうとただのシロップと水というニュアンスの映画、日本未公開ながらこの邦題はもう触れたくもないセンスだな。テキトーなタイトリングという行為自体が映画のテーマに反してるとか高尚なことを言わないまでも、ようするに見てもいない人が付けてるんだろうな。商品を知らずに売るのは詐欺以下と言えるだろう。

どこがよかったかと聞かれても、なんかよかったとしか言えないたぐいの映画ではある。アンバー・ハードもキレイだし、シャイロー・フェルナンデスというあんちゃんもいい感じ、演出も上手いと言えそうだが、ネタは新しいとも言えないし、ラストもつまんないかもしれない。えー、じゃあどこが?ということなんだけど、どこなんだろ、わからない^ ^

フェルナンデス演じるスキャットという才能、およびバカさがいいんだろうな。自分にもあてはまると思っちゃうんだろうな。アンバー演じるシックスというキャラもいいし、ラフな出会いもいい。そんな二人は戯画化されたスピード感のなかでは逆にマイペースで素朴というところがいいのかもしれない。

けっきょく説明できず、でも面白かったしシビれる一瞬があったとだけは言えるし、映画ってそれで十分だろということを確認できる作品かもしれない。邦題とダサいパッケージには目をつぶってレンタルでもしてほしい。



マイ・デンジャラス・ビューティー SYRUP (2013) 日本未公開
監督 アラム・ラパポート 
原作 マックス・バリー 
アンバー・ハード シャイロー・フェルナンデス ケラン・ラッツ 

4.08.2015

一人目覚め、暗躍する者 Nightcrawler



警察無線を傍受して事件現場にいち早く駆けつけ、映像を撮影し、それをテレビ局に売るという商売をしている人たちをナイトクローラーと呼ぶそうだ。スクープとかエクスクルーシブと言われるものも、たいていは偶然に撮られたものではなく、こうした業者の下支え、あるいは暗躍があってのことらしい。合法かどうかも怪しいグレーゾーンな映像を数百ドル単位で買い取る局側も、過酷な視聴率競争、あるいは自分が生き残れるかどうかという必要性に迫られての予算内の出費だ。

盗んだ金網を鉄クズとして売って日々をシノいでいるルイス・ブルーム。経歴は不詳だが、頭はよくて低学歴なタイプか。ある日、事故現場を通りかかる。そして、そこにハイエナのようにたかってはケガ人を撮影する一団を見る。ふと思い立って、自分もこれをやろうと考える。盗品の自転車をビデオカメラに換え、事件現場に向かう。新参者は小さなカメラを笑われ、それでもアグレッシブに対象に迫る。買ってくれる局がみつかり、警察無線のコードナンバーを理解したりとスキルを高める日々。やがて大きなチャンスが訪れ、リスクを取って勝負に出る。

当然ながら日の当たる職業ではないものの、ルイス・ブルームを一人の起業家と見ることもできる。マーケットニーズ、自己の適正の把握、新規参入、差別化、大きい物にも巻かれず、むしろ弱みにつけ込んで適正なパートナシップを結び、かつて被雇用者としては落第だった自分が雇用する側に回ると、搾取がここまで上手だったなんて。

そういう部分に共感してかどうかはわからないがIMDbでも評価は高く、自分的にもなかなかいい線をついた作品だと思う。こうした考察がないと微妙なユーモアとカーアクションだけでしかないとも言えるが、ジェイク・ギレンホールの冷たく燃えるキモさ加減もちょうどよく、就活を勝ち抜いてフレッシュマンとなり、ちょっと社会の裏が見えて冷めたような、逆に燃えてきたような人に、この夏ぜひ見てほしい映画?だ。



ナイトクローラー(原題) Nightcrawler (2014) 日本公開2015夏予定
監督 ダン・ギルロイ 
ジェイク・ジレンホール レネ・ルッソ リズ・アーメッド ビル・パクストン 

3.21.2015

あなたの息子 “SMALL TIME”



原題とまったく関係のないカタカナ邦題、「24製作陣が新たに仕掛ける」などサスペンスかと思わせるキャッチ…もうすべてがデタラメ、作品に触れる機会を奪うノイズでしかない。売るための施策であるならまだしも、作品の価値を下げてどうすんだろう。旧態依然の業界は数あれど、依然を通り越して唖然だな。

気を取り直して続けよう。予告で微妙に気になっていて、見た。内容は父と息子のちょっとしたエピソード、しかしながら、こういうニュアンスの父子ものはあまり見かけない気がする。

父は中古車のセールスマン、息子が生まれた頃は食うにも困ったが、今は友人と店を経営し、ローカルのテレビCMなども流す成功者。離婚した妻は金融マンと再婚、息子はそちらの家で暮らしていたが、高校を卒業して秋からは大学生。そんな息子がふと訪ねてきて言う。大学なんて時間のムダじゃないか、父さんの店で働きたい。

息子から人生の先輩のように慕われるのは悪い気はしないだろうが、同時に父は息子に自分が果たせなかった夢を無意識に託してしまうものだろう。戸惑いながらも息子を受け入れ、独特の商法を披露。すぐにいっぱしのセールスマンを気取りだした息子を見て戸惑いはさらに大きくなる。

ネタバレになるので以下略となるが、セールスのノウハウも面白いし、彼らを囲む人物たちもいい感じ。珠玉の、とは言わないまでも印象に残る作品だ。最後に息子は父に手紙を書く。人は金を巻き上げるだけの対象ではないこと、そして自分が何者かがわかったと。I'm your son... IMDbでも評は多くないが「こういう映画をもっと見たい」というのがあったな。同感だ。



ナッシング・バッド SMALL TIME (2014) 日本未公開
監督 ジョエル・サーノウ 
クリストファー・メローニ デヴォン・ボスティック ディーン・ノリス 
ブリジット・モイナハン