6.21.2013
性と詩 The Sessions
"セッション" というのが何を意味するかと言えば、 セラピーのこと。 しかし普通のセラピーではなく、 身体障害者の性の悩みを解決するセラピーだ。 幼少の頃にポリオにかかり、 目や口以外を動かすことができなくなったマーク・オブライエンという詩人の手記が原作とのこと。
時代は80年代半ば。 マークは全身麻痺により "鉄の箱" と呼ばれる人工呼吸器なしには生きられない体で、 カリフォルニア大学バークレー校を卒業。 その後、 雑誌に記事を書いたり、 詩を書く日々。 鉄の箱を出るときは携帯用の呼吸器を使うが、 それも3~4時間が限界。 いつもストレッチャーに寝かされ、 30代後半となっても当然のごとく童貞だった。
しかし、 経験したいという欲求、 あるいは想いはつのり、 相談したところ、 そういう問題の専門家がいるという。 派遣されてきた女性はティーンエージャーの子どもがいる人妻だったが、 手ほどきはプロだった。 しかし売春婦と違うのは、 特定の顧客を持たず、 セッションは6回までに限られる点であると、 その女性シェリルは言う。 やがてマークはセッションを卒業して一人前の男となるが、 それは機械的なカリキュラムで終わらず、 重要な意味と一編の詩を残す。
マークはクリスチャンだったので、 その顛末を神父に懺悔するというかたちで語り、 神父はときにビール肩手にマークの一人前を祝う。 ある種のタブーを取り上げながらも、 ユーモアあふれるマークの人柄やシェリルをはじめとする女性たちのあり方を通してバランスのいい作品となっている。
監督のリューインもポリオとたたかってきた経緯があるらしく、 そんななかから生まれた希少な企画と言えるだろう。 しかし特殊な事例に終わらず、 マークの苦しみは別の苦しみをそれぞれに持った多くの人に共感できるよう構成されているように思える。 キャスト陣の微妙な表情を的確に引き出して切り取った演出にも引き込まれる。 PRの方法がむずかしいタイプの作品に違いないが、 日本公開は未定。 できることならこのバランスを壊さないアピールを心がけてほしいものだ。 サンダンス観客賞・特別審査員賞他受賞、 ノミネート多数。 乞うご期待。
セッションズ The Sessions (2012) 日本公開2003.12/6
監督 ベン・リューイン
ジョン・ホークス ヘレン・ハント ウィリアム・H・メイシー
ムーン・ブラッドグッド アニカ・マークス ロビン・ワイガート アダム・アーキン
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