9.17.2010

マジすか? 「シリアスマン」



日本公開はまだスケジュールすら出てないが、 海外ではすでにDVDやブルーレイになっているコーエン兄弟の新作。 ユダヤに根ざしたエピソードや単語が多くて正直むずかしかった。 たとえば "ゲット" というのは離婚状のことらしいが、 男が "She wants get." (妻はゲットを望んでいる) というセリフを言うと相手は "wants to get~" (~を欲しがっている) と聞き間違えて "何を?" と返すギャグが何か所か。 その他13歳で成人の儀を行う少年など、 異教徒は見なくてけっこうという内容。

大学で数学を教える男は、 中国系の学生から賄賂を渡され成績の改ざんを迫られる。 家では妻が突然の離婚を申し出るし、 息子にはテレビの映りが悪いからアンテナを直してくれと言われる。 娘は鼻の整形費用をせっせと貯め、 路頭に迷った兄が家に転がり込み、 医者からはシリアスな電話がかかり、 隣の家の男とは相性が悪く、 反対の隣の家の奥さんは庭で全裸で日光浴をする。 それを屋根の上からアンテナをいじりながら見てしまう。 中国系の学生の親は裁判沙汰にすると脅し、 教授会にも圧力をかけ、 やり手の弁護士は法外な弁護料を請求し、 相談に行った教会のラビには忙しいと言われ、 息子が勝手に買い込んだであろうレコードの支払いがまだだとの電話があり、 隣の奥さんからはマリファナを薦められ、 兄は "人生はクソだ" と泣き、 ふと注意が逸れたら追突事故・・

上のポスターはアンテナを地デジ用に替えるのだろうかなどと^ ^興味をそそるし、 のっけからジェファーソン・エアプレインがかかったりするので勢いを感じたが、 見終わってみれば微妙に難解な不条理劇だったと言える。 違う宗派の葬式に参列しているような、 あるいは馴染まない土地での結婚式に戸惑うような気分にさせられる。 それが狙いなのか暴威なのかはわからないが、 人生の機微みたいなものだけは残った。 コーエン兄弟のような成功者が この時点でこのような物語を取り上げるのは不思議な気がするが、 IMDbでの評を拾うと "誰か最初のシーンを解説してくれないか" "俺にはラストシーンを説明してくれ" "不確定性原理じゃね?" "でも好きだ" みたいな感じとなる。

自分の感想もだいたいそんな感じだし、 好きか嫌いかで言うと元々コーエン兄弟は好みではないのだが、 それでも普通、 あるいはそれ以上に面白い作品ではある。 仮にユダヤの要素を全部取り払って、 誰もがわかる話にしてしまったらどうだったかなどと考える。 それでも十分 面白いに違いないが、 そうすると外国映画のハリウッドリメイクのように薄味なものになってしまったかもしれない。 この際、 ユダヤ研究のつもりで多少長く感じる1時間45分を耐えるのもいいかもしれない。 楽しむために耐えるという、 これまた不条理な構図を強いられるが。 。




シリアスマン A Serious Man (2009アメリカ・イギリス・フランス) 2011.2/26~ 
製作・脚本・監督 コーエン兄弟  公式サイト 象のロケット 
マイケル・スタールバーグ リチャード・カインド アダム・アーキン 

9.15.2010

白馬のエージェント 「ナイト&デイ」



ディアスの 'ほうれい線' が気になるものの、 じゅうぶん素敵な作品^ ^ マンゴールド監督というのはアクションもソツなくこなすんだな。 クルーズのスーパーエージェントぶりもカッコよかった。

"夜" を "騎士" と引っかけた原題、 K があるか ないかだけなのだが、 邦題はストレートに訳しすぎでつまらない。 せめてタイトルをロゴ化して、 白馬のアイコンなどとセットにすべきだ。 ・・なんて、 どうでもいいか^ ^

無限バッテリーにからんだ事件に巻き込まれるジューン・ヘイブンズ。 FBIもワル、 CIAもワル、 武器商人は当然ワル。 守ってくれたロイ・ミラーにも、 やがて裏があることを知る。 何を信じていいのかわからなくなっても、 最後に彼女は女の直感を信じた。 オーストリア、 スペイン、 南の孤島・・ 目が覚めるたびに風景が変わる。 こんな風に世界中を飛び回るなんて、 いかにも映画だけど "いつか" やってみたいね。

