11.07.2011

青いゴミ袋 TONY



特別先行上映というほどでもないし、 恐らくはDVDスルーされるか、 スルーすらされない作品だろう。 しかしまあラブコメが続いたので、 この手を一本入れておこう。 「ヘンリー」 (1986 日本公開は1992) へのイギリスからのアンサーフィルムらしいが、 そちらは見た記憶すらない。

ロンドンの社会保障生活者トニーは、 この20年間に半年ほどしか働いていない。 今どき珍しいテクノカットをして、 風貌に似合わないアクション映画を今どきVHSで観る。 殺風景な部屋で一人ぼんやり暮らして、 ときおり思い立ったようにMODELという看板のある店に駆け込んだり、 トランスのかかるクラブへ潜入したりするが、 どこへ行っても場違いな感じ。

そして物事が不都合なほうへ転がると、 すべてを消してしまう。 意外に上手な手際で。 その後はバスルームで解体し、 青いビニール袋に小分けして川に流す。 起きる事件は結局はトニーには無関係で、 彼の終わりなき日常はこれからも続く。 それだけの物語で、 この何でもなさはかえって不気味ではあるが、 振幅のない始まりと終わりは空しさを通り越して無感動というアンチテーゼを観る者の脳裏に滑り込ませる。

ロンドン・・ さらっと歩いたことしかないが、 想像以上に小さな街で、 これがさまざまなムーブメントを世界に送り出したグレートブリテンの首都だとはとても信じられなかった。 ロンドンのネオンの海をヒョロっと不格好に泳ぐトニーは、 はたしてこれからどこへ行くのだろうか。



TONY (2009イギリス) 日本公開未定 
監督 ジェラルド・ジョンソン 
ピーター・ファーディナンド 

0 コメント: