4.06.2013
マーケティング・ホロコースト 「デタッチメント」
重いけど、 いい作品。 新鮮な重さだった。 このところ一人で頑張っている感のあるエイドリアン・ブロディだが、 ここではルーシー・リューもジェームズ・カーンもみなシリアスな演技を見せてくれる。 監督のトニー谷、 いや谷啓・・ いやトニー・ケイは 「アメリカン・ヒストリーX」 が監督デビューの劇場作品ということで、 忘れていたけどあの映画の存在感についてもあらためて思い起こした。
今回はそこまで過激ではないものの、 教師という意外な切り口、 それもアメリカの、 いわゆる進学校ではないところの学校が舞台。 「金八先生」 に代表される日本の教師ものとはある意味似て、 しかし非なりな部分が興味深い。 教師は生徒を救う立場でありながら、 ともにこの世界を漂流する者として描かれる。 インタビューのカットで、 教師だけにはなりたくなかったと話す教師陣。 親が投げ出した子どもを救う役割が期待され、 そのくせ感謝すらされず、無力感と戦いながらも日夜業務を全うする。
日本の学校はここまでシリアスになってないとは想像するが、 先生が気楽な職業でなくなる日もそう遠くはない気がする。 自分が中高生の頃は日本の学校にさまざまな反発を覚えて、 映画で見るアメリカの学園生活に憧れたりしたものだが、 それも幻想にすぎなかったのかもしれない。 目の前で人生を棒に振る子どもたちを見続けてキレるルーシー・リューなどもかなりの迫力。
“複雑な世の中を子どもたちが理解する助けになれば・・” “向上心を持てば未来が開けると信じさせる・・” などのセリフは教師ものの行き着く先としてリアルに響く。 その時点で作品は単なる教師ものを抜け出て、 この世界を憂う生真面目な作品であることがわかる。 しかし絶望だけが置かれるわけではなく “とりあえずこの状況を乗り切ったら上手くいく・・” などと語る楽観主義も傍らには置かれている。
そりゃそうだよな、 自分たちが作ったわけでもない世界を、 憂いてばかりはいられない。 自分たちが行ってきた悲劇的な選択も、 振り返ればそれこそが青春、 私の人生というわけだ。 だからむしろ、 この映画のメンタルな部分はさらっと流し、 やる気のない子どもとどう付き合うかというテクニカルな部分をしっかり見たほうが、 自分の今を "とりあえず乗り切る" のにも役立つだろう。 現実に教師をやっている人、 あるいは教師を志望している人は見ない方がいいのかもしれない^ ^ エントリータイトルはブロディ先生の授業より。
デタッチメント 優しい無関心 Detachment (2011) 日本未公開 (東京国際映画祭を除く)
監督 トニー・ケイ 脚本 カール・ランド
エイドリアン・ブロディ サミ・ゲイル クリスティナ・ヘンドリックス
ジェームズ・カーン ルーシー・リュー ティム・ブレイク・ネルソン
ブライス・ダナー マーシャ・ゲイ・ハーデン
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