"いつか" というのは、 永遠に訪れないという意味。 冒頭で皮肉にもそう語った彼女は、 自らの意志で "いつか" を "今" に変える。 まさに June Havens, you got skills! やるじゃないか。

見どころはと言うと、 赤いバイクに抱っこちゃんスタイルで二人乗り。 そして38歳の真っ赤なビキニか。 。 それとも同じく冒頭で、 飛行機が不時着したときにディアスが思わずもらす "ア~ン" の声か。 ロマンスあり、 アクションあり、 笑いありの、 秋口、 過ぎ去った夏を懐かしむかのようにちょっと熱くなってみるか、 な作品だ。


ナイト&デイ Knight and Day (2010) 日本公開10/9 公式サイト・予告 
監督 ジェームズ・マンゴールド  象のロケット 
トム・クルーズ キャメロン・ディアス 

9.12.2010

ブーイングは快感? 「BRÜNO」



「アリ・G」「ボラット」 とキャラクター創造で攻めるSBC^ ^ 今回はオーストリア出身のゲイ・キャラという設定で、 ファッション界やセレブをナメまくる。

なぜオーストリアなのかはよくわからないが、 設定が設定だけに底の浅さはいつも以上に際立っているが爆笑とまではいかず、 不発スレスレのクスッと笑い。 Whatever という口癖とか、 翻訳しきれない部分がたくさんあるせいかもしれないが、 ブルーノの楽観主義だけは学びたいものがある^ ^

海外、 日本を問わず、 ブーイングを物ともしない気骨のある?コメディアンが少なくなったなと思う昨今、 SBCは希少価値ではある。 正直、 けっこう好きなので^ ^ つぶれないで次回はぜひ "白いオバマ ブルマ" に挑戦してほしい。 。



BRÜNO ブルーノ (2009) 日本公開2010 公式サイト 
脚本・主演 サシャ・バロン・コーエン 
監督 ラリー・チャールズ 

9.11.2010

Zの先は・・ 「プランゼット」



「惑星大怪獣ネガドン」 はCG製作を全部一人でやっていて 密かに感動した覚えがあるが、 今回はスタッフも増えて少しメジャー化したようだ。

レトロフューチャーな感覚、 ツルっとしていない不思議なリアリティを持った3DCGはあいかわらず凄いが、 ストーリーがあまりに取って付けという気がしなくもない。 人類滅亡の危機も新鮮味がなく、 敵についての言及もほとんどなく、 ロボット兵も いまさらな感じ。 微妙にエヴァしてるし。 。

プランA、 プランBと来て、 もう先がないからZということなのだが、 実はまだ先があったのだ^ ^ 未来なのに古くさい型のテレビは狙いとしても、 妹の制服がミニのチェックスカートというのは未来でもレトロでもないじゃないか^ ^ CGで描かれた脚は意外に素敵だったが、 今後の方向性が難しい分野ではある。 SFも戦闘も一旦やめて、 いっそ学園物とか、 どうかな。 。



プランゼット (2010日本) CGアニメ53分 公式サイト 
監督 粟津順 主題歌 元ちとせ 
声:宮野真守 石原夏織 竹内順子 
プランゼット [DVD][DVD]

アイアンマン2 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD] 惑星大怪獣ネガドン [DVD] 劇場版 ブレイク ブレイド 第二章 訣別ノ路 [DVD] 「イヴの時間 劇場版」 [DVD] 劇場版 ブレイク ブレイド 第一章 覚醒ノ刻 [DVD]

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9.09.2010

自分は箱詰めにしないでね 「サベイランス」



「ボクシング・ヘレナ」 から15年ぶりの監督作品になるらしい、 ジェニファー・チェンバース・リンチ。 "ヘレナを箱詰めにする" というタイトルはインパクトがあったが、 内容はまるで覚えていない。 DVDにもなってないんだな。 今回はパパに製作葬式じゃなかった、 お、 すごい変換ミス^ ^ 製作総指揮をやってもらっているので、 ちょっとだけ期待してみた。

だが始まって数分もしないうちにハズレだとわかってしまう^ ^ けっきょく、 どんでん返し物だったわけだが、 テンポは悪いしディテールは楽しくないし、 FBI と地元警察の確執だけがやたら強調されているのは仕掛けだったわけだ。

