9.26.2010

1999 「ジュリアン」



唐突に取り上げるが、 今コレに再注目、 などのような さしたる意図があるわけではない。 たまたま見たのでエントリーしておこうというだけ。 ハーモニー・コリーン・・ やさしいから好きとかいうのはちょっと違う。 地面すれすれに飛ぶ感じが好きなのだ。

「ガンモ」 をフィルムフォーラムという小さな映画館で見たのも、 ずいぶん昔。 すでに自分の感性は鈍感になっていたのか、 大した衝撃を受けたわけでもなかったが、 それでも自分にとって気になるフィルムメーカーとなったハーモニー。 90年代を思い起こすときも、 その空気を象徴するかのようなこんなテイストがいつも思い出される。

この作品は 「ガンモ」 の後に製作されているが見てなかった。 あの頃はいちばん映画を見なかった時期でもある。 "ドグマ95" のマークが冒頭に挿入され、 その通りに全編 手持ち、 自然光。 最後にハーモニーの名前はクレジットされているが、 監督という肩書きはない。

粒子の粗い映像、 短いカットで追うのは、 ヘンテコな家族。 知的障害なのか分裂症なのかはよくわからないが青年ジュリアンは、 それでも盲学校の先生をしている。 姉は妊娠中だが父親は知れず、 弟は勝ったことのないレスラー。 母はなく、 父は弟に "負け犬にはこれが似合う" と母のドレスを出してきたりする嫌味な男。 あともう一人、 いつもマルチーズと戯れている祖母。 それがジュリアンの家族だ。 映画はそんなジュリアンの家族と周辺の人々を活写してゆくだけだが、 最後に悲しい出来事も起きる。

今回も特別 感銘を受けたわけではないが、 それでも鈍った感性の端っこに何かが残る。 それは恐らく文章化の難しい次元に属する何かで、 だからカットを多めにアップしてみたがそれでもアマチュアのポラロイド写真集くらいにしか見えないかもしれない。 本編の時間の流れの中でしか感じ取れない何かがそこにはあって、 そういう意味では紛れもなく映画的なのだが、 それすら古い8mmを引っ張り出して気ままに再編集したヘンテコな家族の肖像であるだけかもしれない。

しかしヘンテコな家族のフィルムは焼けずに実存し、 これをヘンテコと形容させるのは '標準化' の枠のなかに押し込まれた自分自身の常識的世界観であり、 そもそも自分がそれほど常識的な人間だとは思わないが、 それでもいつしか取り込まれているのだろうし、 ときおり こうしたヘンテコな作品に触れて '標準化' を解毒しておくのもいいのではないかと。




ジュリアン Julien Donkey-Boy (1999) 日本公開2000 
脚本・監督 ハーモニー・コリン  非公式サイト 
ユエン・ブレムナー クロエ・セヴィニー ヴェルナー・ヘルツォーク 
ジュリアン [DVD][DVD]

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