1.17.2011

歌舞伎町天国 「エンター・ザ・ボイド」



"2010年 SEXとマジックマッシュルームの旅"・・ そんなキャッチフレーズが付けられておりますが、 それはそれで言い得て妙。 まあキューブリックよりは遥かに楽観的で "死は最高のトリップさ" なんてセリフが似合うところはギャスパー・ノエか。 幽体離脱した魂からの視点という新たなノエのチャレンジは、 ある意味では 「オカルト」 あるいは丹波哲郎の 「大霊界 死んだらどうなる」 の続編とも言え、 小説では石田衣良の 「エンジェル」 の実写版と言えましょうか。 。  (え?言えない^ ^)

ともすればサイケ調の時代遅れの映像と評されがちながら、 このブラックライト的でジオラマ的なサイケはクラブシーンでのリバイバル・サイケとシンクロする。 日本の芸能人逮捕でも聞くMD*Aのようなドラッグの名称が飛び交うなか、 幼い頃に交通事故で両親を亡くした兄妹は東京で再会する。 しかしドラッグがらみのトラブルから "ずっと一緒だ" との約束に反して、 兄は死んでしまう。

バーの汚いトイレで倒れている自分自身の肉体を空中から眺める兄。 その後は あちこちを浮遊して生きている人々を空中から盗撮、 あるいは人生の走馬灯を見るような回想の連続で、 ディレクターズカットだと2時間40分。 休憩や睡眠を挟めるDVDでよかったなと^ ^ 結末もかなり早い段階で読めているので求心力は弱いながらも、 楽しめる映画体験ではあった。

浮遊感もVFXもあらためて感動は受けないが、 カルマの楽観的な解釈には苦笑いさせられた。 グロさは昔よりは薄くなったが、 カルト性やオリジナリティはあいかわらず高く、 資金繰りに苦労しながらの製作はリスペクトに値する。 自分的にもっとも衝撃を受けたシーンは、 事故に遭った幼いリンダがクルマの後部座席で、 血でウガイするようなブクブク音で絶叫するところ。 兄と引き裂かれて連れて行かれるエレベーターでの抵抗ぶりも凄かった。 この子役の娘エミリー・アリン・リンドに助演女優賞をあげたい^ ^ もちろんパス・デ・ラ・ウエルタもナイスキャスティング!



エンター・ザ・ボイド ENTER THE VOID (2009フランス) 日本公開2010 公式サイト 
脚本・監督 ギャスパー・ノエ 
ナサニエル・ブラウン パス・デ・ラ・ウエルタ シリル・ロイ 
丹野雅仁 エミリー・アリン・リンド 

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