11.08.2011

庇護なき街角 X



ジャケット写真に釣られて見てしまったくちだが、 予想通り、 それほどエロくもスキャンダラスでもなかった。 Xというのは EXITの意味らしく、 検索しにくいタイトルで気に食わないが、 意外に真面目な '娼婦 現況脱出もの' ではある。

15才から街角に立ってきたホリーは、 30才の誕生日には足を洗い、 パリで暮らすことを夢見る。 幼い頃、 母に連れて行ってもらったパリ。 エッフェル塔の前で二人が写る写真を大事そうにバッグに忍ばせて。

片や母が死んで、 義父のもとから逃げてきた17才のシェイは、 ホリーとは正反対に今この街角にエントリーしてしまったところ。 ひょんなことから二人は出会い、 ヤバい事件に巻き込まれ、 逃げ、 追われ、 結局ホリーは15年のキャリアで頼れる人間は一人もいなかったことを知る。 ましてやシェイには・・。

帰るところも行く当てもないないシェイは、 偶然出会った若いタクシードライバーに助けを求める。 彼の亡き父はマジシャンで、 彼も多少たしなむと聞いてシェイは言う。 "私を消して" ・・

行き場のない話を今あらためて取り上げたポイントはよくわからなかったが、 シドニーの夜景がパリにオーバーラップしてひときわ哀しく輝いた、 とは言える。 しかし、 どうせなら行き場のない状況を切り裂いてこそ映画かなと。 陶酔型が好きな人にはいい線かも。



X -エックス- (2011オーストラリア) 日本未公開 
監督 ジョン・ヒューイット 
ヴィヴァ・ビアンカ ハンナ・マンガン=ローレンス 

11.07.2011

青いゴミ袋 TONY



特別先行上映というほどでもないし、 恐らくはDVDスルーされるか、 スルーすらされない作品だろう。 しかしまあラブコメが続いたので、 この手を一本入れておこう。 「ヘンリー」 (1986 日本公開は1992) へのイギリスからのアンサーフィルムらしいが、 そちらは見た記憶すらない。

ロンドンの社会保障生活者トニーは、 この20年間に半年ほどしか働いていない。 今どき珍しいテクノカットをして、 風貌に似合わないアクション映画を今どきVHSで観る。 殺風景な部屋で一人ぼんやり暮らして、 ときおり思い立ったようにMODELという看板のある店に駆け込んだり、 トランスのかかるクラブへ潜入したりするが、 どこへ行っても場違いな感じ。

そして物事が不都合なほうへ転がると、 すべてを消してしまう。 意外に上手な手際で。 その後はバスルームで解体し、 青いビニール袋に小分けして川に流す。 起きる事件は結局はトニーには無関係で、 彼の終わりなき日常はこれからも続く。 それだけの物語で、 この何でもなさはかえって不気味ではあるが、 振幅のない始まりと終わりは空しさを通り越して無感動というアンチテーゼを観る者の脳裏に滑り込ませる。

ロンドン・・ さらっと歩いたことしかないが、 想像以上に小さな街で、 これがさまざまなムーブメントを世界に送り出したグレートブリテンの首都だとはとても信じられなかった。 ロンドンのネオンの海をヒョロっと不格好に泳ぐトニーは、 はたしてこれからどこへ行くのだろうか。



TONY (2009イギリス) 日本公開未定 
監督 ジェラルド・ジョンソン 
ピーター・ファーディナンド 

11.06.2011

サソリのスカジャン 「ドライヴ」



始まってすぐ、 何かに似てると気づいた。 「ザ・ドライバー」 (1978) ・・ ストーリーはかなり違うし、 こちらは原作があるらしいが、 ドライバーというキャラクターはウォルター・ヒル監督のあのオリジナル脚本にインスパイアされているらしい。 ライアン・オニールが演じたドライバーはカッコよかった。 この役にゴズリングはぴったりだし、 名前もライアンだが、 あれほど始終しかめっ面ではなく、 ときおり寂しげな笑みを浮かべたりもする。

オニールのドライバーはホテルの部屋で一人、 小さなカセットテープを持ち歩いてはカントリー曲を聴いていたが、 ゴズリングのドライバーにそんな趣味はない。 オニールに表向きの職業はなかったように記憶しているが、 ゴズリングはカースタントマンであり、 修理屋に勤務している。 オニールはひたすらクールだったが、 ゴズリングはかなり血なまぐさい。

イザベル・アジャーニが演じたザ・プレイヤーも出て来ないし、 ブルース・ダーンが演じたザ・ディテクティブもいない。 ゴズリングは隣の部屋の人妻のムショ帰りの男のために一肌脱ぐほど純情だし、 その子どもといっしょにテレビを見るくらいには子ども好きだが、 得体の知れない寂しさだけは受け継いでいる。 ともあれ普通に面白く、 カンヌで監督賞を取った演出は音楽が効いている。

どうせなら半分は 「ザ・ドライバー」 で、 あと半分は 「タクシードライバー」 にすればよかったなどと言ってみても始まらないか。 けっこういい線だとは思うが、 何かが足りない気もした。 それは何だろう。 今っぽさだろうか。

