3.14.2015

ワンカット大関 「バードマン」



オスカーを4部門ほど取ったということで、もうすぐ遅まきながら日本公開されるが、そのことに特に関心はなく、世界的にはすでに去年の話題だろう。全編ワンカットらしい、と噂されているが実はフェイク・ワンカットで、現在の技術で巧みに繋いであるようだ。そのことを罵倒する向きもあるようだが自分的には、面白い人だなゴンザレスはんは、と思う。

映画はそもそもテクノロジーの申し子だったのに、いつのまにか古典芸術のように扱っている人がいる。デジタルも3Dも気ままなフィルムメーカーなら面白がっていいはずだ。ただ「3Dって、こうだろう」などと決めつけずスコセッシのように表現拡張のアイディアとして昇華されるべきなのだろう。ゴンザレスはんがここでやったことも、最近のジェットコースター的なカメラワークでワンカットができてしまうのではないかというヒラメキ?で、たとえば日本だったら、すごい予算が投入される製作に対しそれは不謹慎だと言われるに違いないし、そもそもそのようなわけのわからない発想をする人が現れないだろう。

この無頓着な表現は、かつてバードマン役でハリウッドで名を馳せた男が、ブロードウェイで俳優としての正統な評価を得たいとあがくという物語にぴったりマッチする。表現だけがひとり歩きせず、表現に見合ったシナリオにきちんと着地させている。冒頭とエンディング間際でわざと乱してある部分を除いて、不思議な時間のパノラマ(リアルワンカットではありえない時間的非連続も連続させてしまう)は一見に値する新しい映画体験と言える。

しかし当然ながらそれだけに終わらず、やたらブリーフ姿の男たちが闊歩したり、YouTubeやtwitterとブロードウェイシアターの対比、ブロードウェイのバックステージの狭さ、この舞台にすべてを賭ける男VSレッテル貼り評論家の戦いなど、今という時代を適切に俯瞰するエピソードも楽しめる。恐らくハイブローすぎて客は入らないという気もするが、乞うご期待。



バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡) (2014) 日本公開2015.4/10
BIRDMAN : or (The Unexpected Virtue of Ignorance) 公式サイト
監督 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 
マイケル・キートン エドワード・ノートン エマ・ストーン ナオミ・ワッツ 
アンドレア・ライズブロー ザック・ガリフィナーキス 

0 コメント: