6.18.2014

いいねえ、そのサングラス “Only Lovers Left Alive”



何だかんだと更新が滞り、 それでも夏はやってくる、 と感慨に浸る。 死ぬまでにあといくつの夏を迎えられるだろう。

なぜか今季はアニメをたくさん見てしまい、 「極黒のブリュンヒルデ」 の寧子や 「それでも世界は美しい」 のニケは可愛いなとかなり思う。 「シドニアの騎士」 も面白いし、 でも 「弱虫ペダル」 も・・ と、 けっきょくスポコンに立ち戻る^ ^ それらも大半がそろそろ最終話を迎えようとする夏。 (極黒・・ は何かに似ていると思ったら 「ダーク・エンジェル」 だ)

そうして映画に戻ってくると、 当然ながら日本アニメとは違うトーン&マナーで、 あらためて新鮮さを覚えはする。 ひさびさのエントリーはまたジャームッシュということで、 前回を振り返ってみると自分でも恥ずかしいくらいに褒めちぎっている。 でも今回は、 え? ジャームッシュまでがヴァンパイア? というのが第一印象で、 前回から間が空いてないせいか、 ありがたみも少ない^ ^

その昔、 ヴィム・ヴェンダース、 ジム・ジャームッシュ、 ハル・ハートリーなど、 インディーズの監督はダブルイニシャルでなきゃ、 みたいなノリの時代があった。 そんななかで脚光を浴びたジャームッシュはもともとキャラありきの発想をする人。 それはあいかわらずで、 今回もアンダーグラウンドの音楽シーンで知る人ぞ知るミュージシャンが吸血鬼だったら、 みたいな思いつきから始まったのだろう。 そんなシーンが今どきあるのかとも思うが、 それを言っちゃおしまい。古いコートに身を包んでiPhoneを持つヴァンパイア、 飛行機の乗り換え地が夜間であるように苦慮するエピソードまでが無意味になってしまう^ ^

彼アダムはデトロイトに住んで古いギターを集め (ダブルイニシャルで思い出したがアダム・アントっていたな)、 でもなぜか妻はタンジール在住‥ という設定はよくわからない。 が、 必然性よりその街が気に入ったというところなのだろう。 キャラクターという駒を動かした軌跡で話が展開するのもあいかわらず。 奇しくも俳優陣は英国勢で固められ、 クイーンズイングリッシュとスノッブな音楽、 文芸引用で武装した吸血鬼たちは牙をむいて人を襲うことをやめ、 輸血用のOネガティブの血を金で買って、 小さなワイングラスで乾杯する。 飲み干したときの恍惚の表情をなぜか強調するが、 そんな日々のなか新時代の庶民をゾンビと呼んで嫌悪する。

彼の住むこのロックシティで二人は再会するが、 妻の残念な妹までがゾンビのメッカLAから来てしまい、 軽はずみに人の生き血をすすってしまう。 “古いカーペットはある?” というセリフのあと、 死体をそれにくるんでクルマのトランクに積み込むあたりはペーソスが漂う。 死体はデトロイトの廃工場に捨てられるが、 それでもこの廃墟の街はいつか復活するだろうとの予言が告げられる。

姉をイヴ、 妹をエヴァと呼ぶギャグもよくわからないが、 兄弟・姉妹は韻を踏む名前ということのパロディなのか、 英語読みとオリジナル読みで教養を見せたいからか、 ようするに本田さんと半田さんをアメリカ人に発音分けさせようというような嫌がらせなのだろう。

やがてタンジールを訪れた二人だが、 汚染血液にあたって世話役の老吸血鬼が死ぬ。 永遠かに思えた日々もうたかたの夢だったと知り、 民族楽器を買って手持ちの金を使いはたし、 そして再び生き血を求めて牙をむく。

作品的には意外と軽めに思えたが、 大スクリーンに投影するとカッコいいだろうなというシーンもいくつかあった。 円熟してなお真骨頂を見せるジャームッシュの絵づくりのポイントは構図ではないし、 色彩でもない。 なのにひたすら映画的な絵で、 それは闇夜にサングラスをかけるというニュアンスに近いものかもしれない。 音楽はキャッチーな選曲などないが、 やはり特別な空気を届けてくれる。 夏本番前、 涼しい作品を冷房代わりにして節電にいそしもう。 ラスト間際、 タンジールの酒場で歌う女の立ち姿もカッコよかった。


Only Lovers Left Alive オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ
(2013 アメリカ・イギリス・ドイツ) 日本公開12/20 公式サイト
監督 ジム・ジャームッシュ 
ティルダ・スウィントン トム・ヒドルストン ミア・ワシコウスカ 
アントン・イェルチン ジョン・ハート 

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