4.07.2013

お医者さんごっこ It's Kind of a Funny Story



劇場未公開、 WOWOWなどで放映されただけらしい作品。 DVDスルーすらされてないのだがIMDbの評価は低くなく、 コミカルなタッチも交えているが昨日の作品に勝るとも劣らずシリアスな内容。 ブルックリンブリッジから飛び降りる夢ばかり見る16歳、 これはヤバいと感じて自ら精神病院への入院を希望する。 しかしクレイグ16歳の悩みは、 親の期待に応えようとするプレッシャー、 あるいは好きな女の子が親友とつきあうようになったなど、 そこで出会う他の患者に比べると可愛いものだった。

同室のエジプト人は毛布にくるまったまま部屋を一歩も出ない。 まともそうに見えたボビーも、 自殺未遂を6回重ね、 娘に会いたいと願いながらもかなわず、 深い失意のなかにいた。 同年代のキレイな娘は 「燃えよドラゴン」 のブルース・リーのように頬に三本傷。 恐らくは手首にも。

美術セラピーで隠れた才能を見せたクレイグは、 音楽でもデビッド・ボウイの under pressure を熱唱、 人気者となる。 たった5日間の入院ではあったが、 クレイグは自分の悩みを解き明かし、 またここでできた友だちを励まし、 ここでできたガールフレンドとコンサートへ行く約束をする。 そして明日、 あさってが楽しみになるという普通の感情を取り戻して退院、 ボブ・ディランの歌詞からボビーが引用した言葉の通り、 生きる喜びをつかもうと歩み出すのだった。

If you're not busy being born, you're busy dying. 必死に生きないのは死んでるのと同じ

まあ、 それだけの話なのだが、 互いの境遇に共感しながらも傷を舐めあったりなどせず、 お医者さんごっこ、 ピザパーティと詩的なシーンに彩られた良作。 お医者さんごっことは、 医者になりすまして別の病棟を散歩すること。 エマ・ロバーツはここでも気になる透明感を放つとともに、 ザック・ガリフィナーキスがむずかしいニュアンスの男を好演している。 自分はこうしたメンタリティには縁遠い悩みのない人間だが、 それでもなぜかシリアスな作品を選んでしまう今日この頃。 春の足音は心の空洞に無自覚に反響するのだろうか。 最近のアメリカ映画ではなぜかデビッド・ボウイをよく耳にする。

(追記) "under pressure" はQueen との共作でした。




It's Kind of a Funny Story (2010) 日本未公開
なんだかおかしな物語/ボクの人生を変えた5日間
監督 アンナ・ボーデン+ライアン・フレック 
キーア・ギルクリスト エマ・ロバーツ ゾーイ・クラヴィッツ 
ローレン・グレアム ジム・ガフィガン ヴィオラ・デイヴィス 
ザック・ガリフィナーキス 

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