2.17.2011

お下げの荒野 「トゥルー・グリット」



1969年にジョン・ウェイン主演、 邦題 「勇気ある追跡」 として映画化されている同じ原作を再映画化。 コーエン兄弟はリメイクとは考えていないそうだ。 カルト扱いされることを覚悟で作ったのにヒットしたのが意外とも。 マイペースに西部劇なんかを持ってきたなと思ったが、 まあ評判どうり、 渋い味わいだった。

西部劇には詳しくないが、 ジョン・ウェイン物に代表される王道の西部劇と、 ドンパチ主体のイタリア製西部劇、 いわゆるマカロニ・ウエスタンがあるくらいは知っている。 マカロニのほうが元ネタとなることが多い気がするが、 これはドラマに重きを置いた正統派ウエスタンだ。

内容は復讐劇なのだが、 父の仇を追って荒野をめざした14才の少女と 彼女が雇った荒くれ者。 その交流のなかで少女は何かを学び、 成長するといった後味のいい復讐劇であるところも王道と言えるかもしれない。

誇張のない淡々とした演出で、 音楽も 'それ風'、 にもかかわらずファッションで引用しているようなところはまるでなく、 大まじめに時代超越の企画に取り組んでいる。 少女マティ役のヘイリー・スタインフェルドは 「大草原の小さな家」 のローラ・インガルス張りのお下げで、 意志の強い少女を印象的に演じている。

ジェフ・ブリッジスはバリバリの南部なまりとアイパッチで登場、 酔っぱらいで いい加減そうに見えて、 その実、 少女を思いやっている。 マット・デイモンは同じ仇を追う元テキサスレンジャーの賞金稼ぎという役柄で、 今回は完全な脇役かもしれない。

少女は何かというと法や契約を持ち出すが、 アウトローが逃げ延びられる広大な荒野を残しながら、 法というものが力を持ち始めた時代なのだろうと想像する。 しかし 法よりも有効なものが銃であった時代、 少女は復讐の旅の途中、 目の前で殺される人や転がる死体を幾度となく目にする。 絞首台の男は、 誰も俺に善悪を教えてくれなかったから こうなった、 子供に教育を、 と叫びながら死んでいくが、 皮肉にも そのこと自体が教育になっているのだ。

こうして思い出しながら書くと、 ブリッジスが演じたようなキャラは いくらでもあり、 かつ そのなかで突出してるわけでもなく、 ある意味 「アルプスの少女ハイジ」 のアルムおんじだし、 'テキサスレンジャーの魂' も活きてない。 冷静に見れば それほど良くできている作品でもないとも思う。 今の時代を逆照射するテーマがあるとも思えない。

そのくせ、 何ともいい映画を見ている気にさせられる不思議な作風で、 それはコーエン・マジックとしか言いようがないかもしれない。 自分的には お下げと、 やっぱりスコアかな。 。 ホワイトデーのお返しは本作のチケットなんてのがいいかも^ ^



トゥルー・グリット TRUE GRIT (2010) 日本公開2011.3/18 公式サイト 
脚本・監督 ジョエル&イーサン・コーエン  象のロケット 
原作 チャールズ・ポーティス 
製作 スティーブン・スピルバーグ 音楽 カーター・バーウェル 
ジェフ・ブリッジス マット・デイモン ジョシュ・ブローリン バリー・ペッパー 
ヘイリー・スタインフェルド 

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