8.14.2009

そして何の味もしなくなった 「レイチェルの結婚」



ウィノナ・ライダーとかクリスティーナ・リッチがやりそうな役 (でもないか) をアン・ハサウェイがやっている。 薬物・アルコール依存の更生施設を出たキムを待っていたのは、 姉レイチェルの結婚式だった。 両親は離婚、 姉妹の関係は微妙、 さらにキムは、 小さな弟を事故で死なせたという過去を背負っていた。

"邦画的" というようなコメントをどこかで見かけたが、 何でもないような日常のひとコマを切り取ると そこにはさまざまな断面が・・ みたいなニュアンスで言えばそうかもしれない。 しかし断面のひとつひとつはザラザついてアメリカ的だ。 姉レイチェルの結婚相手は音楽業界で成功しているアフリカ系アメリカ人だが、 人種差別的なトーンは見事に消し去られてある。 めでたい席というシチュエーションで、 ネガティブな空気は一切パス。 レイチェルは妊娠していて、 お父さんなどは嬉しそうに孫の誕生を心待ちにするというような態度。 だがレイチェルが "男の子が欲しいわ" などと口走ると死んだ息子の影がよぎる。 手持ちカメラの、 いわゆるドキュメンタリー感覚。

インド風の衣装で、 知り合いのミュージシャンを何人も呼んで、 自宅の庭で行われるウェディング。 パーティが終わった翌朝にも一人二人がバイオリンを奏で、 そのままエンディングへ。 問題は噴出しかけて、 何ごともなかったように平静を装い、 家族って何?という問いかけすらすでに無意味。 栄光も挫折も、 生も死も、 できるだ意識せず、 触れず、 渾然一体となって、 それぞれが与えられた役割を淡々と演じ、 ただ時は過ぎていく。

新郎がニール・ヤングの "Unknown Legend" をアカペラで歌い、 それを受けての神父のセリフ "コネチカット州とニール・ヤングの名においてこの結婚を認める" なんて部分は粋だよな。 また食器洗い機にどちらが皿をキレイに詰めるかという競争を、 花嫁の父と新郎がくり広げる。 このバカバカしさ、 しかし そうでもしなければやってられないという感じのニュアンスが絶妙と言えば絶妙。 ルメット監督の娘であるジェニー・ルメットが単独で脚本を書き、 シドニー・ルメットロジャー・コーマンロバート・アルトマン などが THANK YOU としてクレジットされている。 ハリウッド ジ・アザー・サイドの近況を伝えるかのような映画なのだろう。

物語の体系を "祭りの準備型" "祭りの真っ最中型" "後の祭り型" といった分類で説明することができるらしいが、 これは明確に最後のパターン。 薄くてマズかったアメリカンコーヒー、 スターバックスが頑張って美味しくしたが、 あげくの果てには何の味もしなくなった。 そんなアメリカがここにある。



レイチェルの結婚 Rachel Getting Married (2008) 日本公開2009 
監督 ジョナサン・デミ 脚本 ジェニー・ルメット  公式サイト・予告 
アン・ハサウェイ ローズマリー・デウィット ビル・アーウィン 
トゥンデ・アデビンペ マーサー・ジッケル デブラ・ウィンガー 
レイチェルの結婚 [DVD][DVD]

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2 コメント:

匿名 さんのコメント...

「マーターズ」ブロガー試写会のご案内

この度は突然のご連絡で失礼いたします。
迷ったあげくサイトのメール機能からのご案内で申し訳ございません。

この夏8/29(土)にシアターN渋谷にて公開の
『マーターズ』を今回はホラー系ブロガーの皆様に一足先にご覧に
なって頂きたく、8/17日に渋谷にて開催の特別試写会にご招待いたしました!

詳細をお送りいたしますので、ご返信頂けると幸いです。

martyrs@bbb-inc.co.jp

kiona さんのコメント...

試写会への招待ありがとうございます。 しかしながら大変残念なのですがスケジュールが合わず、今回は参加させていただけません、申し訳ありません。 またの機会がございましたら、お気軽にお声かけてください。

また 「マーターズ」 は注目の作品としてすでにエントリーさせていただいています^ ^ 日本公開での成功を影ながらお祈りします。