12.19.2009

時には父のない子のように 「ちゃんと伝える」



久々の日本映画、 しかも園子温監督ということで期待したが、 いつもの過激さはなく何となく拍子抜け。 ちゃんと伝えるというのは日本人の苦手なコミュニケーションに関することかなと思っていたが、 そういうわけでもなかった。 映画は監督の親父さんに捧げられているが、 自分は親父が死んだときも何も捧げられなかったなあ。

通常の余命ものと違うのは、 親父の見舞いに通う過程で自分自身のガンが発見されてしまうという点。 ただでさえ親不孝を重ねてきたのに、 親父より先に逝くなんて これ以上の親不孝はないと、 むしろ親父に早く逝ってくれと願うようになる。

観客が青年のガンを知らない時点と知った時点で、 同じシーンが視点を変えて繰り返される。 さして新しい手法ではないが、 今回の実験的な部分と言えばそれくらいか。 ふと激しいシーンが出てくると園子温を感じるが、 静かに会話を交わすシーンが続くと山田太一のようだ^ ^

海外ではそれなりに評判もいいようだが、 なんか いわゆる邦画っぽくなってしまったような。 役者としてのAKIRAは時任三郎を少しナヨっとさせた感じで、 父のキャラはよくわかるのに青年のキャラはいまいち不明瞭。 そういう若者像なのかもしれないが やや浅め。 伊藤歩も言いにくいことをズバっと言うキャラというのが微妙にミスマッチで、 フィアンセ役以上でも以下でなく、 高橋恵子の貫禄だけが印象に残った。

父と釣りに行くと約束した "美しい" 湖もあまり美しいと思えず、 セミの抜け殻と硬直した鳩の死体もそれほど詩的に効いてくることはなく、 いまだにガンを治すこともできないくせに偉そうに語る医者のように、 余命ものには先進的な監督も無力なのだという気がした。

父親というのは不思議なものだ。 若い頃はあれほど反発していたのに、 自分もある程度の年齢になり、 少し父が弱々しく感じるようになった頃から、 微妙な敬意を抱いたりする。 それは自分が社会で壁を感じ始める頃でもあるだろうか。 強いと思っていたものが実は弱く、 弱さを共有して初めて、 男として人間として評価できるようになるのかもしれない。 だからと言って本当に弱いだけの人間では意味がなく、 強がってでも何とか役に立つ。 それが父親の価値なのだろう。 いつか息子に評価してもらえるよう、 がんばって価値を出そう^ ^


ちゃんと伝える (2009日本) 公式サイト 
監督 園子温 » インタビュー
AKIRA(EXILE) 伊藤歩 高岡蒼甫 吹越満 でんでん 高橋惠子 奥田瑛二 

12.18.2009

少年老いやすく 「カールじいさんの空飛ぶ家」



吹替版で子供と見た。 3Dの劇場ではなかったが、 子供の受けは上々。 わかりやすい邦題が付いているが、 原題を見るとただ 'UP' なんて意味深だな。

カール少年が じいさんになるまでの進行が走馬燈のように早くて驚いたが "冒険のアルバム" をめくるところなどはセリフがなくサイレント映画のような雰囲気で、 狙ってるなとは思うがまずまず。 カールじいさんの名字はフレドリクソンだが 「春にして君を想う」 のフレドリクソン監督へのリスペクトを込めたネーミングだろうという指摘がallcinemaのレビュー欄にあった。 そのへんにインスパイアされつつ、 落とし込まれるのはPIXAR流のCGアニメだから、 ある程度お決まりの展開となる。

エリーが生きているうちに冒険の旅に出ればよかったのにと思うが、 爺さん婆さんの旅ではCGアニメにふさわしくないということなのだろう。 子供のいないカールじいさんは孫のような少年と空飛ぶ家で旅することになる。 CG的には布のテクスチャーや風景がリアルだなと。 犬のしぐさなどもよくできていて、 犬好きが作ったんだろうなと。

かつては憧れた冒険家との決別、 エリーのアルバムに冒険として続けられた二人の日常。 子供にはわかりにくいメンタリティだが、 ここは大人に泣いてもらおうということだな。 笑いのポイントはと言えば、 飛行船の窓の外に ぬーっと登場するラッセル少年など、 どことなくジブリっぽい気もした。 子供に一番受けていたのは実はこのシーンだが、 あと風船がリアルとか言ってたな。 それと娘はなぜか、 重量を軽くするために家から家具を捨てるとき、 そんなのダメと怒っていた^ ^