日本公開は決まっているものの、 まだまだ先。 春には似合わなそうな気がするが、 乞うご期待。




ドライヴ DRIVE (2011) 日本公開2012.3/31 公式サイト 象のロケット 
監督 ニコラス・ウィンディング・レフン *カンヌ監督賞  
ライアン・ゴズリング  キャリー・マリガン ロン・パールマン 
オスカー・アイザック アルバート・ブルックス 
クリスティナ・ヘンドリックス ブライアン・クランストン 

デートで観ては・・ 「イケない先生」



最近ホウレイ線がヤバいディアスだが、 この作品では "そんなことないわよ" とばかりに健在ぶりを見せつける。 珍しく違和感のない邦題とともに、 まさしくタイトルのまんま。 悪い先生と見せかけて、 実はいい先生? いや、 やっぱり悪い・・ みたいな^ ^

悪いと言ったって、 学校で男あさり、 マリファナ、 商売、 不正、 ゆすり、 豊胸手術ぐらいのものだが、 このエリザベス先生の人間味あふれる?キャラがすべてとも言える。 同僚のランチの誘いに気乗りしない顔をしながら "おごりよ" と聞けばついて行く。 ラストにはお返しに "前回おごってもらったから今回は・・ ワリカンよ" と来る。

体育教師役のジェイソン・シーゲルも裏 'いいもの' キャラだが、 その価値がわかるのは後半。 それまでは二枚目教師ティンバーレイクを、 宿敵と取り合う。 キャンプでエリザベス先生が二枚目教師と演じる擬似FxxKがいまいちよくわからないのだが、 スカッと笑える映画であることは間違いないだろう。 ほぼ全編、 下ネタではあるが。 。 日本公開がいつになるかは不明だが、 センスのいい字幕が付くことを祈る。 乞うご期待。




バッド・ティーチャー Bad Teacher (2011) 日本公開未定 
監督 ジェイク・カスダン 
脚本 ジーン・スタプニツキー+リー・アイゼンバーグ 
キャメロン・ディアス ジャスティン・ティンバーレイク ジェイソン・シーゲル 
ルーシー・パンチ フィリス・スミス エリック・ストーンストリート 

11.04.2011

フォトショップのような腹筋 CRAZY, STUPID, LOVE



またしてもアホな邦題を背負って、 まもなく公開されてしまうラブコメ。 たかがラブコメに目くじら立てることはないかもしれない。 原題自体が "クレイジーでアホな愛" なのだし。 。 いや問題は邦題のボキャブラリーの貧困さもさることながら、 こんな邦題になることで恥ずかしくて話題にすらできないということなのだ。

ねえ 「ラブ・アゲイン」 って映画見たんだけど・・ 「ラブ・アゲイン?」 って想像するだけで寒い。 興行元はいかなる理由で含みをスパッと切り捨て、 このタイトルで行きましょ、 ってことができるんだろ。 そのほうが当たるってデータでもあるのだろうか。 こんな邦題で当てられてしまうのは、 日本の観客としていかがなものだろう。

しょせんラブコメ以上でも以下でもない作品ではあるが、 とにかく豪華キャスト。 一人で主役を張れるクラスの人が何人? しかも面白いと思ったのは、 多少キャラのカブる俳優・女優をダブルで立てて、 かつ使い分けているところ。 まずスティーブ・カレルとライアン・ゴズリング。 ややカブる二人が、 一方は妻しか女を知らない一途な男と他方は、 実業家だった父の遺産の豪邸で優雅に暮らし、 夜な夜なバーに繰り出すプレイボーイとに使い分けられる。

ジュリアン・ムーアとマリサ・トメイはカブってないかもしれないが、 ともにれっきとしたとした主役級熟女の二人を、 高校時代に結婚した早婚の三児の母と寂しげな女教師とに使い分ける。 エマ・ストーンとアナリー・ティプトンという、 ようするに昔で言うところのカワイコチャンを、 ともに誰かのソウルメイトとして いい具合に紅二点使ってしまう。

エマ・ストーンもいいが、 アナリー・ティプトンがよかったなあ。 カレルの13才になる息子のベビーシッターであり初恋の人 兼ソウルメイトという役柄なのだが "America's Next Top Model" というオーディション番組出身の注目株をいち早く起用、 そのスレンダーな肢体とやや天然なムードが印象的だった。

こうして整理してみても "アゲイン" なのはカレル夫妻の場合だけなのだから、 この邦題は的を得てもいない。 CRAZY, STUPID, LOVEくらいの英語はこの作品がターゲットとするであろう知的な層にはほぼ100%理解されるはずだから、 社内公用語を英語にするのもいいが、 とりあえずアホな邦題はやめにしないか。 エントリータイトルはシャツを脱ぎ捨てたゴズリングにストーンが放つセリフより。




ラブ・アゲイン (2011) 日本公開11/19 公式サイト・予告 象のロケット 
CRAZY, STUPID, LOVE
監督 グレン・フィカーラ+ジョン・レクア 
スティーブ・カレル ライアン・ゴズリング ジュリアン・ムーア 
エマ・ストーン アナリー・ティプトン ジョナ・ボボ 
ジョン・キャロル・リンチ マリサ・トメイ ケビン・ベーコン