10.09.2010

アンチ・アカデミック 「のだめカンタービレ 最終楽章 後編」



疲れて眠いタイミングで見たのに睡魔に襲われなかったというのは、 なかなかスゴいことだと思う。 劇場で見れなくてお祭り気分にはなれなかったが、 いちおうの結末は見た。 今後もスペシャル番組は作られそうだが、 あらためていい原作、 そして上手い映画化だなと思う。 当ブログは最新作やホラー志向で、 邦画もパスしてるわけではないが しばらく見てない気がするし、 とくにこんな作品をエントリーすると何となくミスマッチで気恥ずかしいのだが、 実はテレビシリーズも全部見ている自分であった。 。

千秋や友人が躍進していくのに、 のだめは開花しないどころか、 水が切れて枯れかかっている。 そんとき突然 大きな舞台が用意される。 最高の演奏を終えても "それが何だというの? 窮屈でしかたない" と彼女は感じる。

ピアノは打楽器。 そう表現するシーンがあって、 テルミンと打楽器で曲を作る人なども出てくる。 厳しい音楽教育のなかで、 あるいは音楽ビジネスのなかで苦悩する のだめは、 ここで原初的な '音を楽しむ' という感覚を取り戻す。 その才能ゆえにミューズに愛された彼女だったはずなのに、 道を究めるほどに外れてゆく。 一見アッパラパーな雰囲気の中にも、 こんなアンチテーゼが密かに内在されているところが深いなと。

このアンチテーゼは展開せずにすぐに現実に収束してしまうが、 それ以上はこちらも期待しない。 大人になることの一抹のわびしさを残しつつ ときには一人で、 あるいは誰かと歩んでいく。 ファイナルと言いつつ、 ここがスタート地点というようなエンディング。 "飛びつきたくなる先輩の背中" ・・ のだめの愛の表現はそういう形だが、 最も抽象的な芸術の物語の傍らに、 身体的でプリミティブな感覚を忘れないのも素敵。

余談になるが出演者はスクリーンの外での現実も含めて、 みな一様に疲れている気がした。 アナログ地上波時代の最後の名作と言わんばかりに。

» 最終章 前編


のだめカンタービレ 最終楽章 後編 (2010日本)
原作 二ノ宮知子 監督 川村泰祐  公式サイト 象のロケット 
上野樹里 玉木宏 瑛太 水川あさみ ウエンツ瑛士 ベッキー 
山田優 福士誠治 谷原章介 伊武雅刀 竹中直人 

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