7.16.2012

半券の風葬 「精神科医ヘンリー・カーターの憂鬱」



新作ではないが見ようと思っていた作品、 ようやく見た。 未公開なんてぜんぜんもったいない、 いい映画。 ただ、 こういう作品ほど書きにくい。 映画を見るスキル、 あるいはハートのある人なら、 騙されたと思って見てもらう他ない^ ^

それらしい邦題がついているが、 原題はSHRINK、 ただの 「精神科医」 。 それだけだとカタいのかな。 日本ではいわゆる精神科医はポピュラーじゃないし、 自分も残念ながら受けたことがない。 一度受けてみたいものだ・・ とジョークにできない内容がここにはある。

ケビン・スペイシー演じるヘンリー・カーターはLAのセレブ相手のお医者さま。 しかし数年前、 他でもない妻に自殺され、 無力感からドラッグに溺れている。 患者には曲がり角を過ぎた年齢に悩む女優、 いい映画に出たいがアクション映画ばかりが回ってくる俳優、 天才的IQながら潔癖性と神経症のプロデューサーなどがいる。 弟分としてスランプのシナリオライターの卵。 そんなある日、 普段はセレブしか診ないドクターに、 縁あって高校の問題児が回されてくる。 そして彼女が抱えていたのは自分と同じ悲しみだった。

精神科医という いかにも現代的な切り口で映画の街LAの、 ありがちな悩み、 ありがちではあるが大きな悲しみを切り取ってゆく。 そして一連の出来事も最後は映画になる。 母と見た映画の半券を風葬する彼女。 精神科医はようやく誰か一人くらい救えたのかもしれない。 シナリオライターは なり振り構わぬ悪戦苦闘の末、 精神科医と同義語になれたのかもしれない。

ラストはみんないい人になってしまうが、 コメディになりかけては沈む前半のディプレッションとバランスを取るには、 これくらいのカタルシスがあってちょうどいいか。 しかし結局どうやって問題解決に向かったのか、 思い出しても曖昧だ。 それほど微力な積み重ねしかないということかもしれない。





精神科医ヘンリー・カーターの憂鬱 SHRINK (2009) 日本未公開 
監督 ジョナス・ペイト 脚本 トーマス・モフェット 
ケビン・スペイシー マーク・ウェバー ダラス・ロバーツ 
キキ・パーマー サフロン・バロウズ ペル・ジェームズ 
ジャック・ヒューストン ジェシー・プレモンス ロビン・ウィリアムズ 

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