3.12.2011

今日のごはんはリスよ 「ウィンターズ・ボーン」



前回のサンダンス・グランプリである 「フローズン・リバー」 にどこか似ている気がした今回のグランプリ作品、 監督が女性であるという点も似ているかもしれない。 寒い空気感はもちろんシリアスな状況も似ている。 しかし今回はさらにシリアスかもしれない。

精神を病んだ母、 幼い弟、 妹を一人で世話する17才の少女。 今日の糧にも困り、 リスを撃っては そのさばき方を弟妹に指南する。 そこへさらに困った話が。 保釈された父が出廷しない、 保釈金の担保に家を取られるというのだ。

シリアスな状況を生きる17才は、 それでも逃げ出そうなどとは思わない。 弟や妹を守りたい、 ただそれだけ。 入隊金目当てに軍隊に入ろうともするが、 出兵したら誰が弟や妹を見るのかと面接官から諭される。 残る道は何としても父を捜し出し出廷させるしかないが、 どうやらまたヤバイ人たちと関わっている模様。 危険を冒しての探索に乗り出すが、 やがて父はもうこの世にはいないことがわかってくる。

父が死んでいるとしても、 その死体の一部を証拠として出さない限り、 家の差し押さえは執行される。 恐らく父は殺された、 その事実だけでも重いのに、 それを隠そうとする者たちから死体を回収しなければならない。 それが叶わなければ家を失い、 弟、 妹たちとも離ればなれになってしまうだろう。

17才の決意はやがて状況に わずかながらの亀裂を生じさせ、 父の眠っている場所へたどり着くことができる。 しかしそこは あまりにも物悲しい場所・・ アメリカの底辺は ここまでシリアスなのかと圧倒されるが、 愛する者たちといたい、 彼らを守りたいという娘の望みは痛いほど伝わってくる。 中盤では やや間延びするところもなくはなかったが、 ジェニファー・ローレンスは淡々と好演。 日本公開が待たれる。

とことんダメな父親ではあったが、 娘がバンジョーを見るときの父への憧憬もさらに痛ましく、 小言一つ言わず まっすぐに立ち向かう娘には、 誰しもがまっすぐに向き合わざるを得ないのだということが描かれているように思う。 グダグダ言わずに自分の置かれた状況と戦ってみるか、 という静かな気合いをもらえる映画だ。




ウィンターズ・ボーン (2010) 日本公開2011.10/29予定 公式サイト 象のロケット 
WINTER'S BONE
監督 デブラ・グラニック 原作 ダニエル・ウッドレル 
ジェニファー・ローレンス ジョン・ホークス デイル・ディッキー 
ギャレット・ディラハント 

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