2.04.2012

裏切りのボーナス 「マージン・コール」



金融に詳しいわけではないし、リーマンショックやサブプライムローンが何だったのかも忘れかけている今日この頃だが、 これは普通に面白かった。 一気に見てしまう系だ。

おそらくはリーマンブラザーズをモデルとする会社の、 危機の24時間前の行動を描いている。 トップと役員クラス、 そして若手。 年代が上手く織り交ぜられ、 サラリーマンドラマとしてもよくできている。 日本では未公開のDVDスルーだが、 IMDbなどの海外サイトでは概ね評価が高く、 驚くのはこれが自主映画として製作されているということ。 '自主' という言い方も的外れなのかもしれない。 大手からインディペデントである、 ということなのだろう。

ドラマの大筋は金融工学的な理系ではなく、 むしろ金がすべての泥臭いノリなのだが、 最近の事情を描きながら、 普遍的な '世界' が集約されているようなビターな味わい。 取りまとめの上手いベテランの営業部長、 営業部長より若い側近・・ 誰もが自分の存在意義と有能さをアピールしながら、 被雇用者であることからは逃れられない。 ブレのないダーティな判断ができるからこそのトップがそこにいて、 その手足となって動くことだけが真の己の存在価値なのだ。

これまでに警鐘はあったが深刻に捉えず、 事態が明白になると一点して もはや一刻の猶予も許されないと、 夜中の2時に会議が召集される。 "だから私、 これは危ないって警告しましたよね" などのキレイごとは一蹴され、 明朝までにリスク回避の戦術がプログラムされる。 それは取り引き相手も、 トレーダー個人としてのキャリアをも裏切る作戦だったが、 反対勢力にも代案はなく、 FBIが乗り込んで来ると予想される午後までに、 クズになるつつあるものを売り切る。 それによって会社はサバイバルし、 トレーダーたちは破格のボーナスを得る。 そういう筋書きだった。

社員さえもが狂ってると感じる年収の額と大量のリストラ、 それらはすべて予兆として置かれる。 インディペンデントゆえにキャスティングで頑張った分、 予算の残りはなくて NYのナイトライフは殺風景だし、 ドラマはけっして金融事情だけにフォーカスされているわけではないので、 そのあたりを求める向きには歯がゆいかもしれない。 自分も "いちおう見てみるか" 程度だったが、 グイグイと引き込まれ気づけば見終わっていたという快作。 昨日のこれになぞらえるなら、 邦題は "裏切りのボーナス" でもよかった?




マージン・コール MARGIN CALL (2011) 日本未公開 
監督 J・C・チャンダー 
ケビン・スペイシー スタンリー・トゥッチ デミ・ムーア 
ポール・ベタニー ザカリー・クイント ペン・バッジリー 
サイモン・ベイカー ジェレミー・アイアンズ 

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