5.13.2010

それは不吉な予感・・ 「白いリボン」



第一次大戦前夜、 ドイツの小さな村には奇妙な空気が漂っていた。 それは戦争の予感とも取れるし、 あるいはそんな空気の結果が戦争だったのかもしれない。 本日はビッグイシュー、 日本公開は遥か先だが、 ハネケのパルムドール作品をいち早くレポート!

好きとも言い切れない、 嫌いとも言い切れないミヒャエル・ハネケだが、 ついにカンヌのパルムドールに輝いてしまい^ ^ 映画ファンの間では観ないわけには行かなくなっている本作、 想像以上に淡々として、 いつものハネケほど不条理ではなく、 しかしまあ、 なるほどなと。 納得のいかないパルムドールではなく、 むしろ納得してしまうが、 恐いのはスクリーンに映し出されるものより、 その背後にあるもののような気がする。

登場するのは医師、 助産婦、 牧師、 教師、 乳母、 農夫、 領主、 そして子供たち。 ある日、 医者が診療の帰りに、 馬から落ちて大ケガをする。 木の間にワイヤーが張られていたせいだ。 それを発端に事件は連鎖し、 時代が時代なので猟奇的とは言えないまでも、 どことなく気味の悪いことが続く。

登場人物はみな表の顔と裏の顔を持っていそうで、 これらの事件はつながっていて、 誰かが犯人なのだろうと思わせるサスペンス仕立てになっている。 しかし犯人捜しは主眼ではなく、 この陰湿な空気を味わうのがポイントか。 傍らには、 その時代なりの恋や希望が置かれているので、 そのコントラストは適切にドラマチックで、 物語に入っていけると同時に、 今という時代にも きっちりとリンクしてくる。

あまり解釈論を言ってしまうとつまらないが、 そう何か、 今と似ているね。 戦争が始まる前の空気って、 こんな感じなのか。 いや待てよ、 第一次大戦の頃なのに、 そんなに時代錯誤 感じないな。 むしろ、 そこはかとなく似ている・・

人気はないが君臨し続ける領主、 指導力を失ったがゆえに厳格であり続ける聖職者、 経済的な行き詰まり、 ねたみ、 逆恨み、 悪意、 自殺、 犯人捜しに協力する教師、 自らの治療に専念する医師、 内側でくすぶる暴力と支配、 カゴの鳥・・

そんな空気を嫌って、 当時のセレブである領主の妻は言う。 "あなたとの生活がイヤになったわけじゃないの こんな環境で子供を育てたくないだけ"・・ そして戦争は始まり、 余裕のある者は安全な場所へ逃げ、 余裕のない者は徴兵される。 真実は見つめられず、 原因は究明されず、 打開策は実行されず、 流れのままに押し流されてゆくのであった。

白いリボンとは、 戒めのための腕章のようなもので、 牧師がこれを子供の腕に巻く。 2時間25分と長丁場だが、 乞うご期待。





白いリボン Das Weisse Band/The White Ribbon *カンヌ・パルムドール 
(2009 ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア) 日本公開2010.12/4
監督 ミヒャエル・ハネケ  公式サイト 象のロケット 
クリスティアン・フリーデル レオニー・ベネシュ ウルリッヒ・トゥクール 
ミヒャエル・クランツ ブルクハルト・クラウスナー 
白いリボン [DVD][DVD]

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