11.26.2009
冷たい8月 「ライフ・ドア 黄昏のウォール街」
未公開、 だがこの邦題ではDVDになっても見落とされるだろう。 一昔前の いわゆるドットコム企業の盛衰を扱った作品で、 映画で扱うには難しいテーマなのか、 これだけドットコム企業、 あるいはWEB2.0企業数あれど、 この手の作品は意外と少ない。 デビッド・フィンチャーがfacebookを題材にした映画を製作中とのことでそれも楽しみだが、 この作品も悪くない。
しっかし邦題を作った人たちは、 よっぽど知らないのだろう。 日本ではウェブ企業というとライブド・・ということでこういうタイトルが発想されるのだろうが、 日本企業でもTechCrunchで大プレゼンをやったトンチドットなんかもあるのだ。 ベンチャー感覚が日本人に馴染み薄だとしても、 さすがに 'ウォール街' は外れすぎだろう。 株価の問題が出たからと言って証券会社の話ではないし "黄昏のシリコンバレー" ならまだしも、 これはあまりにお粗末なタイトルだ。 聞いてるか、 発売元?
原題は "8月(August)"。 映画に登場するベンチャー企業ランドシャークが、 ロックアップをあと数週間で抜けるという辛い時期のこと。 8月は自分の誕生月でもあるが、 真夏ながら どこか裏寂しい季節感は悪くないタイトリングだ。 ロックアップというのは上場したての企業がまだ株を売買できない期間のことで、 市場ではすでに過大評価されて株価が吊り上がっていたとしても資金繰りはショートする可能性をはらんでいる。 ジョシュ・ハーネット演じるランドシャークのCEOはテレビのインタビューで、 市場を牽引していることについて "我々こそが市場だ" と豪語する。 クールな表情、 向かうところ敵なしの態度はカッコイイのだが、 現実は甘くはなかった。
わずか数ヶ月前に弟とともに立ち上げたウェブ企業だが、 またたく間に急成長し、 雑誌の表紙になるなど一躍 時の人。 弟は技術系っぽいが、 兄はハッタリで各所から金を引き出すのが得意。 だが8月、 出資先の倒産とともに資金繰りは悪化、 そこへ とある企業が救いの手を差し伸べてくるのだが・・
ネタバレしない程度に結論を言ってしまうと、 アメリカと言えど財界はハーバード出身者が牛耳る世界で、 腕一本、 ハッタリ一丁で のし上がってきた者には冷たい。 財界のフィクサー役で いきなりデビッド・ボウイが登場するのだが、 有無を言わさぬ権力の行使と新参者への嫌悪はなかなか見ごたえがあった。
"この間 会社を見てきたが、 オレオを食べながらIKEAのデスクに座っているだけで大金が転がり込むのか" という父の皮肉に対し "父さんが作れなかった世界を俺たちは作ってるんだ" と返す兄。 だがやがてビジネスモデルは机上の空論であり、 自分たちはしょせん大手企業の '噛ませ犬' に過ぎないことを悟る。
こんな状況をかいくぐってGoogleもfacebookも今があるのかもしれない。 映画では現実の壁だけが冷酷に描かれていて、 起業家たちには何の励みにもならないかもしれないが、 邦題から想像するよりはるかに価値のある作品とだけは言えるので、 機会あればぜひレンタルされたし。
ライフ・ドア 黄昏のウォール街 AUGUST (2008) 日本未公開
監督 オースティン・チック
ジョシュ・ハーネット ナオミ・ハリス デビッド・ボウイ
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