
エル・ファニングが歌舞伎風のメイクでミステリアスに歩くビジュアルだけでも、 さすがコッポラと思わされる。 中身はクラシカルなゴシックホラーだが、 原題はおそらくボードゲームから取ったと思われ、 ゲーム同様にさまざま伏線を結んで複雑な物語が編まれる。
売れない作家、 娘の死、 サイン会で訪れる小さな町。 そこには7つの面があってそれぞれ別の時間を刻む時計台、 保安官、 胸に杭を打たれた死体、 湖畔にたむろする若者、 フラミンゴという名の黒い服の青年、 悲しい事件、 そしてこの地に眠るというエドガー・アラン・ポー。 イメージの連立方程式が通常の1.5倍増量で散りばめられる。
作家が見る夢は、 青いモノクロームのなかに浮かび上がるパートカラーの ある種懐かしくも美しい映像。 しかしシンクロするはずの謎は時空をさまよって未消化のまま増幅されず、 小粋な小品としての控えめな自己満足に繋がれる。
そうしたパッケージのラッピングとしてのTWIXTが、 ファニング演じる "V" だけにフォーカスした邦題によっていつものごとく自己満足さえも剥ぎ取り、「地獄の黙示録」 「ゴッドファーザー」3部作? などと わけのわからないショルダーまで付加される日本公開。 涼しげな作品にふさわしい真夏の蝉の声の時期に届けられるのが せめてもの救いか。 乞うご期待。 ヴァル・キルマーが醸し出すペーソスはいい味。




Virginia/ヴァージニア TWIXT (2011) 日本公開2012.8/11 公式サイト・予告
脚本・監督 フランシス・フォード・コッポラ
ヴァル・キルマー ブルース・ダーン エル・ファニング
オールデン・エアエンライク ベン・チャップリン
ナレーション トム・ウェイツ
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