12.09.2010

携帯とちゃぶ台 「息もできない」



本日はひさしぶりの韓国映画。 '韓流' のタグはふさわしくないかもしれないが '今もっとも世界で勢いのある韓国映画' と言われれば言われるほどに見なくなってしまったので、 このあたりで付けとかないと不要のタグになってしまう。 しかしまあ韓流と呼べない韓国映画のほうが いい作品である場合が多い。 韓流はどことなくバブルの頃の日本を思い出すが、 この作品はさらにさかのぼって昭和中期の匂いがする。 「巨人の星」 的だ。 実際に飲んだくれの親父がちゃぶ台をひっくり返すシーンが出てくる^ ^

上手く行かなくなった男が妻や子供に八つ当たりするのはプライドの裏返しだが、 封建的な感覚が韓国社会にはまだ色濃く残っているのだろう。 妻に手を上げる男はエスカレートして包丁を取り出す。 それを止めようとした小学生の娘を・・ 我に返って娘を担いで病院へ走るが、 動転した妻は道へ飛び出し・・

それは少年の妹であり母であったが、 この一夜の出来事により父は15年刑務所へ。 父が出所する頃、 一人残された少年は立派なチンピラになっていた。 心に暴力を焼き付けられた少年は暴力的な人間になり、 それを活かして借金の取り立ての仕事をしている。 しかしそれは憎んでも憎みきれない父親と同じであることに気づき、 カルマを断ち切ろうとするが・・

バイオレンスのなかに、 幸せだった頃の映像がときおりオーバーラップするかのような作品。 音楽を使わず、 狭い画角の望遠の手持ちカメラはブレすぎるが、 とくに目新しい手法があるわけでもない。 女子高生と友だちになったり、 腹違いの姉の子供の面倒を見たり、 家で酒を飲む父はなぜかテレビでポケモンを見ていたり、 ミスマッチなディテールが最後にはきれいにつながると言えるかもしれない。 チンピラはポケベルを持っていて、 今どき?? と女子高生に笑われて携帯を買うことになる。 ちゃぶ台をひっくり返す父親と携帯電話やテレビゲームが混在する。 それが今の韓国なのかもしれない。

クソアマ、 クソガキ、 アバズレ などがワンパターンに繰り返される字幕には多少疲れたが、 原語がわからないので何とも言えない。 どうせならもっと '今使われる' 表現に訳せばいいのになと思った。 じゃあどんな '今使われる' 汚い日本語があるのかと考えてみたが、 出てこない。 流行のネット用語はあるが、 相手をストレートに罵倒する口語表現は、 もしかしてもう日本にはないのかもしれない。

Flash を使わない映画公式サイトは久しぶりに見たが、 いいね。 こちらは情報を得たいだけなのに、 タラタラと時間を奪われる Flashサイトに飽き飽きしていた。 このサイトはシンプルにまとまって、 タイトルにひっかけ、 すぐになくなってしまうドメインでもない。 その公式サイトの中で監督は "自分の中のもどかしさを ただ吐き出したかった" と語る。 東京フィルメックス他たくさんの賞を受賞しているが、 そのことで もどかしさは吹き飛んだのだろうか。 デビュー作品は自分自身のために、 その後は他の誰かのために撮るのだと語った人がいたが、 次回作にこそ期待したい。


息もできない Breathless (2008韓国) 日本公開2010 公式サイト 
脚本・監督・編集・主演 ヤン・イクチュン
キム・コッピ イ・ファン チョン・マンシク ユン・スンフン パク・チョンスン 
息もできない [DVD][DVD]

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