たいていは見たらすぐ このブログにメモるのだが、 ちょっとバタバタしすぎていて それもできなかった。 1日たって書いているので、 もうすっかり忘れてしまってるんじゃないかと思ったが、 意外に覚えてる^ ^ 作品としての統合力は弱いが、 印象的な断片は持っているということかもしれない。 ジェニファーは HISSS (ヘビ女) の脚本をはじめ今後も作品が控えているので、 完全に無視されているわけではない微妙な人だと言える。 偉大な父を持つということは、 それはそれで大変なのだろうな。

パパとは違う個性を戦略的に もっと打ち出すべきだと思うが、 本作はタイトル (監視、 見張り) もピンと来ない。 見た後でも内容との関連が薄すぎるように感じるし、 検索しても別のサベイランスがヒットする。 タイトルはインスピレーションでありコンセプト。 あらすじよりも予告編よりも、 はるかに短い時間でコミュニケーションできるし、 今では検索の重要なキーワードでもあるのだから、 練ってもらわないとね。 タイトルができてない作品は、 内容もできてないと考えてほぼ正解なのだ。


サベイランス Surveillance (2008カナダ) 日本公開2010 公式サイト 
監督 ジェニファー・リンチ 製作総指揮 デビッド・リンチ 
ジュリア・オーモンド ビル・プルマン マイケル・アイアンサイド 
サベイランス [DVD][DVD]

ボーダー [DVD] ケース39 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD] アンボーン [DVD] シャッター アイランド  [DVD] ウルフマン ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]

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9.07.2010

パパはポルノスター 「セルビアン・フィルム」



9月に入って早1週間、 戻ってまいりました。 超エグな作品を引っさげて。 もちろん自分が作ったわけではないですが、 というか、 こんなものは作りたくない^ ^ しかし見たい。 映画はいつも "こわいもの見たさ" なのだから。

すでに一部では話題になっているセルビア製の殺戮系ホラー、 あるいはポルノ。 意外に物語性もあって、 想像したより はるかに良くできている。 東欧の得体の知れなさは 「ホステル」 的でもあり、 60年代70年代的 生臭さもありながら、 一方で微妙にデビッド・リンチ的な雰囲気もある不思議な作品だ。

かつて その世界で名を馳せたポルノ男優ミロス、 今は良き夫であり良き父だった。 だが問題が一つ。 貯金が底を突きかけていた^ ^ そこへ降ってわいた高額の出演依頼。 そっちの道は引退したはずだったが破格のギャラに臨時復帰を決意する。

ブクミールと呼ばれる監督は "生きた人間を捉え、 ポルノを芸術に高めたい" と語る野心家だったが、 撮影が始まってもシナリオは一切 知らされない。 それも演出の一環だと話す監督。 しかしミロスは居心地が悪かった。 どうやら、 ただのポルノではなさそうなのだ。

孤児院での撮影、 母親と少女、 戦死した父親・・ おぼろげにストーリーは見えてきたが、 核心はつかめない。 そう、 それはクライマックスに本物の殺人が用意されたスナッフムービーだった。

そう言えば 「ギニーピッグ」 という作品があったな。 こういう作品はつねに本物かヤラセかという話になるが、 ミロスの出演作は紛れもなく本物。 家族のために変態の犠牲になるという物語は、 無視されたジョニー・デップ初監督作品 「ブレイブ」 を思い出す。 そう、 父さんはいつも切ないのだ^ ^

作品中の監督は、 セルビア自体が親に捨てられた孤児であり、 それでも生きようと、 こうして経済基盤を固めているのだと語る。 ミロス父さんは、 はたして家族を守ることができるのだろうか。 エグいシーンにも、 エロいシーンにも、 一抹の切なさが漂う。 変態というよりはヘンな作品。 夏休みが終わって家族サービスから解放されたお父さんにお薦めできそうな、 決してできないようなヘンな1本。 秋の夜長にいかがですか・・ って日本公開もDVDも予定なし、 か^ ^

(追記2012.1/3) 1月末に公開されるそうで。こいつは春から縁起が・・? ^ ^




セルビアン・フィルム A Serbian Film (2010セルビア) 日本公開2012.1/21 
監督 スルジャン・スパソイエビッチ 
スルジャン・トドロヴィッチ セルゲイ・トリフノヴィッチ 
エレナ・ガブリロヴィッチ カトリーナ・ズティッチ