11.27.2009

バラを星だと思い・・ 「ベルサイユの子」



ホームレスが子育て・・ ということで公開時はショッキングな、 あるいはタイムリーな映画としてそれなりに興味をそそられたが、 いざ見てみると どうってことない映画だな。 そのあたりがまさに、 良くも悪くも今のフランス映画だ。 思わせぶりなセリフやムードに反して いかにもな展開、 行き当たりばったりで作ってるようなストーリー、 35mm一眼レフで言えば80mmレンズくらいの画角・・ その狭い視野の中で展開される、 イヤイヤ覗き見させられているような感覚。 独りよがり、 観客不在、 あるいは心の広い観客にスポイルされた製作陣・・

字幕も下手だな。 そのフランス映画の唐突な感じを さらに強調するかのような 'こなれない' 言い回しで "欲しいか" だの "すすいでやる" だのが乱発される。 原文がそのような構文であっても日本語では "するか" で十分だし、 シャンプーは 'すすぐ' のではなく '流す' のだ。

結局は子役の可愛さが売りの映画で、 雰囲気だけシリアスぶっても本当のシリアスさはゴソッと抜け落ちている。 "人を呼んでこい" と子供を助けを呼びに走らせて、 次のシーンは病院で医者に "世話になった" と言う。 フランスでは健康保険の心配もなければ、 申請さえすれば子供を養育する親というだけで生活保護が受けられるらしい。

そもそも彼らがどうしてベルサイユの森で暮らすことになったかなどの経緯はまったく出て来ず、 時が経てば何となく問題は解決できたような気になって終わり。 だったら最初から悩むなよ。 唯一 面白いなと思えたのが、 森の仲間の葬式で読まれた詩。

 北を目指し南へ行った
 小麦を水だと思った
 彼は間違えた

 海を空だと思い
 夜を昼だと思った
 彼は間違えた

 バラを星だと思い
 雪を春だと思った
 彼は間違えた

かつてヌーベルバーグを生み出した国に、 今は文化的なオリジナリティもモチベーションも見出すことはできない。 変われば変わるものだ。 レオス・カラックスが言ってた "目覚めよ パリ"、 だが まだ目覚めてはいないどころか、 ますます深い眠りに落ちてゆくかのようだ。

ベルサイユの子 VERSAILLES (2008フランス) 日本公開2009 
監督 ビエール・ショレール  公式サイト 
ギョーム・ドパルデュー マックス・ベセット・ド・マルグレーヴ ジュディット・シュムラ 
ベルサイユの子 [DVD][DVD]

 扉をたたく人 [DVD] 夏時間の庭 [DVD] 路上のソリスト [DVD] ミルク [DVD] 愛を読むひと (完全無修正版) 〔初回限定:美麗スリーブケース付〕 [DVD]

 powered by G-Tools

0 コメント: