11.10.2008

太陽が昇らない恋 「スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー」



きのうの 「愛おしき愛人」 に続き、 北欧版 「小さな恋のメロディ」 との異名を取るロイ・アンダーソン監督の1970年の作品。

ファッション、 音楽、 そして光までが、 紛れもなくあの時代のフィルムだ。 幼い恋が芽生える瞬間は、 たて笛の音まで聞こえたりするものだから確かに 「小さな恋の・・」 を連想する。 超ミニに身を包んだ13歳の少女と自動車工場で働く少年は、 さすがにスウェーデン、 すぐにエッチな関係に発展するが、 結婚などとは口走らず、 また学校に通う風景なども一切出て来ない。 そしてどうしたことか、 恋する二人にフォーカスが当たるのは中盤までで、 しだいにお互いの父や母や叔母、 両家族の活写が中心になる。 すると昨日見た作品と地続きになり、 同監督が描こうとしたのは淡い恋などではなく、 その先にある人生、 あるいは恋のなれの果てだったのかなとの理解にたどり着く。

北欧は鬱病患者が多いと聞くが、 ここに出てくる大人は一様に世の中、 あるいは自分の人生に不満をくすぶらせている。 家電メーカーの営業マン、 自動車塗装工場の経営者、 お金がなくて中止になる家族旅行、 日常茶飯事の夫婦げんか、 結婚しない女、 冬の花火とザリガニ・パーティ・・ そのどれもが盛り上がりに欠け、 陰鬱な空気に包まれて不発で終わり、 一抹のペーソスを苦笑いのように漂わせるだけという独特のテイスト。 70年代初頭にここまでの閉塞感を映し出せる社会は、 やはり進んでいたのか。 スウェーデン出身の監督と言えばラッセ・ハルストレムが挙がるが、 ハルストレムの映画ではここまでの閉塞感は感じたことがないので、 アンダーソンの持ち味というべきなのだろう。

ボルボ、 サーブ、 エリクソン、 エレクトロラックス、 イケア、 H&M・・ 日本と言えばソニーやホンダやニンテンドーを連想されてしまうように、 スウェーデンの有名企業を思い浮かべてみるが、 そんな陰の部分を紐解くヒントにはならないようだ^ ^

ベニスに死す」 の美少年、 ビョルン・アンドレセンが友達役で出ている。 彼などはまさにスウェーデン!というイメージなのだが、 主役はあくまでゴリラ顔の男の子であり、 こちらが等身大のスウェーデンなのかもしれない。 日も短くなってきたことだし、 太陽が昇らないスウェーデンの冬に思いを馳せてみるのも一興かと。


スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー (1970スウェーデン)
A Swedish Love Story 日本公開1971 公開時邦題 「純愛日記」
監督 ロイ・アンダーソン  公式サイト&トレーラー 
ロルフ・ソールマン アン=ソフィ・シーリン ビョルン・アンドレセン 
スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー[DVD]

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