カールじいさんが78才、 なら冒険家マンツはいったい いくつなんだ? カールが10才の時にマンツが30才だとして、 概ねアラ100なわけだ。 それで犬を引き連れて いまだに野心に燃えてるのか。 冒険心を取り戻せ、 みたいな話かと思ったら まったく違っていたのは好感だが、 あちこちでチヤホヤされると どうもテンションが下がってしまう。 いちおう見ましたということで。 。

(追記) » 実写版?


カールじいさんの空飛ぶ家 UP (2009) 12/5〜 CGアニメ 
監督 ピート・ドクター+ボブ・ピーターソン  公式サイト 
カールじいさんの空飛ぶ家 [DVD][DVD]

アバター [初回生産限定] [DVD] ティンカー・ベルと月の石 [DVD] ATOM スタンダード・エディション [DVD] プリンセスと魔法のキス [DVD] くもりときどきミートボール コレクターズ・エディション [DVD]

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誰もいない海 「フェーズ6」



原題のキャリアというのは経歴のことではなく、 携帯会社でもなく、 保菌者のこと。 新種のウイルスにより世界は終わろうとしている。 そんな中を4人は思い出の海岸へと向かう。 生き残った者たちも常に感染のリスクにさらされ、 またガソリンや施設の奪い合いを勝ち抜かなければ生き続けられない。 ヒューマニズムは邪魔なだけの世界がそこにある。

ゴム手袋とマスクを着用して活動するが、 新型インフルによって似たような光景はすでにもたらされているので、 リアルと言えばリアル。 ホラーとカテゴライズされてはいても、 ゾンビも殺人鬼も出て来ない。 ウイルスに犯された世界をどう生き抜くかだけが淡々と描かれる。 ふとした人情や触れあいが命取りになる。 救急センターをめざす父と娘を置いてけぼり、 情にほだされ娘に触れて感染した彼女も置いてけぼり。 そして その彼女に触れた自分自身も・・

兄弟が幼い頃に浜辺で撮られた8mm映像から始まり、 数十年後の同じ浜辺で終わる。 もう父も母もいない。 兄弟もいない。 未来も見えなくて、 やがて地上から人間がいなくなっても浜辺は美しいままに違いない。 ニヒルなロマンチックさ漂う異色作だ。

(追記) こんな邦題になって公開されるそうだ。




フェーズ6 Carriers (2009) 4/24公開 公式サイト・予告 象のロケット 
監督 パストール兄弟 
ルー・テイラー・プッチ クリス・パイン パイパー・ペラーボ 
エミリー・ヴァンキャンプ クリストファー・メローニ 
フェーズ6 [DVD][DVD]

30デイズ・ナイト プレミアム・エディション [DVD] サバイバル・オブ・ザ・デッド [DVD] パリより愛をこめて Blu-ray & DVDセット(初回限定生産) レギオン コレクターズ・エディション [DVD] ウルフマン ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]

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12.16.2009

夫婦でカントク 「幸せのセラピー」



ジェシカ・アルバ目当てで見たが、 デビュー当時のように見事な端役だった。 でも、 こんな役のほうが可愛い・・ って言うと怒られそうだが。 ジェシカ抜きにどうかというと、 悪くない。 非常に微妙な路線の作品ではあるが、 なんとなく楽しい時間が過ごせた。

逆タマ男ビルは、 義父の銀行の重役ではあるが、 どこへ出てもコネ入社扱い。 うらやましい身分のノンワーキングリッチだが、 本人はそのことに甘んじているわけではなかった。 投資と称してドーナツショップのフランチャイズとコンタクトを取り、 義父への依存を捨ててドーナツ屋を始めようと考えている。

学生に職場を体験させる 'メンター制度' で15才の少年と知り合いになるが、 ビルの心はある意味で少年のまま。 銀行マンになりたかったわけじゃない、 かと言って本当はドーナツ屋になりたいわけでもない。 だがビルは15才ではない。 鏡に映るのは白髪が目立ち、 メタボ腹をかかえる中年男なのだ。 それでもまだ何かを探している。

