
久々の日本映画、 しかも園子温監督ということで期待したが、 いつもの過激さはなく何となく拍子抜け。 ちゃんと伝えるというのは日本人の苦手なコミュニケーションに関することかなと思っていたが、 そういうわけでもなかった。 映画は監督の親父さんに捧げられているが、 自分は親父が死んだときも何も捧げられなかったなあ。
通常の余命ものと違うのは、 親父の見舞いに通う過程で自分自身のガンが発見されてしまうという点。 ただでさえ親不孝を重ねてきたのに、 親父より先に逝くなんて これ以上の親不孝はないと、 むしろ親父に早く逝ってくれと願うようになる。
観客が青年のガンを知らない時点と知った時点で、 同じシーンが視点を変えて繰り返される。 さして新しい手法ではないが、 今回の実験的な部分と言えばそれくらいか。 ふと激しいシーンが出てくると園子温を感じるが、 静かに会話を交わすシーンが続くと山田太一
海外ではそれなりに評判もいいようだが、 なんか いわゆる邦画っぽくなってしまったような。 役者としてのAKIRAは時任三郎を少しナヨっとさせた感じで、 父のキャラはよくわかるのに青年のキャラはいまいち不明瞭。 そういう若者像なのかもしれないが やや浅め。 伊藤歩も言いにくいことをズバっと言うキャラというのが微妙にミスマッチで、 フィアンセ役以上でも以下でなく、 高橋恵子の貫禄だけが印象に残った。
父と釣りに行くと約束した "美しい" 湖もあまり美しいと思えず、 セミの抜け殻と硬直した鳩の死体もそれほど詩的に効いてくることはなく、 いまだにガンを治すこともできないくせに偉そうに語る医者のように、 余命ものには先進的な監督も無力なのだという気がした。
父親というのは不思議なものだ。 若い頃はあれほど反発していたのに、 自分もある程度の年齢になり、 少し父が弱々しく感じるようになった頃から、 微妙な敬意を抱いたりする。 それは自分が社会で壁を感じ始める頃でもあるだろうか。 強いと思っていたものが実は弱く、 弱さを共有して初めて、 男として人間として評価できるようになるのかもしれない。 だからと言って本当に弱いだけの人間では意味がなく、 強がってでも何とか役に立つ。 それが父親の価値なのだろう。 いつか息子に評価してもらえるよう、 がんばって価値を出そう^ ^


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