そんな精神年齢のビルだから、 少年とはウマが合う。 いっしょにマリファナを吸い、 ショッピングセンターを駆け回ったりする。 そんな折り、 妻の浮気が発覚。 それでもビルは妻を愛していた。 これまでの人生を清算するか、 妻を取り戻すか、 あるいは自分自身を本当の人生を取り戻すか。

アーロン・エッカートって こんなキャラじゃなかったと思うが、 ここでは情けない大人子供ぶりを好演。 彼の前作になぞらえた つまらない邦題がついているが、 セラビーは何の関係もない。 "不器用な男" のコメディみたいなコピーがついていたが、 これもかなり違う。 不器用と言うなら、 自分の気持ちに嘘をつくことに不器用な男のCHANGE物語 "ビルに会え" だ。

ジェシカは可愛かったが、 妻役のエリザベス・バンクスもけっこうイケてて、 彼女自身も自分探しに迷える子羊で、 ビルの物語でもありあながらも夫婦の問題もいいバランスで扱われている。 それもそのはず、 本作は実の夫婦がペアで監督。 微妙なコンセプトをリアリティ番組のように成立させている。

物語は新たな一歩を踏み出すところで終わっているが、 その先はあいかわらず見えないままで、 ペーソスと爽やかさだけを残す '大人の青春映画'、そんなふうに言えるかもしれない。 大人だって、 15才の頃のように迷っていても全然かまわないのだ。



幸せのセラピー MEET BILL (2007) 日本公開2009 公式サイト 
監督 メリッサ・ウォーラック+バーニー・ゴールドマン 
アーロン・エッカート ジェシカ・アルバ エリザベス・バンクス 
ローガン・ラーマン ティモシー・オリファント トッド・ルイーソ 
幸せのセラピー [DVD][DVD]

 幸せになるための10のバイブル [DVD] そんな彼なら捨てちゃえば? [DVD] 私がクマにキレた理由 (特別編)〔初回生産限定〕 [DVD] ブライダル・ウォーズ〔初回生産限定〕 [DVD] フォー・クリスマス [DVD]

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12.15.2009

生身のキャラを操作して・・ 「GAMER」



ユーリズミックスの何だっけな、 昔のヒットの曲のカバーがフィーチャーされたネヴェルダインxテイラーさんの新作。 「フィフス・エレメント」 などからのパクリが多い気もするがアベレージは叩き出しているのかな。

ナノテクノロジーにより 他人の脳を直接コントロールしてしまえる技術が実現した近未来。 起業家キャッスルはこの技術で世界を制覇する。 人々は360度スクリーンの部屋にひきこもり、 セカンドライフのような "ソサエティ" で遊ぶ。 セカンドライフと違うのはキャラクターはすべて実写版であり、 他人に憑依するかのように操って楽しむという点だ。

そこへまた新しいサービスができた。 囚人をコントロールして行うリアル殺戮ゲーム "スレイヤーズ"。 ゲームをクリアすれば囚人は釈放されることになっているが、 現在クリアに迫る得点のケイブルは殺人による無期懲役。 実はそれもキャッスルの陰謀だから、 まともにやっていてはクリアできるはずがないのだ。

さまざまな裏技を使ってスレイヤーズを離脱し、 奥さんと娘を取り戻し、 キャッスルを倒そうとするケイブルと反体制組織ヒューマンズの活躍。 「ブレードランナー」 のような '街角テレビ' で始まり、 実際に渋谷などの光景も使われているようす。

アドレナリン」 ほどぶっ飛んだところはないが、 世界観はそれなりに楽しめる。 ただ何となく新鮮味に欠け、 アクション重視でSFっぽさは最初だけ、 見せ場も実質、 ラスト近くのキャッスルの歌と踊りくらいか。 アンバー・ヴァレッタの疲れたアップに追い打ちをかけるかのような キーラ・セジウィックのこめかみにラメを散らしたアップがヘンに印象に残る。 未来はヒッキー&熟女の時代なのか。 。




GAMER ゲーマー (2009) 日本公開2010.12/3 公式サイト 象のロケット 
監督 ネヴェルダイン+テイラー 
ジェラルド・バトラー マイケル・C・ホール アンバー・ヴァレッタ 
ローガン・ラーマン アリソン・ローマン キーラ・セジウィック